小説 日米食糧戦争-日本が飢える日

著者 :
  • 講談社
2.63
  • (0)
  • (1)
  • (3)
  • (4)
  • (0)
本棚登録 : 32
感想 : 5
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (287ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062151924

作品紹介・あらすじ

現職国会議員が書いた大飢餓パニック。コメが消える!小麦も大豆も消える!アメリカの輸出禁止で飢えた民衆は略奪を始め、暴動が続発する。追いつめられた日米交渉の行方は…BSE追及など農政問題の第一人者として知られる著者が、最新データを駆使して描く恐るべき日本の近未来。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 星3つ、としたが気持ち、3.5ぐらい。09年に発行された本なのだか、ウクライナロシア戦争を目の当たりにした今では、ドミノ倒しになる経済にヒヤリ。そしてわかったこともひとつ。この本のタイトルにもあるが、当時も日米の対立というかたちに還元される問題ではなかったのだろう、ということ。本の内容もそうはなっていない。今は、おそらくひとつでも食料に苦しむ国、ひとりでも食料の貧しさから救われることが世界を救うのだろう。都市、農村、島での生活が、対照され、島から都会にでた若者が島に帰る。与党政府と野党との政策の対照があり、野党は、政権奪取に成功するが、食料増産に地方への働きかけを繰り返していく働きかけの途中、刺殺される。遺伝子組み換え穀物を扱う企業の暗躍で、種籾が危険性にさらされる。さまざまなシーンがある。登場人物が多い。実はこの名前の多さが混乱するかも。必ずしも問題解決を意図した小説でもない。それは、政権交代した首相が刺殺されることでもわかる。むしろ描かれた貧困の問題が切実である。多くの社会的背景が変化しているのだなあ、と思う反面、現在も困り事、不幸のかたちは、似ているかも。

  • 1.まず、事実に間違いがある。
    2.中国の食品を悪く書きすぎ(根拠が乏しい)
    3.結局民主党の官僚叩きがステレオタイプ
    4.小説としてつまらん。

  • 食糧危機についてかかれた小説。
    …その辺のことについて知ることができて、まぁよかったが、ストーリーがいまいちつかみづらいし、一貫性がなくて残念。

  • 食糧問題を知るための取っ掛かりとして読むには良い本。小説としてはB級。

  •  田植えを終え、幼い苗が空の青を反射する水田を眺める。その苗たちが、秋には豊かな実りをもたらしてくれるだろうかと、本当に心配だった。…そんな思いが巡った昨年の春。幸いこの年の米は平年作だったが、ご存知の通り、飼料価格が高騰、食品の相次ぐ値上げなど、食料安全保障について、強く考えさせられた年だった。

     資源のほとんどを海外に依存する日本は、WTO体制を主軸に輸入拡大で規制緩和、国内的には中小の作り手に規制強化的だ。しかし汚染米や残留農薬などの数々の事件では、安穏然のお役所仕事がその杜撰さを露呈し、ならば職員を増やせと、官僚支配の構造はちゃっかり強化されていく。
     こんな状況で、国益最優先国家のアメリカが、食糧の輸出をストップしたら、日本はどうなってしまうか?たとえばその年が九三年のような冷夏で、輸入穀物をめぐる数々の危機――輸出国の旱魃や、巨大台風――が同時に起こってしまったとしたら?…という仮定がこの小説の主題だ。

     筋書きは、米大統領の輸出規制宣言が「起」。そこから起こる様々なパニックの連鎖が「承」。日本国内の治安の維持すら危ぶまれての内閣総辞職で、もと野党から政権与党に「転」じた主人公代議士ほかの粉骨砕身の活躍で、国家未曾有の危機が救われていくという「結」とたいへんわかりやすい。
     国内の様々な状況が筋書きをカタルシスへと加速させていく。情報の多様化が進んだように見えるのに、記者クラブ発表の画一情報を、視聴率稼ぎのニュース番組というフィルターを通して、大量に排出し続けるしかないマスコミ。その画一的均質的な情報に付和雷同するしかない巨大多数の普通の人々。その一方、反社会的なバイアスでインターネット網にネットワークされていく格差社会のアウトサイダー、企業の底辺、現場の労働者たち。
     政治家、官僚の習性を知り尽くし、ロビー活動を進めつつ虎視眈々と時節の到来を準備する穀物メジャー。トップは語る……「わが社は世界戦略としての強力な武器になる遺伝子組み換え種子を持っており、その種子が最も強力な武器となるのは、これまでにない最大の食糧危機の年、今年である。食糧こそが世界を支配する力、言ってみれば核ミサイルにも匹敵する戦略兵器である」と。

     日米同盟という幻想からか危機意識が薄く、外交交渉能力も低い現政権や官僚組織を悪に見立て、志高い野党政治家と官僚を善とする図式で、現在の日本の危機管理能力のなさを「政治の責任」として整理できたことも、小説としてわかりやすい。
     農業の経験を持ち、野党代議士となった主人公の人物像には、著者自身が色濃く投影されているし、想像だが、登場する商社マンや農水官僚のキャラクターも、実在の人物をモデルにしているのだろう。
     ノンフィクションではなく、近未来フィクションという小説だから、最終章の締めくくりで物語は終了する。しかしこれが、著者の想定している人物たちと語られているだろう現実の政治の場合はそうはいかない。終わりがないからだ。この意味で、今の日本が食料パニックに陥るまでの描写は、現実の状況がかなり反映され、惹きこまれるようなリアリティを感じたが……。
     食料をめぐる情勢については丸紅経済研究所・柴田明夫『食料争奪』、平和ボケ日本に想定外の危機が突然訪れる状況については村上龍『半島を出でよ』が思い出され、読みやすい流れの小説だった。さて、この秋の政権はどうなっているだろうか?

全5件中 1 - 5件を表示

著者プロフィール

1942年、長崎県生。弁護士。2010年6月、農林水産大臣に就任、12年反TPP・脱原発を掲げ離党。現在は、弁護士の業務に加え、TPPや種子法廃止の問題点を明らかにすべく現地調査や講演を行う。

「2023年 『子どもを壊す食の闇』 で使われていた紹介文から引用しています。」

山田正彦の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×