人類史のなかの定住革命 (講談社学術文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061598089

感想・レビュー・書評

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  • おそらく、分類がおかしいといわれそうだけれど。最後の言葉の意味の分類からだけでなく、どうも家族論に読めてしまう。

  • 2007年(底本1986年)刊。各論文の初出年は81~85年で、底本での新規書下ろしを含む。著者は筑波大学教授。

     人類史における定住は農耕とともに始まった。この至極当然とみられるテーゼに本書は反旗を翻す。
     それは定住と農耕開始とは一致せず、定住が農耕に先行するという意味でである。

     この点、著者のいう定住の端緒とは、①漁撈や②クリ・ドングリなどの非移動再生可能食材の利用亢進によると見ているのだ。

     平成4年頃以降、頓に注目を集めた青森三内丸山遺跡を見ると、縄文的農耕論はさほど新奇ではない。しかし、その前の段階で、ここまで思考を巡らせているのは研究者としての着眼点の鋭さを感じずにはいられない。
     しかも、環境変動など外的要因の重要性にも言及され、環境考古学の奔りとも見える点でも同様の印象を抱いた。

     もとより論文の集積であるため、それぞれの論考において叙述が重複することは否めないが、繰り返される記述内容こそが重要だとの目安になるわけだから、個人的には気にならなかった。

     そして、定住における重要な技術革新の一が、漁撈用の定置網の開発である点がなかなか振るっている。

     なお、霊長類における①手・腕の革新の意味と、②言語利用の2種の特性。
     特に、②についていえば、無駄話や雑談に代表される「個体関係における安全保障の言語」と、調査・分析・計画等に関する意思疎通に用いられ、合理性に重きを置く「仕事としての言語」との2種に分別可能ということだ。
     このように言語の役割・機能が分別される上、後者の比重が高まり過ぎていることが、個体関係の安全性を脅かす事態を招来しているとの指摘がある。

     これらは書下ろし部分に書かれるが、興味を惹かれる仮説だなと。

  • ☆信州大学附属図書館の所蔵はこちらです☆http://www-lib.shinshu-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BA81106872

  • [ 内容 ]
    霊長類が長い進化史を通じて採用してきた遊動生活。
    不快なものには近寄らない、危険であれば逃げてゆくという基本戦略を、人類は約一万年前に放棄する。
    ヨーロッパ・西アジアや日本列島で、定住化・社会化はなぜ起きたのか。
    栽培の結果として定住生活を捉える通説はむしろ逆ではないのか。
    生態人類学の立場から人類史の「革命」の動機とプロセスを緻密に分析する。

    [ 目次 ]
    第1章 定住革命
    第2章 遊動と定住の人類史
    第3章 狩猟民の人類史
    第4章 中緯度森林帯の定住民
    第5章 歴史生態人類学の考え方―ヒトと植物の関係
    第6章 鳥浜村の四季
    第7章 「ゴミ」が語る縄文の生活
    第8章 縄文時代の人間‐植物関係―食料生産の出現過程
    第9章 手型動物の頂点に立つ人類
    第10章 家族・分配・言語の出現

    [ 問題提起 ]


    [ 結論 ]


    [ コメント ]


    [ 読了した日 ]

  •  簡単に言うと、人類発祥時点からの割合で考えると、狩猟などの遊牧している期間のほうが長く、稲作などによる定住というのは革命的な出来事なんですよ、という本。タイトルまんまです。
     遊牧っていいよね!となるけれど、実際問題、これだけ人口が増えると、狩猟でまかなえる訳もなく、うん。そこが切ないな。

     そして類人猿や人類の先祖にまで話が行き、今の社会まで手が伸びるんだけど……だんだんノリになってません? となる。読み物としては面白い。

  • 第1章 定住革命
    第2章 遊動と定住の人類史
    第3章 狩猟民の人類史
    第4章 中緯度森林帯の定住民
    第5章 歴史生態人類学の考え方
    第6章 鳥浜村の四季
    第7章 「ゴミ」が語る縄文の生活
    第8章 縄文時代の人間‐植物関係
    第9章 手型動物の頂点に立つ人類
    第10章 家族・分配・言語の出現

  • 人類の歴史に置いて長く続いた遊動生活が有益なものと考える立場から、それが破たんしたために定住を始めたという発想の転換がおもしろい。農耕を行わずに定住する社会の多くが魚類資源に依存した生活を行っており、定置的な漁具を発達させている。魚類資源は陸上動物よりも生産量が大きく、年間を通した漁獲が期待できる。定置漁具は必要な労力が少なく、魚類の危険性も少ない。水産資源の利用が定住生活の出現に重要な役割を果たした。

    ・ヨーロッパでは、後氷期の森林拡大とともに遺跡が海岸部に集中する。
    ・氷期が終わり、中緯度地帯に森林が拡大し始めると、ユーラシア大陸の各地に定住集落が現れ、魚類資源の利用、ナッツの利用、食糧の大量貯蔵を伴っている。
    ・西アジアの地中海沿岸部で水産資源と野生穀物の利用が出現した後、内陸部で最初の農耕集落が出現する。

    ・5世紀中頃、大阪の泉北丘陵一帯で日本で最初の大規模な焼き物生産が始まった。

  • 先の『暇と退屈の倫理学』の参考文献の一つ。著者は、農耕の開始→定住の開始という、我々が教科書で習った通説を否定し、定住の開始→農耕の開始としている。本書のポイントはこの一点に尽きるだろう。

  • 「不快なものには近寄らない、危険であれば逃げていく。この単純極まる行動原理こそ、高い移動能力を発達させてきた動物の生きる基本戦略である」

    「遊動生活とは、ゴミ、排泄物、不破、不安、不快、欠乏、病、寄生虫、退屈など悪しき者の一切から逃れさり、それらの蓄積を防ぐ生活のシステムである。移動する生活は、運搬能力以上のものを持つことが許されない。僅かな基本的な道具のほかは、住居も家具も、様々な道具も、移動の時に捨てられ、いわゆる富の蓄積とは無縁である。」

    「一方、定住生活とは、これら一切を自らの世界に抱える生活システムである。この生活を維持するには、ゴミ捨て場を定め、便所を作るなどして環境汚染を防止しなければならない。フワや葛藤、不安の蓄積を防ぎ、すみやかに解消するために社会規範や権威が要求され、、、」

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