コズミック水 (講談社文庫 せ 12-4)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (551ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062648684

作品紹介・あらすじ

日本全国を恐怖に陥れた大量密室連続殺人事件がついに解決。驚倒すべき動機、トリック、真犯人とは。

感想・レビュー・書評

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  • シリーズ1作目の後編。
    もうジャンルは作者が言うように流水大説でいいと思う(笑)
    それぐらいぶっ飛んでいる作品だと思う。
    まず、探偵が神がかり過ぎる。
    いろいろな探偵が出てきたが、もう九十九一人いれば良かっただろうに。
    てか、そんな能力があるならこんなに殺される前に解決してあげろよと思う。
    犯人サイドも言っていることがメタだった。
    すごい作品でした。

  • これも…☆の付け方難しいなぁ…………。

    言われるがままに「清涼 in 流水」と読んできて、先に『ジョーカー』を終わりまで読んでるので、こっちがデビュー作なのに第二作を読んでる気分になった。
    で、『ジョーカー』で世界観の設定を知ったおかげで、探偵が多すぎる、とかそういう弊害に陥らずに読むことができた。
    (ただ個人的には間に『ジョーカー』挟まずに、普通に『ジョーカー』→『コズミック』でいい気がした。「清涼 in 流水」やりたかったんだよね、分かるよ)

    文庫版だからなのだろうか、『ジョーカー』より明らかに整理されてて、凄く分かりやすかった。
    この下巻(水巻と言うべきか)は最初から物語が動くので楽しく読める。
    でも、探偵や警察達が事件を語る時に、なんか自分の記憶と違うぞ、みたいな部分が出てきてモヤモヤしてると、これまで読んできた上巻がまんま濁暑院の原稿(人物名だけ実際の名に差し替えたもの)だったと知るに至る。
    なるほど、文庫で上下巻に分けた意図が腑に落ちた。ウマイ。
    しかし、我々読者は事件について創作物でしか知ることができず、殺害の状況に関する正確な情報は一切開示されていない、ということになる訳で、あれこれ推理しても無駄なのだ、と気づく。
    そしたらもう、無抵抗で読み進めるしか術はない。

    だから本作品はミステリではなく、私の中ではファンタジーに分類された。
    本の中で何が起ころうとも受け入れるしかない、という意味で。
    事件の真相が宗教だと明かされても、1000歳の老人が出てきても、松尾芭蕉がなりすましてたと言われても、抵抗なく受け入れられました。

    ホントのホントの犯人(教祖ってことになるのか?)がS(正確にはC)てのは、素直に読めば曹操だけど、メタというキーワードに従えば、S=清涼院流水ってことかな、と思ったり。
    濁暑院は大事件の脚本を認めた大犯罪者なのに、その割には敬意を示されてるように感じて、濁暑院は清涼院の裏返しなわけだから、やっぱり作者=神の法則なのかしら、とか。

    まぁいろいろ考えさせられて楽しかったです。


    探偵達をみな個性的に味付けしようとしてるけど、対人的にはみんな穏やかで、基本優しい世界。(実際はこんな突出した人たちが集まったら絶対殺伐とする。大抵性格が歪んでるので)
    そういうところもファンタジー要素を強めてるなと思いました。

    (蛇足)
    刊行順に読んだ人達は、このあと『ジョーカー』を読んだんだろうけど、幻影城の人がほぼ信者とか濁暑院が中枢とかって情報を持ってあれ読んだらどんなことになるんだろうか。

  • ジョーカーとセットで読んだわけだが、この人の作品を評価するとか、私には無理。
    本格マニアには面白いんだろうなと思うし、ところどころ、いい部分もある。
    才能も感じる。
    4大奇書を超えたかもしれない。
    しかし普通の人間である私は、この常識では測れない作家の作品を持て余すしかない。

  • 流水デビュー作、稚拙、古くさい、登場人物の優秀さを表現するのに全て若年・容姿端麗でレベル低い、下手すぎて無駄に長い、超展開、褒める人の意見を全部踏まえて理解した上で決定的につまらない、端から見てるとまさに宗教

  • 一度読んだものの読み直しです。
    というのも、舞城王太郎の『九十九十九』を買ってきたからです。

    やっぱりオリジナルを読んでから…というか、九十九十九ってどんな人だったっけ?と思って。
    というわけで、『九十九十九』も読み終わってるんだけど、とりあえず今日は『ジョーカー』&『コズミック』の感想です。

