野ざらし忍法帖 山田風太郎忍法帖(13) (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 13
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  • Amazon.co.jp ・本 (282ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062646710

感想・レビュー・書評

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  • 短編集なのでちょっと物足りないです。

  • 短編集。

    【忍者服部半蔵】忍法帖シリーズではお馴染みの服部半蔵。伊賀を束ねる頭領としての話は、ほかの忍法帖シリーズでの服部半蔵を知っているとよりおもしろいと思います。
    忍法帖シリーズではそんなばかな!というようなとんでも忍法が魅力の一つですが、作者が自分で作った忍法を登場人物の一人にそんな無茶な、と突っ込ませているのがおもしろいです。その皮肉に陰に生きる忍者の哀愁も漂っています。
    まさに「服部半蔵の血」とでも言うべき意外なラスト。最後の台詞もこの人物が忍者として変わった冷酷さと、変わらない軽薄さが伺えて味わい深い。

    【忍者枯葉塔九郎】体をばらばらに出来るという忍術を様々に活かした物語ですが、あんなことしちゃうのには驚きました。分かっていてもあれは勇気がいると思いますが、それほど彼女に執着していたことへの表れかもしれません。悲劇的な末路を感じさせる不気味な最後。

    【忍者梟無左衛門】こ、この忍法はすごい。作中にもある通り一体何の役に立つのかと思いますが、こんな話にしてしまうなんて。権力者に対する女の必死の抵抗には痛快さがありましたが、それがもたらす結果の悲惨たること。この忍術を決して使ってはならない、という言葉が思いだされます。恐ろしい施術場面といいその結果といいほとんどホラーです。

    【忍者帷子万助】ハッピーエンドかと思わせてのこのラスト!すべて丸く収まったのに気味の悪さが残るのが恐ろしい。帷子万助の本当の心情はなんだったのでしょう。凄い体験をしたもんです。

    【忍者野晒銀四郎】これもまたほとんどホラーです。忍術修行に出ていた銀四郎が親族には冷淡だったり、恋をした女には甘かったり、イマイチ感情移入出来ない男でした。なのでその結果にも特に感慨深いものはなかったですが、恐ろしげなラストの描写は良いです。

    【忍者撫子甚五郎】これはおもしろい!天下分け目の関ヶ原の合戦で暗躍する忍者たち。こちらは史実を知っているわけですからこの物語の結果も当然分かっています。が、それでもこの戦いはどうなってしまうのだろうとやきもきしました。忍者がその任務を立派に全うした後に、歴史の行く末を示すというのがまた巧い。

    【忍者傀儡歓兵衛】忍者、忍術が衰退し今や誇りしか残っていない伊賀組。その上これは忍術でさえないがもしれません。常人離れした体術、忍術ではなく、ただ伊賀の誇りを描いています。蝋人形などの怪しさは健在。

    【忍者鶉留五郎】これも同じく伊賀者の誇りを描いているわけですが…。このオチは可哀想ながら笑ってしまう。お父ちゃんのかっこよさとかっこ悪さが笑えて哀しい。5ページくらいのちょっとしたショートショートというかんじです。

    【「甲子夜話」の忍者】エッセイ。創作についてや、記録されている忍者について言及しています。作者の創作の話はおもしろいです。作家さんはその描写の正確さに拘り場面を再現したりするというのはよく聞きますが、本当にこんな珍妙な行動をとっているのかと思うと笑えます。まして山田風太郎氏はとんでもな忍者小説を書いているわけですがら。創作の苦労さと真摯さを感じます。

  • 短編集。
    一話目の服部半蔵の話がすごい。
    あらすじだけ語れば、それほど奇想天外な話ではないのだが、こんなふうにさらっと書かれてしまうと、返ってゾッとしてしまう。
    作者の正体は天海僧正なのではあるまいか。
    その場にいるような臨場感ある描写であるのに、第三者的な視点が崩れない。
    日本昔話のように何度も語り継がれてきたことをそのまま文字に置き換えているだけかのようにも思える。
    とにかく忍法のようにあっ、と読者を煙にまいてしまう。

  • 短編だと史実背景が薄いため、あまりのめり込めないのかも。

  • 前から興味があった山田風太郎。伊賀や甲賀の忍者ものが有名。これは忍法帖シリーズのひとつで短編を収録したもの。けっこうおもしろかった、やや不条理だったりもするがそこは忍者の世界。物語にエロスを交えるあたりは職人技なんでしょう、常人には考え付かない。あとがきのようなものに書いてあったが、山田風太郎の忍者や侍の世界にたいする距離感が抜群だった。その世界をかなり滑稽なものとしてみている乾いた視点があるからこそ、奇想天外で読者を飽きさせない物語を次々作れるのかもしれない。

  • いわゆる山風先生らしいのは「枯葉塔九郎」かなと。でも最後の台詞がある意味人間ぽくて凄みを感じる「服部半蔵」をイチオシ。

  • 山田風太郎の忍法帖シリーズの短編集。
    全部で9編収められているが、私的には「忍者野晒銀四郎」が好き。
    この30枚にも満たない物語の結末がホラーといってもいいもので、謎が残るところが何ともいえない。
    相変わらず、ただの面白い忍者小説というだけでなく、人間の内面にある闇がうまく描き出されている風太郎小説。

  • 珠玉の短編集。

  • 短編集なんで、スケール的にはこじんまりとしてますが、逆に1人の忍者/一つの忍法の描写は長編より密度があるかな?
    しかし何で山田忍法帖の服部半蔵はいつも幸薄いのか…。

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著者プロフィール

1922年兵庫県生まれ。47年「達磨峠の事件」で作家デビュー。49年「眼中の悪魔」「虚像淫楽」で探偵作家クラブ賞、97年に第45回菊池寛賞、2001年に第四回日本ミステリー文学大賞を受賞。2001年没。

「2011年 『誰にも出来る殺人/棺の中の悦楽 山田風太郎ベストコレクション』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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