- Amazon.co.jp ・本 (480ページ)
- / ISBN・EAN: 9784061597969
作品紹介・あらすじ
経済学の最高の古典ともいえる『資本論』は、夥しい人々に読み継がれ、世界を大きく動かしてきた。マルクスは当時の社会の現状と人々の生活を見据え、資本主義経済の原理とその運動を体系的に分析した。本書では、厖大かつ難解な叙述の続くこの名著の講読を長年行ってきた著者が、エッセンスとなる章句を選び出し、懇切な解説を施し、その魅力と豊かな内容を引き出す。
感想・レビュー・書評
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参考資料に…と思ったが、わかりやすいところとわかりにくいところが極端。執筆者によると「かなり理解しやすく」書いたらしいが。私の理解力不足によるところか。(泣)
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今年の春に亡くなった故伊藤誠による『資本論』のエッセンスを解説した本。宇野弘蔵独自のマルクス解釈を展開した、いわゆる宇野派を継承した著者は、『資本論』を従来のマルクス・レーニン派と異なる立場で読み解く。宇野派の立場としては、社会主義、共産主義の要素を抜きにして、マルクスの資本主義分析に力点を置く立場である。それは、資本主義の構造分析に注視する考えである。
本書では、第3巻から成る『資本論』の要点を取り上げて、引用した箇所を丁寧に解説してくれる。この解説は『資本論』という抽象的かつ難解な本文をかみ砕いて、しかも、現代で発生する資本主義社会の問題点をピックアップして、現代人が当然だと考えることが、実は資本主義社会の論理に飲み込まれているのかを、読みながら実感できるのではないかと思う。
今回、『資本論』を事前に読んだ直後に本書を読んだが、なぜ『資本論』が大抵の人にとって、第1巻を読むだけで十分なのかなんとなく理解できた。著者が本書の後半で繰り返し言及するが、第2巻と第3巻の本文は不明瞭なところが多く、専門家によって、解釈が大幅に分かれるのだという。実際、マルクスが直接執筆したのは全3巻のうち、最初の1巻のみであり、2巻以降はマルクスが遺した草稿を、エンゲルスが長年かけて、それらを適宜修正してようやく刊行した。その背景をふまえると、たしかに本文の解釈が曖昧になるのも無理のない話である。
それにしても、貨幣の物神崇拝とは資本主義社会において特に恐ろしいものである。かつてお互いの合意がなければ成立しなかった物々交換の時代と異なり、富の絶対的存在というべき貨幣は、市場経済においてはあらゆる物と交換できる性質を帯びる。それゆえに、人々はその絶対的な力を持つ貨幣に魅了され、人間が貨幣という特殊な物に支配されるのは何とも不思議である。歴史的にみて、このような人類のうちのほんの数百年にすぎないが、現代人が何となく生活を送るだけでは、そのような思考にはまるのは当然であろう。
今から150年ほど前に刊行した本であるのにもかかわらず、またソ連崩壊によるマルクス経済学の凋落が起きたにもかかわらず、今もなお資本主義の仕組みを考察するさいに参考となることが本書全体から伝わってくる。マルクス、宇野弘蔵、さらに著者が生涯をかけて資本主義社会とは何か、という命題に立ち向かった姿勢が今回の本からよくわかる。 -
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『ぼくらの頭脳の鍛え方』
文庫&新書百冊(佐藤優選)183
マルクスと資本主義