    改めて読んでみると、昔ほど清涼院流水がキライではなくなった…かな。
    や、それでもやっぱりあんまり好きくないけど。

    なんていうか、「散らかしっぱなし」な感じ。
    散々おもしろそーなネタをばらまいておいて、回収ができてない…みたいな。

    『コズミック』の言葉遊びなんかは特にそう。
    この見立てにはこういう意味が隠されてる、で、こういう意味も見いだせる、あと、こーゆーのもある、って…。
    「で?」って感じなのです。
    キリないし、意味ない。
    意味があるとすれば、作者の言葉遊びに懸ける熱意(?)と労力がわかるくらい。
    本格ミステリは、すべてが解決のための伏線になっているところが美しいのに。

    ちなみに、西尾維新のような言葉遊びは好きです。
    事件の解決とは無関係な言葉遊び。
    単純で無意味で、かなりスキ。

    さて、で、九十九十九。
    なんか、『ジョーカー』&『コズミック』読んで思ったのだけど、九十九十九って、他の探偵(龍宮とか霧華とか鴉城Jr.とか)に比べて、なんかあんまり魅力なくない?
    人間らしさがないからかなぁ?
    それとも探偵が多すぎるせいで、出番が少ないから?
    なんか、代替可能な感じがして(解決するのは九十九十九じゃなくてもよくない?って感じがして)…微妙です。

    というわけで、なんだか煩雑な文章になったけれども、『ジョーカー』&『コズミック』の話はこれくらいで、明日は『九十九十九』!

  • 悪評にもなるほどと思う。「ふざけんなというような結末」と言われていたから、魔術的なというかファンタジー的なトリックなのかと思った。一瞬思いついて、すぐにありえんと打ち消してしまうようなネタではある。ひ〈ピー〉からそ〈ピー〉まで、暗号がやりたいだけちゃうんかとも。
     先に『ジョーカー』を出していたらどうだったんだろう? 台無しにしたとか言われるのかな? 正直、順番としては清涼IN流水よりも、『ジョーカー』→『コズミック』の方が良かったんじゃないかと思う。すっげぇ偉そうに言えば、見せ方などもまだ途上で書かれたものの気もした。
    まぁやっぱり真面目に謎解きしながら読んでいる人からすれば、ふざけんな、なんだろう。

  • 私の中で、栄誉ある『本を読み終わった瞬間に投げつけたくなる作品』第1位を受賞しています。
    本当に、読み終わった瞬間に「なんやねん!」と思いました。
    色々な意味で、もの凄い作家さんです、清涼院流水。
    作品の内容としては、密室卿という訳の分からない人が、1年間で1200人を密室で殺すと予告。その予告通りに、ひたすら人が殺されていき、それをJDCという正義の探偵組織が解決する、というものです。
    私は残念ながら、彼と波長が合わないようですが、はまる人ははまると思いますよ。

  • 【コズミック 水】
    20番目の被害者は幻影城の密室の間で見つかった。
    その頃、JDCに分厚い封筒が送られてくる。『1200年の密室伝説』というタイトルが付いた数百ページにものぼる原稿。差出人は送られてくるはずの無い人物からだった。
    1994年1月9日。イギリスで前年のクリスマスイヴから巻き起こっている切り裂きジャッキー(ジャッキー・ザ・リッパー)の事件を解決するため九十九十九(JDS第1副班長)が渡英していた。
    彼が事件の会議を終えた1時間半後――日本時間1月10日午前8時30分。再び送られてくるはずの無い人物からの封筒がJDCに届く。中から色あせた二冊の本が出てきた。
    被害者は31番目を数えていた。
    ――ロンドン時間1月10日零時。鴉城へ国際電話をした九十九は二冊の本の出現を知る。やがて彼は一つの結論を鴉城に伝えた。




