- Amazon.co.jp ・本 (226ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062172738
作品紹介・あらすじ
あなたには命を懸けて守りたい人がいますか?中越地震の中、確かめた家族の絆。美しい自然に恵まれた新潟・山古志と、人情溢れる東京・浅草を舞台に、父と娘、家族、友人たちの「絆」を描く、心温まる感動ヒューマンストーリー。
感想・レビュー・書評
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あなたは自分の命を懸けても守りたい相手がいますか?
この本のことを知ったのは何年も前、テレビつけたときにたまたま流れていた放送時間が終わりかけのドラマに柳葉敏郎が映って、ラスト10分くらいの彼の演技が妙に印象に残り、このドラマはどういう作品何だろうと調べたことがきっかけ。
本を読み終わった後無性に観たくなったので、すぐに最初に私が気になったドラマの方も観た。
久々に気分が乗って一気に読むことができた作品だった。
登場人物たちの口調と物語のテンポ、文章の間が今の自分に合っていたからだと思う。
私自身ジョージ・オーウェルの1984年も最近読んだのだが、そちらの作品は1~10まで事細かく描写して圧倒的な物量で説明する作品のだったので、尚更この作品が読みやすく感じた。
少し前に難聴をテーマにしたsilentという恋愛ドラマが放送されていた。私自身、silentを全話見たわけではないが、あちらは例えば、恋愛における難聴者の葛藤や難聴者自身の辛さなど、心情部分を濃く表現することで恋愛要素と同じかそれ以上に難聴について重きを置いた作品だという印象を受けたが、対して"ゆきの、おと"は難聴という要素にはあまり重きをおいておらず、家族愛を第一のテーマにした作品だった。そのため比較的話が重くなりがちな難聴という要素を含んでいても、作者の絶妙な技術も合わさり、話が重くなり過ぎなかったことも読みやすさの要因の1つなのだと思う。
小説は2011年9月1日発売、ドラマは2012年1月8日。さすがに時期的なものもあり、小説にはあった中越地震のことはドラマにはなかった。
ドラマの話にはなるが、もう柳葉敏郎が里志そのもので、そのようにしか見えない。彼以上に里志を演じれる人はいない、そう断言できる。そしてラストの彼の演技はずるいとしかいえない。
これはドラマを撮った後に小説の方を寄せたのか、それとも役に合うようにキャストを合わせたのか。
"ゆきの、おと"という言葉の意味について。
雪はしんしんと降る。けれど、それは音ではないという。
しんしん、はたとえば何かの気配のようなものなのだろうか。わたしが「音」を知るのは手で触れた時の振動……「響き」によってだ。
作中にはこのような文章がある。
物語の舞台のひとつである新潟県山古志村は豪雪地帯。
雪国に住んでいる身からすると、確かに雪が降っているときにしんしんとしか表現出来ないような音のない音を聞くことがある。あの「聞こえる」ではなく「体全体で感じ取っている」と言ったほうがいいかもしれないあれこそが「ゆきのおと」で「響き」なのだろう。
また同じ家族愛がテーマでも、直近で読んだ夏化粧では私は、
子供のためなら自己犠牲も厭わないという考えも理解できない。ましてやそれを美談(感動話)にしようという考えも理解できない。と、私は感想を述べた。
しかしこちらの作品は、夏化粧とは違い肯定的な印象を受けた。2つの作品の違いは、覚悟、決意の固さの違いであると思う。
夏化粧は自身が犠牲になってでも子供を守るという考え方、一方でこちらはこの子を残して先に逝くことはできない(見守り続ける)という考え方。私は後者の方が共感できるし、より人間味を感じる。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
視点があちこち変わるので、ちょいと読みにくかった。
それぞれ登場人物の物語を深めたいんだろうけど、欲張ってる印象。
雪子さんの行動は、ちょいと酷いと思った。 -
ドラマで放送される前に予約した本が、やっと手元に届いて読んだ。 東京・浅草で船頭をしている丸との出逢いや聾唖障害の花嫁の美音と父親の里志との結婚当日、川岸と船との手話でのやりとりにドラマでの情景が重なり、涙誘いました。障害だからこその美音の「わたしはないものを考えるより、あるものを見つめ、できれば感謝して生きよう」という言葉の重みを感じた。「絆」を描く、心温まる感動ヒューマンストーリー。
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ドラマ化の方を先に 観たが、原作の雰囲気そのままで 原作を読みながら 映像を 思い出して 要所要所で 涙した。
父と娘 血は繋がらなくても親子 父と息子 どの関係も しっかり 結びついているのが 感じられて 心が 暖かくなった。 -
テレビドラマで、息が苦しくなるほど号泣・・・・。
原作もよかったです。
この作家さん、言葉の使い方がとってもうまいです。
みんなみーんな、幸せになあれ! -
2004年に大きな地震に見舞われた新潟県山古志村が舞台。
今年の春に自分自身が大きな揺れを体験したからか、人と人との繋がりを、より深く感じられるお話でした。 -
SPドラマ「花嫁の父」原作本。
新潟県・山古志と東京・浅草を舞台に、闘牛の勢子の父と聾唖の娘、船宿の跡取りの青年、彼らの周囲の人々を交えた人間模様が描かれる。
軸は、中越地震を織り込んでの父娘の親子愛、血の繋がらぬ青年親子の家族愛、そこに各々の恋がやんわりと纏う。
生活風景が繊細で、文体は癖がなく、全体的に読み易く温かい雰囲気の物語。
それぞれの人物の視点が描かれるが、個人的に最も説得力と深みを感じたのは、ヒロインの祖父から見た世界だった(父親は次点)。
文章は書き手の感覚が如実に顕在化するツールで、当人の感性や思考力、人生観などが大きく反映されるため、最も近い世代の同性キャラクターたちにそれらが顕れたのだろう。
恋愛よりも家族愛の方に重点が置かれているので、前者を期待する向きには少々肩透かしかもしれないが、地に足のついた日本の庶民の生活を丁寧に描いて見守るまなざしは、快い読後感を与える。
ドラマ化の企画と執筆とどちらが先かは不明だが、時折、文中にキャストを連想させるような部分が見られるのもご愛嬌。