コンスタンツェ・モーツァルト 「悪妻」伝説の虚実 (講談社選書メチエ)

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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062586474

作品紹介・あらすじ

音楽学者にして熱烈なモーツァルト崇拝者でもあったアルフレート・アインシュタイン(1880~1952)はモーツァルトの妻・コンスタンツェを、はっきりと「琥珀のなかの蠅」呼ばわりしました。ご馳走と見ればすぐさまそれにたかりにくる醜く、汚らわしく、うっとうしい存在。そのような存在が、琥珀のようなモーツァルトと密接にかかわったからこそ、彼女は人びとの記憶に残るようになったのだというきわめて否定的な見解が、彼の言にはあらわれています。
 なぜこれほどまでに、コンスタンツェは否定的なまなざしで受けとめられてきたのか?
 この疑問を解くべく、本書ではまず、コンスタンツェの実家であるウェーバー家、および彼女の生涯を概観します。ただし、右の事柄についての資料はけっしてじゅうぶんとは言えず、まだ多くの点が謎に包まれていることは、先にお断りしておきましょう。またそのような状況に置かれている対象を前に、その人物の善し悪しに関して断定的な評価を下すつもりもありません。むしろアインシュタインの評伝を一例としてさまざまなバイアスがかけられた彼女の人生に関し、可能なかぎりその真実の足取りを再構成してみたいのです。
 そして──ここからがこの本の真の目的となるのですが──、彼女が数あるモーツァルト伝やモーツァルト関係のメディアにおいて、どのように描かれ、どのように評価されてきたのかを追ってゆきます。なぜアインシュタインは彼女を「蠅」と呼んだのか、なぜ彼女はヨーロッパからみれば遥か東の島国においてさえ「悪妻」というレッテルを貼られるようになったのか。コンスタンツェに関する受容史を探るのが、じつは本書最大の狙いにほかなりません。
 それにしても、人はコンスタンツェにいったいなにを見てきたのでしょう? またそのような視線のなかに、人はどのような想いをこめてきたのでしょう? 「悪妻」と呼ばれつづけてきたひとりの女性をめぐって、人間の抱える複雑な羨望と嫉妬、それぞれの置かれた時代相が解き明かされてゆくはずです。(序章を抜粋要約)

著者プロフィール

ヨーロッパ文化史・ドイツ文学研究家。秋田大学准教授を経て、横浜国立大学(大学院都市イノベーション研究院・都市科学部)教授。著書訳書に、『エリザベートと黄昏のハプスブルク帝国』(創元社)、『チャールズ・バーニー音楽見聞録 ドイツ篇』(春秋社)、『コンスタンツェ・モーツァルト <悪妻>伝説の虚実』(講談社選書メチエ)、『モーツァルトを「造った」男 ケッヘルと同時代のウィーン』(講談社現代新書)、『ウィーン楽友協会 200年の輝き』(集英社新書)など多数。

「2024年 『もっときわめる! 1曲1冊シリーズ ⑦リヒャルト・シュトラウス《ばらの騎士》』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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