リア王密室に死す

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (250ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061810242

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  • 筋金入りのリアリスト『リア王』こと伊場富三が殺された。
    現場は、呉服問屋の蔵を改造した彼の下宿部屋で密室状態。
    旧制三高の同級生で、下宿でも合部屋だった『ボン』こと木津武志は殺人の容疑を受ける。
    「君が犯人だなんて、思ってもいない。君を知っている奴なら、誰だってそう信じている」
    一年先輩の『カミソリ』紙谷達弘を中心に、友人達は吉田山に集い『ボンを救う会』を結成。真相究明に乗り出す。

    戦後すぐの京都三高を舞台にした青春ミステリ。
    旧制中学が五年制、旧制高校が四年制らしいから、三高の一年生というと今でいう大学の新入生のようなものだろう。しかも一高、二高、三高と数字が入っている学校はナンバー・スクールと呼ばれ、全国からエリートが集まるあこがれの場所だったようだ。

    『リア王』『ボン』『カミソリ』の他にも、二つ名を持つ個性的な友人達が登場。
    格好ばかりで中身が空っぽのバンカラ『カラバン』
    ドイツ語に由来するあだ名の三人『バールト(髭)』『ライヒ(金持ち)』『マーゲン(胃袋)』
    他、全ての登場人物がそれぞれの特色を発揮してミステリの中で機能し活き活きとしている。

    犯行時刻に京都観光のガイドのアルバイトをしていたというアリバイを証明するために、一度会っただけの老夫婦を捜すという『幻の女』風の導入も面白い。密室の謎に関しては『ぎりぎりセーフ』といった感じだが、そこにいたるまでの論理の積み上げはさすが。青春物語の中に緻密に溶け込ませた伏線の数々も、いつもながらに見事。解決編の意外な舞台にも驚いた。

    誰が、なぜ、どうやって、の謎が三拍子そろって解明される面白さ。戦後の京都の叙情的な風景と青春の苦さ。そして最後にわかる人間の心の謎と余韻。切に復刊を希望します。

  • イメージ参照(http://blogs.dion.ne.jp/kentuku902/archives/3491571.html)
    日本推理作家協会賞候補(1983/36回)

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著者プロフィール

1928年岐阜県生まれ。慶應義塾大学文学部英文科卒業。出版社勤務を経て文筆活動に。52年探偵小説専門誌『宝石』に短篇「白い路」が掲載され、ミステリ界へデビュー。77年『透明な季節』で第23回江戸川乱歩賞を受賞。『海を見ないで陸を見よう』、『リア王 密室に死す』など旧制高校を舞台とした清冽な作品で注目され、『龍神池の小さな死体』『清里高原殺人別荘』『葉山宝石館の惨劇』等、巧緻な作品で、本格ミステリファンの記憶に残る傑作を多数発表。90年逝去。

「2023年 『梶龍雄 青春迷路ミステリコレクション2 若きウェルテルの怪死 〈新装版〉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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