- Amazon.co.jp ・本 (261ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062581936
作品紹介・あらすじ
『古今集』は「言葉遊び」と「ユーモア」の歌集だった。間違いだらけの「人麻呂」像の不思議。六歌仙でありながら一首しか存在しない喜撰法師の正体とは?一千余首に秘められた大いなる仕掛けを読み解き、国文学史上の謎に迫る。
感想・レビュー・書評
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古今集はユーモア、諧謔なのだという立場でさまざまな謎を解いていく。柿本人麻呂は道化の失敗で紀友則のことであるとする解釈や、六歌仙が必ずしも優れた歌人として取り上げられているわけではないこと、喜撰法師が実在ではないだろうことなど。
著者の解釈に対する批判などもあるなら読んでみたい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
長いこと「積読」になっていたのだけれど、無性に読みたくなって読み出したら一気に最後のページまで行ってしまった。
前著である「絢爛たる暗号」「百人一首の謎」で百人一首という不思議なかるたに秘められた謎に対するひとつの視点をもたらしてくれた筆者の発想はとても面白く興味深く、「笑いとユーモア」で示された言葉遊びへの造詣の深さに感銘を受けていた。
本書では「古今和歌集」の"(実は支離滅裂なことが書かれてある)謎の仮名序"で本当に語られていたことは何だったのか、採択されている歌の偏り方はどういうことなのか、有名人ばかりではない"六歌仙"に仮託されたものとは…など、ワクワクするようなたくさんの謎たちが紐解かれていく。
ちょっとしたミステリを読んでる気持ちになるほど。
当代随一の知識人であり、言葉を扱う達人であった紀貫之が「古今和歌集」に仕掛けた緻密な設計、そして「古今和歌集」のいわば裏テーマについても解き明かされていく。もちろんどれも著者の仮説であるわけだが、非常に面白い。
ところどころに「こんなに細かく分析してるのにこっちは簡単に片づけられてるのはなぜ?」と感じる箇所がないではないが(たとえば六歌仙のうち僧正遍昭と喜撰法師については詳細に分析されているものの他の四人、特に歌人として名高いわけではない文室康秀や大伴黒主がなぜ選ばれたのか、また彼らを評した、というか半分ディスったような記述は何なのかは触れられていない。貫之が本当にそれだけ緻密に計算していたならそこにも必ず何かしらの作為があったはずなのに…)、それを差し引いてもなかなかテンションの上がる面白さではある。
読む人の立場によって評価が分かれる本ではあるのだろうな、と思うが国文学にまるで造詣のない身としては単純に興味深かった。 -
「『古今集』は巨大迷路である」