ゴシックハート

著者 :
  • 講談社
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感想 : 45
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  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062125192

作品紹介・あらすじ

死と暗黒、耽美と残酷に彩られたゴシック世界の全貌を、渋沢龍彦・中井英夫の後継が描く初の本格「ゴシック」評論。

感想・レビュー・書評

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  • 借りたもの。
    ゴシック(ゴス)の精神を文章化した一冊。
    文学、映画、音楽、コミックなど、昨今ではサブカルチャーに連綿と流れる、ダークな面を偏愛する精神の根底にはなにがあるのか、それに触れた人々が惹かれる理由を紐解いてゆく。
    根底にあるのは誰もが持つコンプレックス、どす黒く渦巻く情念など、否定しても消えない、人が抱える“負の面”を刺激し、それらの受け皿、その存在を肯定するような世界観であること。
    是とされる道徳や美徳へのアンチテーゼ――抑圧された反発であったり、時にその欺瞞であったり――を指摘する。
    全体を通して、身体的コンプレックスに起因するような指摘をする印象が強い。
    人体改造(タトゥー、整形など現実的な物からフィクションまで)、異形、奇形などある種の極端な強調、人造美や両性具有などは究極の理想として、現れることを指摘。
    世紀末の暗黒は、多くのものを受け止める優しい世界だった。

  • しばらく前に読んだ『死想の血統 ゴシック・ロリータの系譜学』から芋蔓で読んだ一冊。『死想の血統』に関してはゴシック・ロリータに関してやや重心が置かれていたが、こちらはゴシック単一。どちらもゴシックを含むので内容的に重複している部分があるが扱っている作品が異なるため、興味があるなら両方読んで損はない。

    語り口という点では『死想の血統』では論者「俺」が語りの前面に出ているが、『ゴシックハート』では一歩引いた静か。

  • 再びゴシックな感覚が蘇りつつあるので再読。ゴシック文化の評論書であり入門書とも言える一冊。あらゆる作品を取り上げゴシック・幻想・耽美の世界と魂について解説されている。

    個人的には残酷・身体・異形・人形・幻想の章における解説がとてもしっくりくる。ただの加虐への歓びとは違う陰惨な光景へ惹かれる感覚、苦痛と呪い、強い自己精神と同時に手放したいという願望…。二階堂奥歯氏について触れられているのもこちらの書籍であり、「八本脚の蝶」にて綴られる感覚はこちらでも評されている。
    理想の姿には遠いが…本作にて紹介されている書籍を読んで少しでも満たそうと思う

  • 私がこの本を読了し、ここではない別のページに感想を投稿してから8か月程度経ちましたが、私の本棚は、ブクログを始めたばかりの頃とは、かなりの変貌を遂げました(笑)。澁澤龍彦や中井英夫、ハンス・ベルメール、恋月姫、清水真理、丸尾末広に谷崎潤一郎、江戸川乱歩、ポー、バタイユ、美術雑誌「夜想」・・・・・・と、そのどれもが、この本で高原さんが取り上げていた‟ゴシック‟に関係するものばかりになったのです! 当時はよく分からず、ただゴシックという雰囲気のみですっ飛ばしながら読んでいたのも、今では少しずつ理解し、楽しんで読めるようになっています。そして、8か月たっても尚、これらゴシックの魅力に飽きを感じることはまったくないのです。澁澤龍彦やハンス・ベルメールに出逢うことが出来たのは、間違いなくこの本で、断言することができます、この本は私の人生を変えた! ‟ゴシックハート”を持つものとして、この本は私の永遠の聖書なのです!

  • ゴシックハート、という言葉を知ったとき、なるほど! と頭の蓋が開いたような気がした。
    いままで自分の嗜好を非人間主義と呼んだりアンチヒューマニズムと呼んだり悪魔主義と呼んだりしてきたが。
    乱歩・中井英夫の「人外」と並んで、自分の嗜好を表す言葉のひとつとして、活用したい。

    評論の内容としては非常に偏向のあるものだと思う。
    しかし著者のゴシックハートに忠実だから許されるのだ。

    評論というよりも、
    自分の好みの作家たちを開陳した、といったライトなものだが、
    もっと読み込んでいきたい。

  • ゴシック文化が好きならば間違いなく崇高なバイブルとなる一冊。各テーマごとの研究やそれによる考察、関連資料の紹介が実に見事で、ページを捲る度に静かで冷たく美しい、愛すべき世界の尊き秘密へと誘ってくれる。読めば読むほどより一層愛が深まり誇りとなることは間違いない。

  • 今まで自分が好きだった色々な断片が、「ゴシック」というひとつの概念にまとめられた気がして読み終わった時凄くうれしくなった本です。
    その一つ一つが、好きと公表するのをちょっと躊躇うようなものだったりしたからなおのこと。
    そういうものが好きであることに後ろめたさを感じることが多かったのですが、なんだかこの本にはそれを許されたような気持になりました。

  • 自分が何故ゴスが好きか分かった。
    しかし、これを読むよりも、幻想文学を読み耽美に酔いしれる方がよいと思った。

  • 自分はゴシック者成分は少な目だった。
    (乱歩とか谷崎とか好きなのは、耽美とか幻想とか猟奇とかの方面ですよ)
    世界への違和感に自覚的であるということは生き難いもの。
    で、違和感には色んな種類があると思うんですよ。(どれがいいとかの優劣なんてなく)
    その捉え方の一種としてゴシック的な方向があると。

  • 著者のゴシック研究を一冊に(なんとか)まとめたもの。
    人外といったキーワードで、わかりやすくまとめてくれていると思います。

    私はこれで、自分の好みの服を着ようと決心できましたw勇気をありがとう、な本です。

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著者プロフィール

高原英理(たかはら・えいり):1959年生。小説家・文芸評論家。立教大学文学部卒業、東京工業大学大学院社会理工学研究科博士後期課程修了。博士(学術)。85年、第1回幻想文学新人賞を受賞。96年、第39回群像新人文学賞評論部門優秀作を受賞。編纂書に『リテラリーゴシック・イン・ジャパン 文学的ゴシック作品選』『ファイン/ キュート 素敵かわいい作品選』、著書に『 ゴシックスピリット』『少女領域』『高原英理恐怖譚集成』『エイリア綺譚集』『観念結晶大系』『日々のきのこ』ほか多数。

「2022年 『ゴシックハート』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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