    この小説を私より先に読んだ友人は「どこを話してもネタバレになる」と言っていたが、本当にそうだった……。かなり端折って(ぼかし)て(自分なりに頑張って)粗筋を書いたが、なんのこっちゃーわからんぞ。という粗筋になった(笑)
    妙な順番で粗筋を書いている(コズミック流→ジョーカー清→ジョーカー涼→コズミック水)が、これがこの小説の理想とする読み方である。
    時間の流れで言えば、ジョーカー清・涼で幻影城殺人事件が終結→コズミック流・水で密室卿の事件が終わるので、そのまま素直に読んでもいいが、『流・水』の中に『清・涼』を入れて読むと新たに浮かび上がる事柄が出てくる。作者曰く“流水の中の清涼”つまり“清涼IN流水”(=作者名にも当てはめれる)だそうだ。
    この【言葉遊び】で解るように、本編はエグイほどアナグラムが出てくる。特にジョーカーは恐ろしい程だ。故にこの著者はとんでもなく頭がいい。

    まずは、ジョーカーからの感想だが――アナグラムを解こうなんてのは間違ってる。「んーなもん解けるか」の一言に尽きる。理由は余りにも計算しつくされているから。
    これでもかこれでもかと後半は押してくる。あまりにも凄いので最後は弾けて笑った。
    ただ、ただ「ほぉー」「はー」と感嘆のみですね。でもって、サイヤ人の上にはスーパーサイヤ人が居るのね。という感じかな(読んだ人は何を指してるか解るかしら:笑)
    ジョーカーは捨石が物凄く多いのと懲りすぎてる面がかなりあるから嫌いな人は嫌いかも。その捨石がまた凝った設定なんですがね……rainbow設定は個人的に好み。つーか普通はこれぐらいの設定ですよ。これが捨てなんだから勿体無い(笑)


    で、コズミック――『流』は読まなくても筋はわかるのであえて端折るという行動に出てもいいが、ジョーカー&コズミックを一つのモノとして考えるのなら読んでた方が面白みは出る。
    『水』に入ると、読んでて妙な感じがしたので被害者記述は本文通りメモ程度の記憶に留めながら読み進めていった。つまりこれはグローバルな視点で見ると必要ないもの。と判断したから。これはジョーカーを読んだから察したんでしょう。いい意味で言うなら作者の意図がわかったから。悪い意味で言うのなら物語の先が見えたから。とでもいいましょうか。
    何が悔しいって、【H】は解ったのに【S】までたどり着けなかったこと。あんなに大胆に作者は手の内を見せていたのにねぇ……。自分を過信評価するのなら犬神夜叉レベル(かなり言いすぎ:笑)どう頑張っても決して九十九十九レベルにはたどり着けません(笑)


    さて、通しの感想は――これは推理小説として思い込んで読んだら駄目ですね。じゃあなんなんだと言われれば、作者が自ら言っている流水大説と言うしかない。
    かなり異色です。推理小説と思って読んだ(のなら)結論(感想)は悪く言えば大風呂敷。でも全て計算しつくされた大風呂敷です。叙述の匂いもプンプンする。
    コズミックから浮かび上がったジョーカーの真相(?)は、もう笑うしかなかった。
    「なんだよそりゃあ!」と激怒した人も居るのではなかろうか……。

    ワタシは激怒よりハハハと乾いた笑いでしたけどね(笑)別に馬鹿にしたわけではありませんよ。念のため。むしろ作者に脅威を感じた。正しく言うのなら【ジョーカーも捨石かよっ!(ここの叫びは単純にコズミックの実行犯を代入した場合です)と……】驚愕して力尽きたというワケです。まぁ、これは(前述の伏せの部分)個人的な推察(思い込み)ですので他の人はどう思うか謎ですけどね。

    ↓ネタバレ&個人的思い込み感想(すげー解りにくいと思います)
    【ジョーカーでは犯人は一人と名言している。が、コズミックを表向きで代入するのなら、これはルール違反。何故ならコズミックでは全てに異なる実行犯が存在するから。
    そういう意味ではJDCで殺されたピラミッド・水野は裏を返せばJDC内部に犯人が居るという事になる。これはブラックジョークの域ですね(笑)。
    ただ、グローバルな視点として見る――コズミックで結論だてたもの(=【S】)を代入するのならジョーカーの犯人は一人であり、又それはコズミック・ジョーカーが同一犯という事になる。
    これをこじつけと読むか納得するかは読み手側の選択。どの選択肢を選ぶか作者はジョーカーで読者に委ねている(と個人的に判断してる)のでジョーカーの単独犯名言はルール違反では無いと私は思っている。


