- Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
- / ISBN・EAN: 9784061590052
作品紹介・あらすじ
ドイツの世界的建築家ブルーノ・タウトは、1933年に憧れの日本を訪れた。伊勢神宮や桂離宮など日本古来の建築にふれたタウトは、そこに日本美の極致を見た。簡素・単純・静閑・純粋-それらの絶妙な均斉を具現した桂離宮を絶賛、その対極として華美な日光東照宮を捉え、さらに仏像、能、歌舞伎などにも深い関心をよせた。日本文化の再評価に大きな影響を与えた。タウトの最初の日本印象記。
感想・レビュー・書評
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ドイツの建築家、ブルーノ・タウトによる日本訪問時の印象記。
ブルーノ・タウトは、ナチスから社会主義者と見なされ、命を守るために日本に避難してきた。1930年代の3年間を日本で過ごしたタウトは、当時の日本の文化や建築について、自分なりに感じたことを綴っている。
タウトといえば、桂離宮を絶賛し、日光東照宮を非難したことから、ナショナリズムと結び付けられて語られることがあるが、本書を読むと、その見方は一面的であると感じる。解説によると、ナショナリズムの影響を受けた翻訳にも問題があったようだ。
確かに、桂離宮=天皇の象徴、日光東照宮=将軍の象徴としているところや、別荘住宅と霊廟という意味合いの違うものを単純に比較しているところは、どうかな、と思わないでもないが、タウトの評価は、あくまでも周りの風景との調和に重きを置いていたように感じられる。
本書においてタウトは、桂離宮の計算されつくした空間演出について高く評価し、日光東照宮については、中国大陸のように絢爛豪華な装飾を活かすための空間スケールがないにもかかわらず、単に建物のコピーを日本に当てはめたかのような造り方に憤っている。
他の章でも、日本独自の風景に根差した建物の中に、近代に入って急に取り込まれた形だけが異国風の建物を「いかもの」と厳しく批判しており、日光東照宮と同様、風土と調和するよう計算されたデザインではなく、単に上面だけをまねている建物が日本の風景を破壊していることに我慢ならなかったのだろうと思われる。
タウトが日本に滞在したのはわずか3年だったし、滞在中はドイツとの関係を気にする日本政府との関係で、建築家としての仕事はわずかな改修設計以外ほとんど携わることができなかった。しかし、タウトはそんな不遇な時を過ごした日本の風土を愛し、だからこそ辛辣ともいえる批評をたくさん書き記した。
グローバルな社会になり、都会はどこも似たような風景になりつつある現代において、改めてタウトの遺した言葉の意味を考えていかなければいけない気がする。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
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https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/675460 -
読了。
ベーシックだけど、今や物足りない。
日本って良い国なんだ!と、自分達に言い聞かせたい人向け。
あくまで感想文。建築家だしそれでいいんだけど。
物足りない。 -
【選書者コメント】著名な建築家の見た日本、という点で興味があり、選びました。
[請求記号]0800:34:1005 -
やや退屈ではあったものの、
1900年代中盤における著者の私見は、
現代日本の混迷の要因そのものを捉えているように感じる。
ナショナルがインターナショナルであるはずなのに、
日本人の適応力というか、順応力、模倣力が、
結果的に粗悪な折衷品を生みだしているという悲劇。
貴族服を優雅に感じるのは、イギリス人の生活や体系に調和しているからであるように、
日本の建築や服装、工芸品、総じて生活は、日本で暮らすということに調和さえしていれば良い。
このように考えていくと、
グローバル化というのは、この上ない自然の破壊装置であって、
経済を基盤にしたイデオロギーなんだなぁと思った。
芸術においても然り。外国向けに作らなくていいんだよ、村上さん。
あくまで機能美でいいんだと思う。それが独自性になり、普遍に繋がるのだと思う。
「究極の細致な点が合理的には把握えないが故に古典的なのである。その美はまったく精神的性質のものである」
「銀閣はいくらか型には待っているように感じる。思想を認めることができない」
「政治的実権の掌握者が仏教をその伴侶となした」
「皇室-神道、将軍家-仏教」
「天皇は文化の高い古の宮殿が如実にあらわいているごとく、究極の醇化、簡素、素朴を示す日本独自の文化を代表される。」
「神社は常に自然と直接に連繋されている。仏教のような高尚な人間的思想の冒瀆があるのでなく山々や森林にも比すべきものがある」
「日本の芸術家はその紙を是が非でも満たすことを問題としない」
「オランダ人と日本人の生活条件は一点において、自然との悪戦苦闘を余儀なくされ、知性によって彼らの望むところのものを自然から闘い取ることに成功したという点で同じ」
「外国人が料亭でみたもの。それは日本でもなく、神戸でもない。それは日本について外国人が抱いている幻想に過ぎない。料亭主は幻影を彼らの鼻の先に突きつけてそれでもって彼らを抱き寄せるのだ。」 -
目次
序説―何故に私はこの書を書くか
敦賀
伊勢
桂離宮
天皇と将軍
生ける伝統
ニューヨークへ?
否―桂離宮を経て! -
序(原本) 岸田日出刀
序説 何故に私はこの書を書くか
敦賀
伊勢
桂離宮
天皇と将軍
生ける伝統
ニューヨークへ?
否 桂離宮を経て!
追憶 エリカ・タウト
原本あとがき
解説 持田季未子
(目次より)