「余剰次元」と逆二乗則の破れ―我々の世界は本当に三次元か? (ブルーバックス)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062577168

感想・レビュー・書評

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  • 四つの力について理解は難しいが、何となくイメージを抱くことができた。それにしても最新の物理学は常識を超えている。
    湯川先生はそんな昔にこんなことを考えていたのかと驚愕した。湯川理論が力の根源を理解する上でとても重要な地位にあることが今更にして判り、日本人もやるねと思った。

  • 近距離重力測定実験に関する工夫はおもしろい。しかし、あれ?あれ?タイトルに期待して、読んだが、まだ余剰次元は見つかって無くて、逆二乗則も破れてない、という結論だった。でも、可能性に賭ける意気込みはすごい。記述も分かりやすかった。随所に数値計算が丁寧に展開されていて、すっきり感もある。

    ・地球は1センチメートル以下にするとブラックホール化する。
    ・不確定性原理から、一時的であれば、一定の質量、エネルギーを持った粒子が発生しても良い:仮想粒子
    ・真空偏極:真空に電荷粒子を一つ置くと量子力学的には性質が変わり、あたかも物質のように振る舞う。→くりこみ理論の登場が必要
    ・くりこみ理論は、ある距離での電荷の大きさを用いて、別の距離での電荷の値を相対的に計算する手法で、無限大となる原点の値を計算の出発点として必要としていない。

  • マイクロメートルという肉眼でも見えるサイズの余剰次元についての提案は「プランク長さ」の話ばかりのこの分野で、とても魅力的に思えました。

  • 重力・電磁気力・強い力・弱い力の4つの力を統一するという物理学者の見果てぬ夢。その際に邪魔になるのが、一つだけ極端に小さな値を取る重力である。なぜ重力だけが極端に弱いのか?
    重力だけがそこに存在する余剰次元へと入り込むからではないかという考えがADDという理論である。
    その余剰次元のサイズよりも小さな範囲で重力の逆二乗則の破れ、つまり、そこで急激に重力が強くなること、が観測されれば、その証明となるらしい。
    そして、その予測される余剰次元のサイズがおよそ0.1ミリメートルだと言われている。これは一般人からすればすごく小さい値に見えるが、物理学者からすればとてつもなく大きいらしい!
    現在の観測精度のわずか1桁下の値に重力の破れ、余剰次元の存在が確認出来るというのだから!!

    ただ、個人的にはこのADDという理論は様々な変数を有することによって、全否定を免れているだけに思える。
    余剰次元の数を増やせば増やすほど、重力の破れが観測される領域が狭くなるため、たとえ現在の推測が観測によって否定されたとしても、じゃあもう1次元余剰次元があれば、もうちょっと小さな領域でないと観測されないでしょ?みたいな。
    でも、その考え方はすごく面白いと思うし、そもそも物理学の知識など持ち合わせていない僕がどうこう言えるものでもないですね。

    宇宙の姿から話が始まり、そこから何故力の法則が逆二乗則になるのかといったことなど現代物理学をわかりやすく説明していて、物理好きには堪らないと思います!読んでみてください!!

