交響曲入門 (講談社選書メチエ)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 97
感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (220ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062584913

作品紹介・あらすじ

交響曲には「構造」と「論理」がある。「交響曲の父」ハイドンからモーツァルト、ベートーヴェンをへてブラームス、ブルックナー、マーラーへ。前代の課題を引きつぎつつ交響曲というジャンルに自らの個性を加えてゆく各作曲家の創意と工夫の跡を丹念にたどりながら名曲の高峰を経巡る、もう一歩深い鑑賞への誘い。

感想・レビュー・書評

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  • 入門書としては、スコアのページがあるなどレベルが高いかも知れないが、文章だけでも交響曲作家たちの目指した音楽がよく分かる。ソナタ形式が読み解くカギであり、楽章の編成、調性・移調・変調、楽器編成、リズムなどにより曲の特徴が説かれる。ハイドン、モーツアルト、ベートーベン、シューベルト、ブルックナー、マーラーその他の主だった交響曲についての解説が分かり易い。最後のディスクガイドは名盤紹介というわけではなく、各演奏の特徴、功罪の説明がユニーク。
    モーツアルトの晩年の3大交響曲はハイドンのロンドン・セット以前、ブルックナーの第5はブラームスの第1以前!驚きの事実を初めて知らされた。マーラーにとって音楽は人生だったが、Rシュトラウスにとって音楽は効果!実に興味深い比較であった。

  • 取っ付きはスッと入れて面白いと思ったものの読み進めると音楽知識なく付いていけない^_^;

  • 音楽の聴き方は何通りもありますが、この本は「形式」で音楽を聴くという視点に立って様々の交響曲を解説しています。

    私はほんとうの入門書だと思って手に取ってみたのですが、あまりに知識が足らないため、全てを理解できた気がしません。

    形式で音楽を聴くためには、もっともっと勉強が必要なのだなあと知り、知的好奇心がくすぐられました。

  •  評者のようなすれたクラシック・ファンは『交響曲入門』などといういかにもビギナーむけのタイトルの本に関心はないのである。が、それが「講談社選書メチエ」から出たとなると……

     著者については寡聞にしてよく知らない。音楽学者で、『ビートルズ音楽論』などという本も出しているそうだ。結論からいえば、まさに「交響曲入門」、正統的な立場から、音楽の構造を丹念に追ってまとめた文句の付け所のない本である。「文句の付け所のない」などと持ち上げた場合、必ず文句をつけるわけだが、巻末の「ディスクガイド」をみると、筆者の嗜好が概ねわかってくる。今さらモノラル期の名演ばかり挙げる手合いではないが、1960年代、70年代の名盤を押さえた、穏当で常識的な選択である。古楽器系の演奏についても端から拒否するわけではないが、「開放弦で弾かせるのはどうか」といった疑念が何度か表出される。ロマン派以降の演奏習慣でヴィブラートをたっぷり掛けて弾かせるようなところで、開放弦を使うのは明らかに意図的で、異質な音色を導入するためにあると思われるが、そういうバロック的発想を筆者は拒否する。
     つまり、1970年代以降、力を得てひとつの潮流として定着したかの感のあるポストモダン的立場からは距離をとって、リニアな音楽史観に立った「交響曲入門」なのである。シューマンのミドル・ネームに「アレクサンダー」が入っているなど、今日誤りとされていることが踏襲されていたり、何だか古い立場の人なのかと思ったが、「交響曲を構造やレトリックで論じて欲しい」という編集者からの依頼があっての執筆のようだ。まずはモンテヴェルディあたりで、オーケーストラというものが成立することから説き起こされ、交響曲の起源はイタリア式序曲だという立場をとる。このあたりは異論もあるが、それは『文化史としてのシンフォニー』に譲ろう。

     交響曲の雛形はハイドンにあり、その確立はモーツァルト、そして中核にあるのがベートーヴェン。本書のほぼ真ん中で他の作曲家よりも多くの紙幅が割かれているのがベートーヴェンである。著者は交響曲とはソナタ形式のオーケストラ的な顕現とみており、主として両端楽章のソナタ形式の論理が時代により作曲家によりどう変遷していくかが追いかけられる。
     確かにこうしたひとつの視点から交響曲をみていくと作曲家の創意が明らかになって、なるほど面白いのだが、逆にソナタ形式によらない中間楽章の記述は添え物的になり、ソナタ形式から隔たった破格の交響曲は俎上に載せられない。例えばシベリウスを評価しつつもそれを論ずる足がかりがないという感じ。ベートーヴェン以降はメンデルスゾーン、シューマン、ブラームスで、ブラームスは若干大きく取り上げられる。その他は十把一絡げだが、ドヴォルジャークとチャイコフスキイの記述は若干濃い。さらにブルックナーとマーラーを扱って、最後はショスタコーヴィチの第5交響曲のソナタ形式に言及がある。今日、コンサート・レパートリーとして生き残っているものというのも、筆者を動かす基準である。

     文句の付け所のない『交響曲入門』のあと、やはり『交響曲裏入門』とか『交響曲出門』とかが読みたくなるのが、交響曲というもののとらえ難さ、うさんくささなのであり、本書は「入門」に過ぎないといえる。ただ、一本筋は通っているから、これでいいのだ。

  • 交響曲の形式についての説明を期待してたんだけど、どちらかと言えば成り立ちについての簡単な歴史的背景。あとは時系列にそって作曲家とエポックメイキングだった交響曲について、個別に評論。楽典はある程度納めてる人向けの本ですね。

    とは言え、わりと知らなかった事も多くて。例えば、もともと交響曲はクラシックの本流じゃなかった、というのは意識した事なかった。声楽→協奏曲というのが境界を中心とした本流の流れで。舞曲→オペラ→シンフォニア→交響曲という傍流がベートーヴェンの深刻な取り組みで器楽の集大成という地位を確立。でも、ほとんど同時に完成形になってしまったので、その後も時間で見るとそれほど長い間クラシックの中心にいたわけでもない。

    協奏曲の方は、ピアノ協奏曲みたいな単一ソロのイメージが強いけど、声楽からの流れで言う協奏曲は交互にソロを取るリトルネロ形式。Jazzとかわりと協奏曲に近いよなぁ。

    ブラームスとブルックナーがほぼ同時期の人ってのも音しか聴いてないと想像もできない事実ですね。

  • やや退屈な内容。
    音楽が好きなのはわかったが、情報量が膨大過ぎるのと、絞ったつもりが絞り切れていない焦点が多く、読みにくかった印象。
    最後に記されていた、ディスクガイドに目を通してみると、やはりベルリンフィルとウィーンフィルは2強だと改めて評価の高さを感じた。

  • 交響曲を聴きながら参照すると面白いと思います。楽譜を見ながら交響曲を聴きたくなる本です。

  • いや、とても勉強になりました。

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著者プロフィール

1952年、石川県七尾市生まれ。国立音楽大学楽理科を卒業、同大学院修士課程を修了し、音楽学を専攻(修士論文はモーツァルト)。現在、尚美学園大学芸術情報学科教授。担当科目は西洋音楽史と音楽美学。

「2008年 『クラシック音楽 名曲名演論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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