- Amazon.co.jp ・本 (210ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062694827
作品紹介・あらすじ
妖面、なりたいすがたになれるというそのお面は、面作師の中でも、腕のいい者だけが、作れるのだという。妖面は、諸刃の剣。面をはずせなくなれば荒魂化し、人として生きていくことができなくなる。それでもなお、人々は、今日もお面屋を訪れる――。時代ファンタジー第3弾!
感想・レビュー・書評
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人でないモノになってしまうかもしれないリスクと引き換えに、自分のなりたい姿になれる面・妖面を商うお面屋の少年たちの物語。
シリーズ3作目は3つの中編作品が収められています。
お面屋たまよしの2人と短い時間を共にした人々は、彼らに出会う前とは何かが変わるようです。
それはよい変化のときもあるし、悲しみを伴う変化のときもあります。
何人もの人々の変化を見届けて旅を続ける2人は、その分、喜びや痛みを重ねてきているのだ…と、年齢の割に大人びた2人の表情に切なさを感じながら読了。
彼らの旅路の先を見届けねば、という義務感に似た気持ちは、彼らが自分の弟であるかのように感じてしまうからなのでしょうか…。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
今一番個人的に注目のシリーズ作品かもしれない。猛プッシュします☆今作も良かった♪太良&甘楽と同年代の同業者が登場の『背中合わせの対話』:自分の境遇と比べてしまって、つい攻撃的になってしまう気持ちが凄く伝わってきました。成長した佐和がまた太良&甘楽と再会できる日が来るといいな。『木屑入りのお茶』二人の師匠・仁王次など、太良&甘楽を取り巻く者たちの事が垣間見られました。『波紋の行方』:たとえ捨て子でも太良&甘楽は愛情に恵まれた育ち方をしてるな~と、しみじみ。お鶴の結果はシビアな面もあったけれど、幸せの形や受け止め方はそれぞれだなぁ。
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運命を恨むのではなく、道を見つけてその歩き方を見出す。前向きという言葉だけでは足りない平良と甘楽の生き様に、やはり前向きさを感じずにはいられないのでした。奥行きのあるお話が濃密に詰め込まれた第3巻、ご一読を!
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同業者や複雑な思いから妖面を求める客が出てきて、より物語が深くなっている気がする。
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・「お面処やましろ」の二人組とたまよしの二人組が出会う。「やましろ」の師匠は暴力が激しいらしく・・・
・竜胆、迅雷が酒を届けに仁王次のところに行く道すがら、仁王次に求婚中という娘、お巻と出会う。
・子もなく夫の心が自分から離れていってしまったのではないかと思いなんとなく落ち込んでいるお鶴は太良、甘楽と出会いつかのま母親のような気持ちになる。
▼たまよしに関する簡単なメモ(一巻目からの累積)
【亥緒利/いおり】「お面処やましろ」の内弟子。丸刈りでいかつく強い。佐和のあんじゃ。新居浜村の祭でたまよしの二人組と出会う。
【一太郎】新太の村で年貢に関する一切をを取り仕切っている人物の息子。理路整然としていて口も立つ。子どもたちのリーダー役だが末蔵はちょっとやっかみ。
【イヌビエ】隠さまの側近。小天狗たちの教育係でもあり、彼を苦手にしている天狗は多い。ある意味怒るのが仕事とか。元は他の山の主だったというウワサもある。いつもユリの花の匂いがする。アニメ化するなら声優は津田健次郎さんあたりがよさそう。
【伊部のじいさま/いんべのじいさま】渦黒村の全てを取り仕切っているまとめ役。
【渦黒村】万吉の生まれ故郷。鬱々とした死後の世界のような村と万吉は思った。
【うとうと病】うとうとしている間に年月だけ経ってしまいその間の記憶がほとんどないまま老いて死んでしまう。琵琶法師が吉蔵たちに語った話。
【お糸】荒魂化したいがゆえに妖面を買おうとしている女。
【お勝】回船問屋の娘。器量がよくなくまわりは案じているが当人はさほど気にしていない。好奇心が強く異国の本を読んだりするのが好き。妖面に興味を示したのも美人になりたいというよりは美人は世界をどう見ているのか知りたかったから。けっこう大物やなあと思う。《自分はきっと、知らないことを知ることに惚れっぽいのだ》第一巻p.103
【お菊】勘助の許嫁。領主の菅原のところに手伝いに行ったところを次男の半次郎に見初められた。実は今の生活がイヤで抜け出したいと思っていた。ぼんやりした底なし井戸のような女だと迅雷は思った。
【お七】万吉の妹。身体が弱く七歳まで生きられないだろうとついた名前がお七。生まれ故郷の渦黒村(うずくろむら)に(生きていれば)残っている。
