- Amazon.co.jp ・本 (244ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062585620
作品紹介・あらすじ
「一所懸命」の語が象徴する、土地の支配を基盤とする武士とは異なった形態の武士団が中世にはあった。地場の海を「なわばり」とし、航行する船から通行料を徴収し、あるいは「海賊」として略奪する、「水軍」とも「海賊」ともつかぬような「勢力」。「海」側の視点から中世の始まりとともに出現した特異な「武士団」の興亡を描く、これまでにないユニークな日本中世史。
感想・レビュー・書評
-
来年の大河ドラマに備えて読む。
湖畔や海辺を縄張りとした者たちの実態や栄枯盛衰について書かれている。
難癖をつけて船荷を奪う姿はまさにハードボイルド室町時代そのものであり、皆生きるために必死だった当時の様を偲ばせてくれる。
題名にもなっている「海の武士団」だが、本書内にて筆者が述べているとおり、断言するには難しい、曖昧な存在なのだと理解できた。そこがわかっただけでもこの本を読んだ価値があったと思う。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
KS9a
-
"海の武士団"は武士ではありません。
-
『海の勢力』と著者が呼ぶ人々が施政者との距離をどう取り、どう変遷して行ったのかが分かりやすく書かれていました。
時に掠奪者になり、時に幕府と繋がり、と彼等がどう生きていたのかが当時の文献等から事例を挙げて説明されているのは彼等を知らない私にはありがたかったです。
入港を『漂着』と言いがかりを付けられ船荷を略奪されるとか…当時のローカルルールの乱暴さには驚きました。普通の歴史関係の書籍では書かれていないところまで詳しく書かれていたのが読んでいて楽しかったです。 -
かつて地場の海をナワバリとして跋扈していた勢力の変遷。
武士なんだか海賊なんだか漁民なんだか分からない「海の勢力」が衰えてゆくのと、中央集権的支配勢力が確立されてゆくのとがパラレルで走っているのが面白い。
現代も、なんだかよく分からない勢力が忌避されるのはこの辺りに根があるのかも? -
海の武士団というタイトルだけど、そのようなイメージ先行の海の勢力を、政権との距離感を中心分類。海賊を規制しようとする鎌倉・戦国期に対して、とことん利用する室町期の対比が面白かった。全体としては、昨今の海賊ブームを過剰期待と諫める内容。