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- Amazon.co.jp ・本 (238ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062580403
作品紹介・あらすじ
ある一家心中事件をめぐって生み出されたいくつかの言説。法の言説と新聞報道。「新四郎さ」そして「山に埋もれたる人生ある事」。事件の季節は入れ替わり、新たな動機が付与される。柳田はその独特の方法をもって何を語ろうとしたのだろうか。事実…。そしてその記録が描きだそうとした歴史の意識とは…。本書は、社会記述の方法をめぐるスリリングな論考である。
感想・レビュー・書評
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(後で書きます。参考になった。参考文献リストあり)
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(01)
最終の第4章で詳細に解かれる,柳田の「山の人生」の冒頭の事件に焦点は結ばれているが,その事件の検証にとどまらない広がりをもつ柳田テクスト論になっている.
柳田が追った(織った?)常民,山人,伝説,昔話,一国民俗学(*02),農政学をどのような深度と角度でとらえるか,事実と文体と歴史,紡がれるディスクールとその主体の問題を取り上げながら,弁証法的に「人間の自然」を提示し,その畏怖すべき暗がりに光を当てている.
またそこに柳田が織りなしたもうひとつの「自然」主義をも著者は標榜している.
(02)
柳田が記録した民俗(土俗)は具体ではなく抽象であるという本書の指摘は重要だろう.民俗学は今もここを取り違えた言説が目立つ.柳田が創作しようとした日本の同一性という魅力的な枠組みをどのように相対化するかが柳田以後の民俗学の大きな課題として残っている点にも,柳田の仕事の怪異や魁偉を感じとることができる.
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