【お鶴】三郎の妻。最近あまり愛されてないような気がして気分が上がらない。
【お初】吉蔵と仲良くなりたがっている少女。
【お巻】沼入村の房之助の娘。十三、四歳くらい。危ないところを仁王次に助けてもらって惚れたのでずっと求婚している。物怖じしないタイプ。迅雷のことを「らいぼん」と呼ぶ。
【お葉】吉蔵の妹。
【御招山/おまねきやま】天狗がいる。
【お面処やましろ】裏の屋号は「奇楽苑」。
【お面屋】表の屋号のときは祭が書き入れ時でほぼ香具師の感じ。
【面作師/おもてつくりし】《人間の世界と山の世界の境界をいく者たち》第一巻p.15
【隠さま/おんさま】御招山の天狗のリーダー。天狗を人間の姿に変える神通力を持つ。アニメにするなら声優は森川智之さんで決まり。
【勘助】途方に暮れていた迅雷の面倒を見てくれたお人好しの男。お菊の婚約者。
【甘楽/かんら】「お面屋たまよし」の一人。幼い頃御招山に捨てられていたところを隠さまに育てられた。年齢的にはもうじき14歳で「若衆のなりかけ」くらい。長くない髪を無理やりひとつにくくっていて、顔のパーツが大作りで派手な印象。ちょっと短期なタイプ。ときどき太良に逆らいたい。
【吉蔵】大名の家臣の息子だったが父が戦で大きなしくじりをしたとかで打ち首になり没落。人々のほどこしにすがって生きている。
【呉葉】吉蔵の母。
【佐吉】吉蔵の弟。
【三郎】お鶴の夫。瞳の色が薄いのが綺麗でお鶴は気に入った。声もやわらかくささやくようで心地よい。鋳かけ職人。
【佐和】「お面処やましろ」の内弟子。髪が長く幼い感じ。ふだんは気だるくだらだらしている。新居浜村の祭でたまよしの二人組と出会う。
【新太】農民の子ども。もうじき十三歳。みばえがいいようでちょっとモテモテ。望洋とした性格でその気になればけっこう大人物になれるんじゃないかと思う。《面が好きなんじゃなくて、目にしっかり入ってくるものが好きなだけ》第二巻p.24。
【迅雷】小天狗。太良、甘楽を見張るよう隠さまに命じられているが二人が赤ん坊だった頃から知っているとはいうもののコミュニケーションはなかった。天狗は寿命が長いので二人より年上だが人に変化したときの見た目は十歳くらいの少年。人の姿をしたときは人と同じ能力しか持てずとても不便。好物は金平糖や南蛮菓子のボーロ。アニメにするなら声優は釘宮理恵さんかな?
【末蔵】新太に兄貴分風を吹かせているわりと身勝手なヤツ。自分の境遇に不満がある。孤立しやすいタイプ。もうすぐ十五歳。
【染助/そめすけ】万吉の幼馴染み。成長するにしたがって陰気になっていった。
【太良/たいら】「お面屋たまよし」の一人。幼い頃御招山に捨てられていたところを隠さまに育てられた。年齢的にはもうじき14歳で「若衆のなりかけ」くらい。洗いざらしの髪を耳が隠れるか隠れないかくらいの長さにしている。飄々として落ち着いているタイプでどちらかといえば兄の役割。眠りが深い。
【富田屋】古手屋。お鶴が修繕の仕事をもらっている。
【仁王次/におうじ】面作師(おもてつくりし)。隠さまの昔馴染み。太良、甘楽を育てた。表の名前が「たまよし」。今年三十九歳だが年齢不詳の存在になりつつある。アニメ化するなら声優は・・・軽いところも重いところもある大塚明夫さんあたりかな?
【白眉山】頂上付近に仁王次の工房がある。
【ひめさま】町民の老女。名前がわからないので「たまよし」の二人はそう呼んでいる。ひめさまかどうかもわからないがそうとしか言いようのない人物。
【古手屋】古いものを引き取り修繕したりして再度売る店。まあ、リサイクルショップってとこか。
【兵太郎】お勝の父親と同じ通りに店を構えている反物屋の息子。その取り巻き連中がお勝のことを「ごつごつさん」とか呼んでからかうがお勝が相手にしないのを見て面白がっている。お勝の一歳年上。
【魔縁堂】「たまよし」の裏の屋号。妖面を売り買いするときに名乗る。
【魔縁丸】妖面を作るのと同じ鉄を使って作られた小刀。妖面をつけた人間が荒魂化したら鳴く。
【万吉】盗みをしようとしたところを太良に止められた。二十歳。
【八五郎/やごろう】「お面処やましろ」の師匠。
【夜之吉/やのきち】たぶん能役者。自分が使っている仁王次の面を少し手直ししてもらえるよう頼みに来ていた。
【妖面】お面屋が裏の屋号で売っている、なりたい姿に変化できる面。特定の誰かになることはできない。荒魂化して人外になってしまうリスクもつきまとう。その場合、売った者が鎮めこの世から消滅させる。
【竜胆】迅雷の兄。大天狗の若頭。 -
ああ、やっぱり太良と甘楽の掛け合いが好きだー!
今回は彼らと同世代の別の面作師見習いの二人も登場して、少し微笑ましかったです。
太良と甘楽とは全く違う生い立ちに、育つ環境を選べない理不尽をひしひしと感じつつ、でもだんだんと前を向き、自ら面作師になることを決意して前を向いた佐和に心を打たれました。次にどこかで再会する時が楽しみです。
その他、謎が多い仁王次と天狗たちの話や、少し切ない夫婦との話など、しみじみ心にくるものがあり、温かくもどこか切ない気持ちになりました。