- Amazon.co.jp ・本 (222ページ)
- / ISBN・EAN: 9784061960169
作品紹介・あらすじ
巨大な都市のゴミの捨て場所-夢の島。バイクを疾駆させ、主人公を惹きつける若い女。ゴミの集積地が、"魅惑の場所"に鮮かに逆転する-時代の最尖端での光芒を放つ、日野文学の最高傑作。芸術選奨受賞作。
感想・レビュー・書評
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人生を中庸に生きてきた中年が、台場の埋立地、そこで出会う不思議な少女に惹かれていく話。
ディストピアと咽せ返る様な自然の鮮やかなコントラストが気持ち良い。白昼夢のような内容に、熱の籠った作者の筆が合わさり、特異性を感じた。短いボリュームに力強いインパクトを残す印象深い一作。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
前半は片岡義男、後半は安部公房。。
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古本も置いてある立ち飲み屋にて、友人の力説にほだされて購入。
これは文学における都市論である。
都市の見方を変えてしまった(スケールの変更というよりは、意味の変容だが)人間の物語。
この作品が書かれた当時の東京の姿はすでに存在しない。
それでも今でも通じる都市論になっていると思う。
そして極めて文学的であることも付け加えておきたい。
処分日2014/09/20 -
最初は、何となく自分を探す孤独な中年男性が若い女性に惹かれて、というありがちな話かと思った。そのベタな構成でも、物・都市・自然の渾然一体とした生命力や、自分の外と内がつながってくるようなビジョン、細部と構造の連結が面白い、と思っていた。都市の循環。
冒険物としての楽しさもあり。人工物と生物とが交じり合ったイメージの不気味な美しさもあり。思わぬどんでん返しの筋書きの面白さもあり。
非常に充実した読後感であった。 -
再読。毎日TVが映し出す惨状を目にしてたら無性に日野啓三を読みたくなった。その昔かつての13号埋立地を時どき訪れた。その理由がこの小説にある。廃棄物でできた土地にも生命は芽生える。無機質な光景にも魂が宿る。心象風景と現実風景を合致させてくれた稀有な小説。傑作。死ぬほど好き。
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大好きなんですよね〜大沢在昌。ちょっと色を変えて。
24年間、連絡のなかった父の「遺産」を巡る争いに巻き込まれる、フリーのカメラマンの主人公。遺産とは何なのか、夢の島とは何なのか…糸を手繰り寄せながら、敵なのか味方なのかもわからない人間の中でついに夢の島までたどり着く、という話。
ひとつも飽きさせないところがいいです。実際、こんなに行動力あるやついねーよ!と思うけどそこは笑。あっさり正体バラしたり、主人公の憶測どおりに事が進んだり、ご都合主義な感じはあるけどとにかくキャラが魅力的で引き込まれる! -
後半の生命力の生い茂るむせ返るような描写より前半の無機物めいた乾いた記述の方が好みではあります、が面白かった。幻視的です。
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「戦争のあと一切の神がかり的なこと、迷信的なことはもちろん
まともに宗教的なものにさえ反発を覚えてきた」
という主人公(建設業者)が、拡大を続ける80年代の東京を偶像視するという小説
これはデカダンスか、それとも耽美主義か
あるいは、単に自覚のない、無責任なだけのナルシシズムか -
2010/2/25購入