  •  実験屋さんの書いたADD模型の解説本。空間は三次元でなく,1mm程度より小さい領域では五次元かもしれないという話。洗練されていく近距離重力の実験でそれが検証できるかも?
     そもそも重力や電気力などの力の大きさが,距離の二乗に反比例するという逆二乗則は,空間が三次元であることから説明できる。質量や電荷などの荷量から出る力線の密度が,距離の二乗に反比例するからというキレイな説明だ。 ちなみに逆二乗則の発見はニュートンの万有引力の法則が最初。
     場の量子論の考えでは,力は仮想的な媒介粒子による運動量のやり取りで生じる。この考えでも,空間中の力線密度と同様の幾何学的な説明が成り立つ。n次元空間であれば,力は距離のn-1乗に反比例することになる。ただし,これは媒介粒子に質量がないとき。
     弱い力を伝えるウィークボゾンのように,媒介粒子に質量があるときは,力の到達距離が短くなる。また,真空のゆらぎから粒子反粒子対の生成消滅の効果として,真空偏極という現象もある。これらを考慮に入れると,力の法則の一般形は,(真空偏極)×(ベキ乗則)×(湯川型減衰)となる。
     地上で初めて重力を測定したのが18世紀の物理学者キャベンディッシュ。電気力は大きいのでそれより前にクーロンが測定していたが,キャベンディッシュはクーロンの発明したねじれ天秤を改良して微小な重力を測定することができた。この実験から地球の質量を求めることができたのは有名な話。
     本当は,当時万有引力の法則は,天体間距離のスケールくらいでしか検証されていなかったので,それが実験室スケールでもあてはまるという仮定は根拠に乏しかったのだが,今ではこの仮定は正しかったことがわかっている。現在は,さらに小スケールにおける逆二乗則の検証が試みられている。
     キャベンディッシュの実験は20cm程度の距離だったが,これを縮めていくのはかなり難しい。重力がとんでもなく小さいから,わずかな振動や帯電も相対的に大きなノイズとなり,それに埋もれて精度が出ないから。それを排除すべく巧妙な実験が設計されている。現代のキャベンディッシュたち!
     ADD模型によれば,重力が他の力(電磁力,弱い力,強い力)に比べて極端に小さいことの説明がうまくできるそうだ。余剰次元がミリメートル程度まで広がっているとすると,それを境に微小距離では逆二乗則が成り立たなくなってくる。それが実験で検出できるか否か,きわどいところ。
     超ひも理論で空間が十次元て説があるのは聞いていたが,余剰次元はプランク長さくらいのスケールでコンパクト化されているのが常識だった。1998年のADD論文は,この常識を覆すもので,物理学者たち仰天したという。目に見えるミリ単位で余剰次元が存在するとしたらすごい。進展に注目したい。

  • 重力は余剰次元を証明する鍵となるのか。この世が三次元空間ではない事は、超弦理論などでも予想されている事だが、重力という非常にやっかいなものに挑戦する様子が、本書では生き生きと描かれている。
    著者は、気鋭の実験物理学者であり、非常に面白いストーリーで話が展開され、難しいながらもわかりやすく書かれている。力の法則など読んでいて、「こういうことだったのか」という再発見もあり面白かった。
    学生時代に読んでいたら、著者の研究室で研究したいと感じた一冊であった。

  • 0.1mm以下の世界の重力ってどんな状態?
    余剰次元ってほんとうにあるの?
    4つの力の統一がおきたらどうなるの?
    物理の知識まるでなしの私もワクワクした。

    実験の様子が楽しそうで羨ましい。
    子供の時からこういう理科の先生に出会っていたら、理系離れなんて起きないんじゃないなと思うくらい。

  • 余剰次元のお話.
    この辺の話は他のブルーバックスの本でも触れられているが,一番話がまとまっていて読みやすかった.

    とは言え読みごたえはかなりある.

  • 2012.1.20-2012.10.21
    重力、クーロン力などで見られる逆二乗則は、我々の生きる世界が三次元であることを示す。しかし、量子力学の世界で現れる「強い力」や「弱い力」は、この法則には従はない。また、重力は他の諸力に比べて桁違ひに弱いといふ階層性がある。
    これらの問題を超えて全ての力を統一するために1998年に提唱されたADD模型が主張する「余剰次元」が本当にあるのかを、1mm以下の短い距離で働く重力を精密に測定することで確かめようといふ話。
    宇宙論、量子力学などの歴史から、最近の動きまでを分かりやすく纏めてゐて、素人なりにとても勉強になつた。20年位前には、物理学が停滞してゐるといふ議論が行はれてゐたが、測定装置の進歩で、活気を取り戻したやうだ。
    著者村田次郎氏の工夫した装置で、最先端の問題を学部の学生が研究してゐるといふのも素晴らしい。こんな先生に教へて貰へる立教の学生は幸せだ。

  • 先端に近いということもあってか、結論的な内容はなくすっきりはしない。だがそれがいい。物理の今を感じられる。
    なにより、実験屋である著者の、研究に対する思いと楽しそうな雰囲気が伝わってきて羨ましくなる。

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