幕末の天皇 (講談社選書メチエ)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (252ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062580267

作品紹介・あらすじ

近代天皇制は、十八世紀末から八十年間にわたる、朝廷の"闘い"のドラマから生まれた。神事や儀礼の再興、復古を通して、朝権を強化した光格天皇。その遺志を継ぎ、尊皇攘夷のエネルギーを結集した孝明天皇。幕末政治史の表舞台に躍り出た二人の天皇の、薄氷を踏むような危うい試みを描き、「江戸時代の天皇の枠組み」を解明する。

感想・レビュー・書評

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  • 光格天皇、孝明天皇という近代天皇制につながる幕末の2人の天皇に焦点を当て、幕末政治史を描く。
    孝明天皇はともかく、光格天皇は、あまり取り上げられることもないが、天皇の君主意識・国家意識の芽生えとして幕末維新に向け重要な役割を果たしたことがよくわかった。御所千度参りなど、知らない興味深い事実もあった。
    孝明天皇については、その頑固なまでの鎖国攘夷意識が反幕府勢力等の結集につながり、その後の王政復古、討幕の原動力の一つとなったが、本人は「江戸時代の天皇の枠組み」に固執し、幕末政治の舞台で孤立していくという逆説的な側面が興味深かった。

  • 1994年刊行。著者は東京大学史料編纂所教授。


     江戸時代初期、家康・秀忠らにより極限まで権力から除外された天皇は、幕末維新期、玉とも錦の御旗ともなって、争奪戦が繰り広げられるほど価値や権威、地位を回復させた。
     その経緯は江戸期最後の天皇孝明天皇を見るだけでは足りず、その前史から検討していく必要がある。かかる観点から、孝明より二代前の光格天皇から筆を起こす(ただし、説明のための最低限の前史は除く)。

     そして、この光格天皇の天皇としての自負に彩られた個性と行為が、それまでの公武の関係に風穴を開けていく状況を活写するのだ。

     単純な解釈は避けたいが、天明期以降、天皇家は人を得たが、将軍家は人を得なかった。こういう解釈も成り立つような気がする。

  • なぜ、江戸末期に幕府が条約の勅許を天皇に求めるほど、天皇の威信が回復できたのか?この謎に、孝明天皇とその祖父・光格天皇の2人の人生から迫ります。閑院宮典仁親王の六男として生まれ、傍系の出身として、皇統へのこだわり、そして新嘗祭を始め、天皇家の様々な行事の復活、そもそも"天皇"という呼称そのものが、光格の死去に伴う諡として、約900年ぶりに復活し、当時の人々が吃驚したこと。そして天明の飢饉に伴う幕府権威の失墜が偶然に重なる。これらによって、幕府は朝廷の意向確認という実績が出来てしまう。この2つの権力の駆け引き。そして孫の孝明の純粋な尊王攘夷、公武合体路線、若すぎる突然の死(毒殺か病死か?)本居宣長以来の国学により「天皇を中心とした神の国」が出来ていったプロセスがよく分かる、迫力のある本でした。ぜひお薦め本です。

  • 近世の先生だったので、思ったより光格天皇の話が長かったのですが、
    京都御所で伊勢参りのようなことが起こったりなど知らない話を興味深く読むことができました。
    孝明天皇についてはおおまかな流れとはいえいろいろ参考になりました。
    孝明天皇紀をもっと深く読み進めたい、です。

    これで100冊目となりました。

  • 1092夜

  • うー…ん

    参考にはなったが
    著者がコテコテで孝徳天皇よりの人だから、そこがちょっと強すぎて、自分の意見に加味するときに注意が必要かなと思った。

  • 光格天皇が平安時代の村上天皇以降900年も絶えていた「天皇」という称号を復活させ、またさまざまな儀礼の復活を試みるなど天皇の権威の復活に意欲を見せていたこと。八月一八日の政変で、尊王攘夷派を追放したことは、公武合体派の台頭を招き、破約攘夷を一貫して求め続けた孝明天皇の政治的後ろ盾の喪失へとつながったこと。

    などなど、勉強になりました。もうちょっと早く読んでおけばよかったかな…。

  • 近代天皇制とは明治維新によって一朝一夕に成立したものではなく、18世紀末からの天皇・朝廷による不断の闘いの結果としてなったものだったことを丁寧に実証する書。天皇制について考えるうえで必読。

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著者プロフィール

東京大学名誉教授

「2022年 『もういちど読みとおす 山川 新日本史 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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