    そしてジョーカー全てが捨石若しくはミスディレクションの為だけに計算されて書かれたと私は思っている。(←個人的に作者を買いかぶっているので)

    とても表現が難しいのだが、この二つの作品を統一した一つのものと見なせば、表向きの部分(=実際に文字で書かれてあるこの小説の全て)と裏(若しくは高い位置から/実際に文字では書かれてないもの)向きの部分が平行して存在しているのでは無いだろうか。
    故に、ジョーカーがミスディレクションであるはずなのにそうは見えないように一つの出来事(事件)として書かれたのでは無いかと。

    ――そういう読み方をすれば、幻影城の密室解明などは“大事の前の小事”的で、たとえ解明されなくても流せてしまえる。というか、気にならなくなる。(現に解明されない謎がある)。
    言い換えれば密室の解明など必要無い(=何故ならジョーカーがミスディレクション扱い――つまり現実の事件をありのままに明記していない――濁暑院の視点から書かれてあるから)。その論理からすると、コズミックの密室の実行犯が全て異なって当然だし、密室教の信者の狂言だという結果もありだろう(=何故ならコズミックは事件をありのままに歪曲せずに書いてあるものであり、決してミスディレクションとして書かれて居ないから)。
    これは物凄くマクロ的に読むという感じですかね。マクロ=ミクロだとは思うのだが、ミクロまで達する手前の最大限のマクロ読み。まぁこれは深読みでもあるし私の個人的な感想。

    ただ、小説内から滲み出てくる作者のミスディレクションの扱い方がどうしてもこんな深読みまでさせてしまう。
    【H】とミスディレクションを誘う(としか思えない)様にコズミックで明らかにその名を書かれてあったりしますからねぇ。
    又、ジョーカー自体、コズミック視点から見れば、作中作扱いで、濁暑院の視点文でしか読者は読めない(特に前半部分)。実際はどうだったのかは読者は知る術が無い。それの顕著な例がコズミック「流」ですかね。これは濁暑院の小説だとはっきりとコズミック内で判明するから。


    そういう料理方法を取る作者だからこそマクロ的にジョーカー全てをミスディレクション若しくはミスリードさせる為のみの存在としてコズミックの中へ挿入しているのでは。表向きからと裏向きからの両方の観点で――だからこそ【流水の中の清涼】。


    ……などと勝手に思ったり(笑)
    さて、本当の真相はどこにあるんでしょうね。それは作者のみぞ知る。という事かな】

    これからもし読む人が居るのなら、犯人やトリック看破に固執せず、大きな一つの流れとして読んでください。そういう読み方をすれば作品の良さが解ると思います。そういう意味でワタシは個人的に星5つ。

  • まあまあ

  • おおーー!そうかーそういうことなのか。JDCメンバーが一人ずつ真相にたどり着いていく中で、片鱗すら見当もつかず途中からなんで私は全くわからないのかと哀しくなっていましたが、これはしょうがない悔しくない!でもこの力技トリックは嫌いじゃないし偏執的なアナグラムや言葉遊びは感心します。言われた通りの順番で読みましたが人物像が把握できていたのは悪くなかったです。ジョーカーもこれを読む前に読んで良かった気がします。4冊で2千頁弱。私は時間の無駄とは思わなかったし続きにも興味があるけど、人には勧めないです(笑)。

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著者プロフィール

一九九六年、『コズミック』で第二回メフィスト賞を受賞し作家デビュー。以後、小説だけでなく、ビジネス書、ノンフィクション、英語学習指南書など著作多数。小説執筆の息抜きとして始めた英語学習にハマり、独自のメソッドでTOEIC(現TOEIC L&R)テスト満点を五回達成。二〇〇九年から二〇一七年まで主宰していた「社会人英語部」では、のべ六五人の部員をTOEICスコア平均九〇〇点台にまで導く。日本人作家の小説を英訳して世界中の電子書店で販売しており、著者、英訳者、編集者として手がけた英語作品は一〇〇を超える。作家としての近著に『感涙ストーリーで一気に覚える英単語3000』(明日香出版社)、『きみと行く 満天の星の彼方へ』(リチェンジ)などがある。

「2020年 『三日坊主でも英語は伸びる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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