犯罪被害者の声が聞こえますか

著者 :
  • 講談社
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感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (331ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062125918

感想・レビュー・書評

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  • 裁判は犯罪被害者のためではなく、単に社会の秩序を守るためにあった——ということに、この本を読んで初めて気付かされた。犯罪の被害者や遺族は、検察の「証拠品」と同じだったのだ。
    癒えない心身の傷を負い、裁判記録も見られず、加害者には往々にして賠償能力がなく、働けずに生活も立ち行かなくなる、そんな犯罪被害者たちが「犯罪被害者の権利」を求めて立ち上がった記録。私が見た、友人が亡くなった事件の裁判の光景を脳裏に浮かべ、反芻しながら読んだ。

  • もうね、もうね、
    あのテレビで見た事件の被害者が、どんな状況で居るのかが解る衝撃ってこの上無いってくらい。
    事件の概要や犯人の情報なんかは報道され、犯人逮捕で報道もある意味終わるけど、犯罪被害者は犯人逮捕で全てが終わる訳ではない。
    そう言われればそうだと、改めて気付かせてくれる。
    入院治療費などは保険が適応されず、『加害者に支払って貰って下さい』と言われる。
    けれども加害者に支払い能力が無い場合は、当然全額被害者に実費請求される。

    今の司法は『加害者を逮捕し、その罪の内容を審議し、加害者の罪の大きさを決める』と言う物で、『被害者を救済する』と言う物ではない。
    『事件』は当然加害者と被害者が存在している物なのに、犯人逮捕で終わってしまう。
    犯人の弁護には国選弁護人として『無料』の弁護士が付き、更生や社会復帰には税金が使われる。

    けれども被害者救済には、あたかも『相手が悪かった。犯人は金が無い奴だから、どこからも何も出ないから。まぁ、何とか自力で立ち直ってよ』と言わんばかりの状況に驚愕する。

    本当にそう言われれば、事件の概要や犯行の手口、被害の状況は報道されるが、その被害がどの様に救済されるのかは今まで全く情報として耳にした事が無かった。
    当然救済はされる物だと言う先入観から、それに目を向ける必要性を感じなかったのかも知れない。

    『被害者』と言う立場になって初めて直面する現実に、どこに何を訴えればイイのか、また、いわゆる『泣き寝入り』しか無いのか。

    犯罪被害者が立ち上がり、ついには国を動かした。
    このご時世、いつ我が身我が家族になるか解らない被害者の実情を知る為に、是非とも読んでおいて頂きたい一冊です。

    『知る』と言う事が、『動く』に繋がると思います。

  • 胸がつぶれる想いで読みました。被害者の人権は常日頃から無視されていると感じていましたが、ここまでひどかったとは知らず、自分の無知も恥ずかしかったです。犯罪被害者等基本法は平成16年の臨時国会で設立していますが、そこまでの道のりについて取材を重ねた筆者の想いが書ききれないほどこめられていました。多くの人に読んで欲しい1冊です。

  • ある日突然犯罪被害者になる可能性があるこの世の中で
    不幸にも犯罪被害者となってしまった人たちのリアル。

    あまりの重さに心にいつまでも残る複雑な感情。
    この感情がこみ上げなくなったら終わりだと思う。

  • 犯罪被害者の人たちが結束して政治を動かし、被害者の権利を認め支援する制度ができるまでの記録。行政の対応はどうしても後手後手になってしまうのかなと思うと残念な気がしたけれど、司法は何のためにあるのか考えさせられました。そして何の落ち度もないのに過酷な状況におかれながらも、必死で生きていく人間の力ってすごいとあらためて思わされました。

  • 確かに犯罪被害者の人権は軽視されている。

  • とても重い内容の本。
    岡村さんという弁護士さんが、自分を逆恨みした男によって妻を殺されて、初めて被害者の立場の現実を知る。
    今まで弁護士として、数々の事件に携わって熟知していたはずの分野であったのに、その立場があまりにも理不尽であることを実感した岡村さんは、全国の自分と同じ立場にいる人々の為に立ち上がることを決意した。
    先日の光市母子殺人事件の本村さん、桶川ストーカー事件の猪野さん、文京区幼稚園児殺人事件の松村さんら、全国で犯罪被害にあった人たちがみんなで協力、連帯して被害者の権利の拡大を国に働きかける運動を展開していく様を描いた作品。
    日本でどんなに被害者が冷遇されているか、ということを改めて知った。
    自分の治療費は全額自己負担となって、回りからは何か落ち度があったかのように白い目で見られたり。。。
    ある女性につきまとった男が、なんの関係もないその女性の同僚の所におしかけてガソリンをかけて火をつける、という事件があり、その被害者は全身火傷を負いながらも、奇跡的に命は助かったのだが、ひどい後遺症(体中の火傷の跡)が残ってしまった。
    そんな女性が今回の運動に参加して、いろいろな集会に参加してみんなの前で自分の体験を話しているのだ。
    本当にすごい。とても真似できることではない。

    この運動は、司法の抜本的改革的な内容な為、法務省やこれに反対する弁護士グループなど、いろいろな問題が山積しているようだが、一歩ずつでも前進してほしいと思う。

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著者プロフィール

1969年(昭和44年)、東京都に生まれる。NHKディレクターとしてNHKスペシャル『我々はなぜ戦争をしたのか ベトナム戦争・敵との対話』(放送文化基金賞)、『イラク復興 国連の苦闘』(世界国連記者協会銀賞)などを企画制作。退職後、カナダ・ブリティッシュコロンビア大学でPh.D.取得(国際関係論)。国連アフガニスタン支援ミッション和解再統合チームリーダー、東京大学准教授、国連日本政府代表部公使参事官などを経て、現在、上智大学グローバル教育センター教授。著書に『我々はなぜ戦争をしたのか』『犯罪被害者の声が聞こえますか』『平和構築』、Challenges of Constructing Legitimacy in Peacebuilding、『人間の安全保障と平和構築』(編著)など。

「2020年 『内戦と和平 現代戦争をどう終わらせるか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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