光の中に: 金史良作品集 (講談社文芸文庫 きE 1)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061976603

作品紹介・あらすじ

日本の戦争と侵略による苛酷な時代に、在日朝鮮人作家の先駆となり、多くの傑作を残し逝った金史良の代表作九篇。1914年(大正3年)、朝鮮・平壌(現・ピョンヤン)に生まれ、渡日して旧制佐賀高校、東京帝大に学び、同人誌に執筆。少年と南先生の心の交流を描く「光の中に」で評価を得、鋭い風刺の力業「天馬」他を書き、弾圧を避け戦時下に帰国。後、朝鮮戦争で人民軍に加わり、戦病死。幻の名作群の甦り。

感想・レビュー・書評

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  • ■一橋大学所在情報(HERMES-catalogへのリンク)
    【書籍】
    https://opac.lib.hit-u.ac.jp/opac/opac_link/bibid/0000150490

  • 「天馬」を読了

  •  差別が蜘蛛の巣のように社会の隅々にまで及んでいるとき、差別される側の人間は、白血病で増殖した白血球が周りの正常な赤血球を攻撃するように、自分の精神と肉体を自分自身の手でむしばんでいく。その姿は、同情を超えて侮蔑感をもよおすほどに醜悪なものとなる。『光の中に』や『天馬』は、戦前の朝鮮半島や内地に暮らした朝鮮人のそんな現実をあますところなくとらえている。被差別の民の苦悩を描いた小説は各国にあるが、差別される人々の屈折した醜い姿をこれほどまでに描いた小説は少ない。金史良、渾身の作だ。
     しかし、読み手の日本人は忘れてはならない。金史良が本当にあぶり出そうとしたことは、植民地支配の重圧で押しひしがれ、ねじ曲がった醜い朝鮮人の姿ではない。鏡に向けて強い光を放てば、それが強烈な反射光として帰ってくるように、金史良が射貫こうとしたのは差別する側の日本人、そのさらに醜い姿だった。自虐的な朝鮮人、おどおどと振る舞う朝鮮人を見下し、文明と文化を授けてあげると横柄な態度をとり続けた日本人は、単に植民地支配の統治機関の人間だけではない。路地裏に暮らす庶民もまた喜々として池に落ちた犬をたたく役目を買って出たのである。

  • 戦前に初めて、韓国人で芥川賞候補になった作家、金史良。

    歴史の荒波にもまれながらも、気高い作品を残す。
    その最傑作が「光の中に」。
    短い短編ですが、読了後に気持ちが洗われた作品。

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