われら青春の途上にて,青丘の宿 (講談社文芸文庫 りA 3)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (355ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061962743

作品紹介・あらすじ

祖国が分断され、まだ多くある差別の中で、若い青春を、本当の生きかたとは何か、を真摯に問いながら生きる群像。李恢成の初期中篇「われら青春の途上にて」「青丘の宿」ほか父親の死を契機に、対立し、相反する二つの組織が手を結ぶ僅かに残された"黄金風景"を描く「死者の遺したもの」収録。

感想・レビュー・書評

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  • 1972年に在日韓国朝鮮人として初めて芥川賞を受賞した李恢成さんの作品を初めて呼んで見た。「われら青春の途上にて」「青丘の宿」「死者の残したもの」の3編を収録。いずれも自身の身の回りのことに題材をとった私小説的なものだろう。
    読みながら驚いたのは、1970年代にはここまで在日色の強い作品が読まれる素地があったのだということ。現代に至るまで在日作家の系譜は連綿と続いているけれど、最近は日本社会の狭量さの影響を受けてだろう、こんな濃さのある作品はなかなかお目にかかれない。しかも当時はまだ民団より総連のほうが日本社会にひいきされていたことがうかがええる内容も。50年たつと何と状況が変わることか。
    3編のうちでは、在日青年・少年と下宿の日本人のひとり者の女性の温かなやりとりが感じられる「青丘の宿」がよかった。世のなかにはいつも世間体をあまり気にせず自分の感覚で人とつき合える人がいる。一方で、その有難さがあまり文章になっていないのもちょっと印象的だった。たしかに、温かなふれあいがあることが当然であり、その有難さをことさらに書き立てるものではないのかもしれない。でもやはり、その温かなふれあいこそが私の心を打つものだった。

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著者プロフィール

1935年樺太(サハリン)・真岡生まれ、早稲田大学露文科卒。小説「またふたたびの道」にて群像新人文学賞を受賞。その後、「砧をうつ女」で芥川賞を、「百年の旅人たち」で野間文芸賞を受賞。他の著書に、「伽椰子のために」「見果てぬ夢1~5」「サハリンへの旅」「流域へ」「四季」などがある。

「2020年 『地上生活者 第6部 最後の試み』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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