真っ暗な夜明け (講談社ノベルス ヒD- 1)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (338ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061821293

感想・レビュー・書評

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  • 単純な事件だからこその幾多もの可能性を一つ一つ紐解き、一つ一つ論理的に削除していく。
    仮説を立て、そして壊す。その"構築"と"崩壊"の作業がとても面白く、それだけでも十分な満足感を得られる。

    最終的に解決の決め手となる「犯人が像ではなく台座を凶器に選んだ理由」があくまでも蓋然性の高い可能性であることが唯一の穴かもしれないが、大したことではないだろう。
    その理由も十分に意表を突くものであり、そこからタイミングや誰が持ち込めたか(大きなカバン)と発展し、スルスルとパズルが解けていくさまも圧巻。

    島田荘司は「薦」で本書を一種の究極的論理小説と評し、括弧内で
    だってどこにでもある地下改札口とトイレ、どこにでもいるバンド・メンバーだけでできあがっているこの長編を、ほかになんと言おう。密室も生首を館もない。
    と記している。
    そう、何を隠そう本書には論理しかないのだ。

    文体も好みだし、解決編の中で堂々と”分かりにくい"冗談を連発するという粋なことまでしてくれる。さすがメフィスト賞。さすが氷川透。
    他に類を見ない、替えの利かない傑作だ。

  • メフィスト賞。東大卒らしい。終電間際の駅のトイレで、昔の仲間が死んでいるという、ガチガチよりのフーダニット。作家と同姓同名の探偵役が出てくる点、バンドなどご自身の趣味を色濃く反映している点、読者の挑戦に自分の実体験ですみたいな語り入れちゃうところ、あんまり合わなかった。やや鼻につく。あと、三人称の視点転換が煩わしく読みにくい。叙述トリックに触れていたので、仕掛けがありそうだと思ったが、なんとなんもない。
    ミステリとしては、なぜ凶器に銅像ではなく、銅像の台座を使ったのか?というところがロジカル。
    島田荘司の解説も凄く、本格は人間など描かない方が安全とのこと。まあ、そうなのかもしれない。

  • 氷川透。学生時代のバンドメンバーの同窓会の帰りに、改札前だ別れたメンバーが駅構内のトイレで死体として発見される。推理小説家志望の主人公は事件の犯人を追う。
    ほんのささいな可能性も拾って検討し一つ一つ潰していくスタイルは徹底的で感心する。しかしくどいと思う人もいるだろう。小説としてよりひたすら謎解きに力を入れた作品です

  •  灰汁の強いミステリが受賞することの多いメフィスト賞の中で、正統な本格ミステリであるが故、返って知名度が低くなってしまっているような気がする本書であります。
    特徴はなんといっても、過剰なまでの論理性でしょう。作者が、本書で成し遂げようとしたのは、ミステリを語るとき、しばし議論に上がる『推理の絶対性』というものだと思います。
    しかしこの場合、あらゆる可能性を上げ、それを丹念に考察して、片っ端から排除していく。といった工程が不可欠になります。そしてこの部分が物語の殆どを占めているため、盛り上がりに欠けるといった意見があるのも仕方がないでしょう。
    それでも、フーダニット以外に、『なぜ凶器におあつらえ向きの像があるのに、その下の台座を凶器に用いたのか』という魅力的なホワイダニットが用意されており、充分読ませてくれました。その答えも、幾度となく議論されたからこそ、活きてくるもので「あっ、そうか!」と思わず手を打ちました。
    そのほかにも、被害者の隣人が聞いたという、ドアの開閉音とインターホンの謎、などについての推理も大変楽しく読めました。
    派手なトリックこそないものの、端正なロジックで本格ミステリの面白さを十二分に味わえる良作です。

  • ロジックを主体とした本格ミステリーです。ロジックの積み重ねで犯人を絞っていきます。「何故犯人はブロンズ像そのものではなく、台座を凶器に使ったのか?」のロジックは読み応えありました。 ロジカルな読者挑戦物好きの方なら必読です。
    ただ、かなり地味だったので、どこかにアクロバットな仕掛けがあればいいなと思いました。

  • 「本質直観型の名探偵ならとっくに犯人を名ざししてるころだろうね。でもぼくは、あらゆる可能性をー完全にありえない可能性を除くすべての可能性を、パラノイアックに追求するから。しまいには、それが自己目的化してしまうこともなきにしもあらずだけどー。」推理が素晴らしい!「読者への挑戦」付きで最高!

  • うおおお。ロジック、ロジック、ロジック!!
    私の大好きな、理詰めでの解決というストーリー展開(→動機は問題じゃないんだ!)、個性的なキャラクター(→探偵役 氷川透。あと詩緒里ちゃんかわいい)、好みの文章(→探偵の孤独妄想(笑)に対する軽いつっこみなど、随所に遊びが含まれてて、読んでて心地よい)。
    こんな方が2000年にデビューされていたとは。今まで知らなくてごめんなさい、な気分。
    そのくせ評価星4つなのは、この人の作品は一式読んだ上でまた再度、五つ星にするかどうか再考します。ということで(仮)評価です。
    書店で手に入る著作は買って、無理なものは古書店めぐりでもするか。。。

  • 終電間際の地下鉄駅構内のトイレで、かつてのバンド仲間の一人が死体となって発見された。
    ただ、殺されたのは駅の改札入り口前で別れたはずの人物だった。
    また、犯行には一見凶器に適しているブロンズ像ではなく、なぜかその台座が使用されていた。
    警察の捜査と並行し、主人公も仲間と連絡を取りながら情報を集めている中、第二の殺人が行われる……。

    複数人の登場人物視点で、切り替わりながら話が進んでいくため、全体の流れはとても分かりやすかったです。
    第一の殺人の際、なぜ台座が使用されたのかと、凶器に注目するところから、論理的に犯人を特定する点は、新鮮味を感じました。
    被害者が駅構内に入ったタイミング、犯人が殺害を行ったタイミングについては、かなり綱渡り的なものとなっていますが、そこは致し方ないかと思いましたが読み応えのある作品でした。

  • 駅構内でバンド仲間が殺害される。並みの作品では、考慮すらしない別解を残らず潰していく。それが、ある種のパフォーマンスの役割も果たしている。彼は確かに名探偵に相応しい存在だ。意外性がほぼ無い展開ではあるが、最後まで退屈することはなかった。

  • 自称小説家の氷川が、学生時代のバンド仲間と再会する。久々に会って皆が変わらない事を実感したが、その帰りの駅で事件は起こる。終電を待っている間、改札からホームまでの狭い空間で殺人が。

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