母親の孤独から回復する 虐待のグループワーク実践に学ぶ (講談社選書メチエ)

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  • Amazon.co.jp ・本 (144ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062586658

作品紹介・あらすじ

子どもに対する「虐待」についての児童相談所への相談件数は、現在10万件を越えています。1万件を越えたのが1999年のことですから、急激な増加を見せていることに疑いはありません。相談されず、表に出てこないケースを含めれば、その数はさらに増えることでしょう。
子どもを叩いてしまう母親は、なぜ増えているのでしょうか?
なぜ彼女たちは、子どもを叩いてしまうのでしょうか?
気づいたら叩いてしまう。叩いてしまう自分を抑えられない……。中には、エスカレートして、子どもを死に至らしめてしまう場合すら起きています。
そんな母親には、自分自身が子どもだった頃に母親に叩かれた恐怖、そこから生まれた孤立感があることがめずらしくありません。そのことに気づかぬまま、気づいたら自分も子どもを叩くようになってしまっているのです。
──本書は、そんな孤独の中で苦しんでいる母親たちのために書かれました。
2001年に森田ゆり氏の考案で開始された「MY TREE ペアレンツ・プログラム」のグループワーク実践を例にとり、「子どもを虐待してしまう親の回復のためのプログラム」がどのように働き、どのような成果をもたらしているのかを描き、どうすれば孤独から回復できるのかを探ります。このようなプログラムに関心をもてない人、関心を抱いても参加する勇気がない人にとっても、ここには貴重なヒントがたくさん含まれているはずです。
「虐待」の連鎖を止め、自分を取り戻す道は、「独り」から始まります。
「独り」でいるあなたに、本書は語りかけたいと思っています。

感想・レビュー・書評

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  • 困難な状況の中で孤立している母親への手当てと、つながりの再構築への道のりが丁寧に描かれています。

    グループワークを行う機会の多い私にとって、参加者目線の言葉と、ファシリテーターの言葉と、観察者としての筆者の言葉の重なりが、とても参考になりました。

    ホールディングという観点からグループワークの「場」を見つめてみた経験がなかったので、興味深く、ぐいぐい引き込まれました。

    他者の語りを聴くこと。自分のことを語ること。
    ホールディング。グループとのつながり。グループとの響き合い。
    この世界の中に、自分の居場所を見つけ出すこと。

    「孤立していたときの過去が世界の中に位置づけられることで、未来の行為の地平が開かれる」

    村上靖彦さんが使っていらっしゃる言葉も素敵で、たくさんの言葉をノートに書き写しました。

    MY TREEプログラムについての本も読んでみようと思います。

  • 虐待してしまう母を対象としたグループワーク「MY TREE」プログラムを取り上げた本。プログラムについては良く知っているつもりだったけれど、ファシリテーターの人たちの細やかな準備、配慮は想像以上だった。虐待に関しては加害者である母親たちはそれぞれ過酷な人生を歩んでいる。具体的なエピソードはこの本には出てこないけれど、それぞれが自分の被害的側面にも向き合いながら、ファシリテーターとグループの力で回復していくプロセスが描かれている。「人は変われる」「回復する力を持っている」と信じている人たちで作られた安全な場であるからこそ、自分のことも他人のことも信じられなかったところから少しずつ変わっていく。とても重いテーマなのに、すごく希望が感じられます。

  • ちょっと期待ハズレやったのは、なるほど著者の専門が現象学ということで、内容がやけに小難しく書かれてて読むのしんどい。MY TREEペアレンツ・プログラムの西成グループでの、「虐待へと追い込まれた親」とりわけ「母親の孤独から回復する 虐待のグループワーク実践に学ぶ」として、守秘から事例の具体は書かれてないものの、視点として、親の孤独からの回復、は児童虐待のテーマを発信する際に欠かせない。

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著者プロフィール

1970年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士後期課程満期退学。基礎精神病理学・精神分析学博士(パリ第7大学)。現在は、大阪大学人間科学研究科教授。専門は現象学、精神医学。著書に『治癒の現象学』(講談社メチエ)『レヴィナス』(河出ブックス)『摘便とお花見-看護の語りの現象学』『在宅無限大』(医学書院)『仙人と妄想デートする 看護の現象学と自由の哲学』(人文書院)などがある。

「2023年 『客観性の落とし穴』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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