永遠のローマ (講談社学術文庫 989)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (408ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061589896

作品紹介・あらすじ

イタリアの一ポリス・ローマはどのようにして世界帝国へと発展していったか。繁栄を享受するローマと、その支配に抵抗する諸民族の戦いを通して築きあげられたパクス=ローマーナ(ローマの平和)とはなんであったか。そして「永遠の支配」を誇ったローマは、なぜ滅びなければならなかったか。ひとつの文明の生成と没落を通して、危機的状況を深める現代文明の行く末を直視する、著者快心の力作。

感想・レビュー・書評

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  • ローマ通史だと思って読み始めたが、違った。

    ひとつは、ローマ亡きあとの中世の人々が、「永遠のローマ」という概念を取り返そうと取り組む精神史を描こうとしている。
    またひとつは、勝者となったローマの理由や、帝国ローマの崩壊の理由を探るのでなく、大国ローマが頭の上を通り過ぎていくとき、その下で生き続けていく人々の日常を描こうとしている。

    著者は、古代ローマ史をこれ一冊で卒業していくひとにも全容を理解してもらえることを意図したというが、切り口に偏りがある。さらに前半の通史自体、もう少し整理する余地があろうと思う。
    いずれにしても、塩野ローマを読み続けた者としては、古代人類の到達した文明の輝きを評価しない筆致には、いささか反感を覚える。堕落が没落のひとつの理由という説を語るとき、筆者がキリスト教の側に近すぎるのではと感じる。

    本書を読んだひとは、できれば他のローマ史も読んでほしいものである。

  • ローマって何だろう。ルネッサンス時代が大好きなので、その頃のイタリア半島周辺や都市国家の興亡には興味も持っているのだが、その時代のローマはもはや輝いているとは言いがたいので、いまひとつ魅力を感じない都市なのだ。
    しかし、かつては全ての道はローマに通じ、ローマ時代、ローマ神話、ローマ字……と、全てのものはローマに生まれ、ローマに帰すような時代があった。この本は「決して永遠ではなかった『永遠のローマ』」を、その成立から終焉までをコンパクトにまとめた一冊である。それだけだったら、ただの世界史の本で面白くないんだけど、歴史を追う1〜6章の後に、「7.ローマ人の内幕」と「8.ローマ人の生と死」という各章があって、そっちが何というかスキマ的な面白さがあるのだ。
    「ローマ人の内幕」は、そのまんまの意味でローマ後期の性を含めた内輪な事情を赤裸々に書き出す。というか、ここ、ほとんど引用ばっかり。
    美食に耽らんがために満腹になるとゲーゲー吐いて、また食べる――というのは、哲学者のセネカが書いたか何かで有名だが、これ、トイレ(みたいな場所)で吐くわけじゃないんだね。その場で、つまり宴会のテーブルで吐く。それをすかさず拭いて片付けるために女装の奴隷が控えていて、彼らは当然、それ以外の……えーと、ナニのお手伝いもする。ちょっと聞きかじっていた程度では想像も出来ないローマの頽廃ぶりが、ものが引用だけにリアルにリアルに迫ってくるので、これを読めば「そりゃあ、ローマ、滅びるわ」と納得がいく。マジで。
    ちなみに、この章は見出し、小見出しのタイトルも凄いので是非見て欲しい。だって「舐めるだけで入れない」とか「とがった子宮の淫欲は」とか、これは学術書の見出しじゃないよ……。

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著者プロフィール

1924年、東京生まれ。東京商科大学(現・一橋大学)卒業。東京大学教養学部教授、フェリス女学院大学学長等を歴任。2006年没。著書に、『ローマ帝国の国家と社会』(岩波書店)、『ローマ帝国とキリスト教』『素顔のローマ人』『歴史家と歴史学』(河出書房新社)、『永遠のローマ』(講談社)、『歴史学入門』(東京大学出版会)、『ローマはなぜ滅んだか』(講談社現代新書)ほか多数。

「2020年 『地中海世界 ギリシア・ローマの歴史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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