- Amazon.co.jp ・本 (206ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062571746
作品紹介・あらすじ
本書は、"粒子と反粒子が実は完全に対等な存在ではない"ことを示すこの現象に、一般書としては初めて核心をつく解説を与え、それが宇宙の物質優位の問題にどうつながっていくかを平易明快に語るものである。
感想・レビュー・書評
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むかし勉強したSU(5) GUTによるバリオン数非保存による宇宙の物質・反物質非対称と,小林・益川行列によるCP非保存の関係を知りたくて読んだが,電弱理論の量子異常によるスファレロン効果などの短い紹介以外は新しい情報はなく,やや期待はずれ.
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読むたびに謎ができる、奇妙な作品。
私の脳内では追い付かな、宇宙の一片を
何度読んでも、人間の探求心はなくならない
と実感されられる本。 -
少なくとも我々が観測できる範囲の宇宙は物質からのみできており、なぜ反物質がないのかという疑問から、それはCP対称性が破れているからだということがわかり、そのCP対称性の破れからクォークの種類を予言し、量子色力学などの理論を取り入れたり、巨大な加速器によるいろいろな実験によって確かめられたということであるが、これは分子とか原子とか電子の発見に匹敵するかそれ以上のことであり、それを日本人である著者の小林先生や益川先生によるものだということで、日本人というのは改めて凄いなと思った。本の内容は難しかった。
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量子力学や群論が分からないと雲を掴むような話しの理解になってしまうのでは。新書だから仕方ないが、端折った感が大いにある。
CP対称性の破れが、バリオン数の非保存につながることは分かった。また、CP対称性の破れのためには、クォークの世代が3つ必要なのが分かったのは儲けもの。
・P31:最初の発見から30年以上経つ現在でも、中性K中間子以外ではCP対称性の破れを示す実験事実は何もない。→1997.6時点では、そうだったが、本書で触れているBファクトリーで2001年夏にこれを支持する決定的な結果が出た。
https://www.s.u-tokyo.ac.jp/ja/story/newsletter/40/4/features/06.html
http://www.hepl.phys.nagoya-u.ac.jp/~iijima.nagoya/public_lect/orium4_proc.pdf
・ゲージ理論の特徴は第二種ゲージ普遍性を実現するために、ゲージ場が必然的に導入されること、そしてゲージ場と物質の相互作用の形が共変微分という形で自動的に決まってしまう点である。
・三世代の混合にはCP対称性を破るものがある。
・標準理論の最大の欠点は、パラメータの数が多いこと。その大半はクォーク・レプトンの質量とW粒子との結合に現れるクォーク混合のパラメータである。これらはもとをたどればクォーク・レプトンとヒッグス場との相互作用に由来する。 -
【配置場所】特集コーナー【請求記号】 429.6||K
【資料ID】91000476 -
ちょっと気になるようなところが口語でフォローされてるので,大体どういう意味で書いたかというのが分かりやすい。NG粒子の質量の問題について,ヒッグス機構が「ミラクル」を起こして解決されたと書いてあって少し笑った。
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対称性についてのテーマで日本人がノーベル賞を受賞したのを機に、素粒子について学んでみようと買ってみたが、専門外というともあり、途中で挫折。いずれ、完読したい。
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(2009.01.15読了)
ノーベル物理学賞の対象となった、「対称性の破れ」に関する本です。
この間読んだ、「クォーク 第2版」南部陽一郎著、と同様、全然理解ができません。
話題が素粒子のことで、似たような話題が出てくるので、言葉に多少なじみが出てきたかもしれません。
素粒子は、大きくハドロンとレプトンに分けられ、ハドロンは、バリオンとメソンに分けられます。ハドロンは、クォークからつくられています。
レプトンの代表は、電子やニュートリノです。バリオンの代表は、陽子や中性子です。メソンの代表は、π中間子です。(大雑把ないい方ですので、専門家の方は突っ込まないでください。)
ご存知のように、物質のもとは、原子で原子は、原子核と電子から構成されています。原子核は、陽子と中性子から構成されています。これで終わりかと思ったら、そうではなく、素粒子から構成されているということになって、未だに決着がついていないわけです。
「対称性の破れ」の話は、反粒子が絡む話です。
「1930年代初頭、人類は初めて反粒子の存在に気付き、その実証を手にした。反粒子があれば、当然それからつくられる反物質が存在して不思議はない。現に実験室レベルでは反水素の合成に成功している。ではなぜ、この宇宙は反物質ではなく物質からできているのであろうか?」(5頁)
●反粒子の予言と発見(14頁)
1920年代の終わりにディラックは、電子と同じ質量をもち、電荷は電子と反対のプラスの粒子が存在するはずであると予言。
1932年、アンダーソンは、宇宙線による反応のなかに陽電子を発見。
1955年、バークレーの加速器で、反陽子が実験的に確認された。
●対消滅(23頁)
電子と陽電子が出会うと対消滅する。一般に粒子と反粒子が出会うと対消滅が起きる。対消滅反応では質量のエネルギーが解放されて最終的には熱エネルギーになる。
●現在の宇宙に物質があるのはなぜか(25頁)
宇宙はビッグ・バンで始まり、現在に至るまで膨張を続けていると考えられている。
高温高密度の状態では衝突によって頻繁に粒子と反粒子の対生成が起きる。
宇宙の膨張とともに温度が下がってくると、飛び交っている粒子や反粒子のエネルギーは対生成をするには不十分になってくる。その結果、対消滅が進む。粒子か反粒子、どちらか数の少ない方が無くなるまで対消滅が進む。
現在の宇宙が粒子からできているという事実は、高温高密度の時にすでに粒子の方が反粒子より多かったことを意味する。どれくらい粒子の方が多かったかを標準的なビッグ・バン理論で推定してみると、10億個の粒子に対して差は1個程度という極めてわずかな違いとなる。
粒子と反粒子の対生成、または、対消滅の段階で何らかの差が出ている?
K中間子において粒子と反粒子の対生成の際の比率が一対一からわずかにずれていることが確認されている。これを「CP対称性の破れ」という。
説明のなかで、複素数、ベクトル、行列、などが現れるので、素粒子論のなかで、どのような数学が利用されているかが、ほの見える。
スピン、ゲージ理論、パリティ、QCD(量子色力学)、フレーバー(香り)、大統一理論、などの言葉が出てくるが皆目わかりません。
著者 小林 誠
1944年、名古屋市生まれ
名古屋大学理学部物理学科卒業、同大学院理学研究科修了
京都大学助手
高エネルギー物理学研究所助教授、教授
高エネルギー加速器研究機構素粒子原子核研究所教授
理学博士
1973年、益川敏英氏と発表した「小林・益川理論」で3世代6種類のクォークの存在を予言
1994年、アメリカのフェルミ国立加速器研究所で「トップクォーク」の存在が確認されるにおよび、予言は実証された
2008年、ノーベル物理学賞受賞
(2009年1月16日・記)