<在日>という生き方 (講談社選書メチエ)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (262ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062581714

作品紹介・あらすじ

日本人でもない。韓国・朝鮮人でもない。「異質」な存在として日本社会を生きる60万在日コリアン。二つの祖国に揺れた力道山。「日本人」を志向した新井将敬。日本というシステムと闘う孫正義-彼らの半世紀を通し、「祖国」や「民族」の意味を問い、日本社会の「内なる国際化」をとらえなおす。

感想・レビュー・書評

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  • エスニック・マイノリティとして日本社会を生きる在日コリアンたちの世界を、彼らの「生き方」という視点から読み解いている本です。第1部では在日コリアンの歴史が簡単に解説され、第2部では力道山、重光武雄、新井将敬、孫正義らのライフ・ヒストリーがたどられています。

    在日コリアンと一口にいっても、現在では同族結婚より国際結婚をするひとのほうが圧倒的に多く、また日本国籍をもつ者と韓国・朝鮮籍をもつ者、さらに日本名を名乗る者と民族名を名乗る者など、多様化が著しくなっています。また、彼らのあいだでの在日コリアンとしてのアイデンティティにも大きな幅が存在しています。

    著者はこうした状況を踏まえて、在日コリアンが差異と平等のディレンマのなかにあるとし、そのうえで国民国家の枠組みのなかで在日コリアンをとらえるのではなく、よりグローバルな観点からとらえなおすべきだと論じます。これは、多国家民族集団として日本の内外でさまざまな影響を与えあうエスニック・グループとして在日コリアンのあり方を考察するということを意味しています。

    近代ヨーロッパにおける市民社会に生きるマイノリティ・グループが、参政権の獲得から教育や社会福祉を受ける社会的権利の拡充へと進んできたのに対して、在日コリアンは公民的権利や社会的権利の一部は認められながらも、参政権については認められてきませんでした。このことは、社会のメンバーが「市民」として参与する公共性の空間が適切に形成されず、またその重要性が必ずしも十分に認識されてこなかったことによるのだと思われますが、このことが日本的な風土おけるマイノリティについての議論のあり方に影響を与えているように思われます。著者の主張するようにグローバルな観点から在日コリアンの問題をあつかうことは、こうした特殊な条件を無視してしまうことにならないかという疑問を感じます。

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著者プロフィール

1956年、兵庫県生まれの在日韓国人3世。
1980年、同志社大学卒業。
1988年、同大学院商学研究科博士後期課程修了(商学博士)。
1990年9月より2022年3月まで大阪市立大学経済学部に勤務。
大阪市立大学大学院経済学研究科教授を経て、現在、大阪市立大学名誉教授。テレビ・ラジオコメンテーター。
著書に『韓国NIES化の苦悩』(同文舘出版)、『〈在日〉という生き方』『「在日コリアン」ってなんでんねん?』『僕たちのヒーローはみんな在日だった』『日本人と韓国人 「タテマエ」と「ホンネ」』『在日マネー戦争』(以上、講談社)、『越境する在日コリアン』(明石書店)、『朝鮮半島を見る眼』(藤原書店)、『20世紀東アジアのポリティカルエコノミー』(晃洋書房)などがある。

「2023年 『在日という病 生きづらさの当事者研究』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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