政治の起源 下 人類以前からフランス革命まで

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  • Amazon.co.jp ・本 (370ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062171519

作品紹介・あらすじ

ベストセラー「歴史の終わり」から20年。フクヤマが最後に選んだテーマは世界・全社会における「政治秩序の起源」だった。

感想・レビュー・書評

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  • 世界の主要な国を例にして政治とは何なのか国家のあり方、秩序ある国家として成り立ち発展するための方法論や内容がつぶさに記載されている本である。なかなか難しい本であるが近代的政治制度とは一体人類史の中でどのように出現したのかなど様々な国の政治が行われてきた有り様を通してどのように国の政治が参考になりヒントにすべき内容なのか、それを通して今後の国の未来はどうあるべきかを問いている本。

  • 政治の本質 つまり指導者が、権威、正統性、脅迫、交渉、カリスマ性、思想、組織を駆使して主張を通していく能力である

  • 本書では、近代政治制度の3つの基本要素の残り2つ「法の支配」、「民主的な説明責任」がどのように発生したか考察する。

    「法の支配」は政治的権威から独立した宗教的権威から生じた。

    「民主的な説明責任」は王権と貴族、地主、第三身分との間での均衡の結果として生じた。特に、王権に対抗する勢力がいかに団結するかが重要であった。

    上巻よりも読むのが大変だった。

  • 内容が生物学的観点、考古学的観点から、政治の起源と政治を動かす機能・動く理由(フクヤマ氏的にいえば亀のまたその背中に乗る亀の・・・となる)を導きだすのでとても説得力がある。更に、あらゆる地球上の文明の政治形態の比較研究、つまり、時間軸・場所軸の双方からによる網羅的なアプローチからも解明していくので、一部特定の文明(中国)の考察については同感できない部分もあるものの、実に奥深い内容となっている。

  • 140607 中央図書館
    今、はやりの世界通史。だが、政治形態についての比較制度の観点で、中国の秦の制度から、インド、イスラム、ヨーロッパを行きつ巡りつ、なぜ、それぞれで異なる政治形態、文化形態に至ったのか、説明を試みようとしている。
    鍵は、「国家」「法の支配」「民主主義的な説明責任」である。

  • 近代化の諸々の要素はどれも、宗教改革、啓蒙思想、産業革命の一括パッケージの結果、生まれたものではない。独立都市や商取引の急速な発展が近代的な商法の発達を促したにしろ、法の支配はそもそも、経済ではなく宗教的な影響の産物である。したがって、経済の近代化に不可欠となる2つの基本制度―個人が社会的関係や所有権について選択の自由を持つ。政治支配が透明で予測可能な法に制限される―は、近代以前の制度、すなわち中世の教会によってつくられたのだった。これらの基本制度が経済分野にとって有効と分かるのは、もっとずっと後になってからである。p48-49

    North、Weingast、Wallisは、彼らが言うところの「自然な」秩序から「開放された」秩序への移行を促す3つの「戸口階段の条件(doorstep conditions)」があるとしている。それは軍の文民統制、上流階級に対する法の支配、「恒久的に持続する」組織(他の社会科学者は制度と呼ぶ)である。中国には「ほどほどの」財産権があったと考える私の主張を認めてもらえば、「開放された」秩序へと移行した初期の近代ヨーロッパと同じように、中国は少なくともこの3つの条件をすべて満たしていた。Cf. 'Violence and Social Order" p323<注釈より>

    これまで何世紀も世界の経済競争で大きな遅れを取った中国が、現在、これほどの成功を収めている理由は、根本的な欠陥を抱えた政治制度ではなく、科学や学問、技術革新に対する文化的態度にある可能性がはるかに高い。p102

    《第23章 私益追求者たち》
    【権力の集権化の限界と不可能な改革】
    「法の支配」は近代政治システムの重要な構成要素である。フランスでは早くから法の支配が発達していた。説明責任を果たす政治制度や資本主義が生まれるずっと以前から発達していたため、法の支配は近代政治システムや自由主義的な市場経済を保護するのではなく、むしろ伝統的な社会の特権や非効率な国家主導の経済システムを保護する結果となったのである。階層制の上位の人間が古いシステムの破綻を頭では理解し、根本的な変化の必要性があると分かったときも、利権を求める者たちの連合によって確立された均衡状態を覆すほどの力が彼らにはなかった。革命でこの均衡を打破するためには、はるかに大きな力、すなわち支配体制からはじかれた非エリート集団の怒りが必要だったのである。p139

    制度を廃止すれば社会全体が多大な恩恵を受けるにもかかわらず、制度をつくる個々の当事者の利害関係があるために、変革をもたらす協力ができないのである。p144

    《第26章 完全な絶対主義を目指して》
    ロシアは歴史にとらわれているわけではない。イヴァン4世、ピョートル大帝、スターリンが絶対主義の前例をつくったあとに自由化の時期が訪れている。今日の社会は旧体制下ではなかったかたちで流動化し、資本主義の導入により再びエリート層が定期的に入れ替わるようになった。腐敗した無秩序な選挙による専制政治は、過去にロシアが体験した残虐な独裁政治に比べればましである。ロシアの歴史は自由の拡大へ向かう道筋を数多く示しており、いつの日か改革の先例として役立つかもしれない。p203

    《第27章 課税と代表》
    政治秩序の鍵を握る3つの要素(①国家②法の支配③政治的説明責任)が最初に揃った国はイギリスである。強靭な中産階級が誕生する土壌を備えていたこの国では、一部国民が団結して当時の絶対主義的権力に抵抗することができた。そしてそれは「課税をめぐる」闘いの形で表面化したのだった。p204

    【アメリカとフランスの革命に向かって】p227
    近代の政治制度を構成する3つの要素―強力で有能な国家、「法の支配」への国家の服従、全市民に対する政府の説明責任―は18世紀末までに世界のいくつかの地域で確立された。中国は早くから強大な国家を発展させていたし、インド、中東、ヨーロッパでは法の支配が存在していた。そしてイギリスで説明責任を果たす政府がはじめて出現した。イエナの戦い以降の政治制度の発展においてはこうした制度が世界各地で模倣されたが、まったく新しい制度が追加されたわけではない。共産主義は20世紀に追加を実現しようとしたが、21世紀には世界の舞台からほとんど姿を消した。

    社会心理学用語「認知的不協和」p268
    http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%AA%8D%E7%9F%A5%E7%9A%84%E4%B8%8D%E5%8D%94%E5%92%8C

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著者プロフィール

1952年、アメリカ生まれ。アメリカの政治学者。スタンフォード大学の「民主主義・開発・法の支配研究センター」を運営。ジョンズ・ホプキンズ大学やジョージ・メイソン大学でも教えた。著書『歴史の終わり』(三笠書房、1992年)は世界的なベストセラーとなった。著書に、『「大崩壊」の時代』(早川書房、2000年)、『アメリカの終わり』(講談社、2006年)、『政治の起源』(講談社、2013年)、『政治の衰退』(2018年)、『IDENTITY』(朝日新聞出版、2019年)などがある。

「2022年 『「歴史の終わり」の後で』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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