- Amazon.co.jp ・本 (206ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062054324
作品紹介・あらすじ
医師はわが目を疑った。なぜここまで子どもにむごたらしくできるのか。そしてなぜそれでも子どもは親を慕うのか。家族とは何か、人の優しさとは何かを問う、日本初、衝撃のドキュメント。
感想・レビュー・書評
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『凍りついた瞳』の原作となった本である。
初版は1993年と、20年以上も前だ。それだけに、本書で描かれている児童相談所や警察の動きなどは歯痒いばかりだし、本書の事例は「極端な例」ともされていて、当時の感覚ではそう見えたのかもしれない。現在の状況を考えると、そうでもないのではないかと感じられる。
それでも、当時ならこんな風に放り出されていた事例が、今はもう少し突っ込んだ対処ができるようになったのだと思えば、少しは気が晴れる。
虐待は根が深い。対応の難しさもある。子どもに残す心の傷も恐ろしく深刻だ。本書が書かれた当時よりは改善しているとはいえ、制度や法律の壁、対応する職員の抱える件数の多さや専門性など、関係各所の努力だけでは簡単に解決できない問題は相変わらずだ。
家族を孤立させない、知らぬふりをしない地域の目、子育てを見守る社会の目というのが、その予防には欠かせない。
問題提起としての役割は十分果たしていると思うが、一読者として残念なのは、ほとんどが虐待が発覚してまずどう取り組んだかまでで、その先がないこと。それは親子関係が改善に向かわず、失敗した例(つまり、支援者との関係が断ち切れてしまっている)を中心に紹介しているからで致し方ないのだけれど、この子どもたちがどうしているのかが、本当に心配だ。無事でいてくれるだろうか。どこかで救いの手が差し伸べられて、それにすがっていてくれることを切に願う。詳細をみるコメント0件をすべて表示