ヨーロッパ封建都市: 中世自由都市の成立と発展 (講談社学術文庫 1156)
- 講談社 (1994年12月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
- / ISBN・EAN: 9784061591561
作品紹介・あらすじ
十一世紀のヨーロッパに「都市の空気は自由にする」という合言葉が生まれた。荘園領主の専横に苦しむ農民たちの、華やかな商工業活動による経済的自由への希求が、新たな都市文化を築き上げたのである。近代資本主義社会を生み出す市民意識形成の場となった自由都市成立の契機を、日本の封建社会との比較文化的視角を交えて縦横に分析する。史上に比類なき自由都市の興亡を鮮明に描いた必読の都市論。
感想・レビュー・書評
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ヨーロッパ中世の都市の実態について論じている本です。
本書のタイトルは「ヨーロッパ封建都市」であり、サブタイトルには「中世自由都市」ということばが含まれています。この二つのことばの意味が、どのようなしかたで区別され、どのようなしかたで交わるのかということが、本書をつらぬく問いのひとつであるといってよいと思います。
「都市の空気は自由にする」ということばに象徴されるように、ヨーロッパ中世の都市には「自由」の理念が生きており、それが近代以降の市民社会的「自由」の概念へと発展していったという見かたが語られることがあります。マックス・ウェーバーの『都市の類型学』では、このような「自由」がヨーロッパでのみ成立したのはなぜかという問いをめぐる考察であり、日本をはじめとするアジア諸国における市民意識の未成熟の原因をさぐろうとする人びとが、そうした理解を受け継いできました。
しかし著者は、日本においても「自由都市」の萌芽は存在していたことを指摘し、それが成熟する前に挫折を余儀なくされたことが、日本の封建社会の特殊な構造だったのではないかと主張します。そのうえで、ヨーロッパ中世の封建社会のなかでなぜ「自由都市」が成立しえたのかという問題を提起し、その社会的条件が論じられています。詳細をみるコメント0件をすべて表示