「学力」と「社会力」を伸ばす脳教育 (講談社+α新書)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062725576

感想・レビュー・書評

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  • 著者、澤口俊之の脳研究を纏めた主論でもあり体系的にわかりやすく解説したものだと著者自身が述べるように、論点がハッキリしている。脳科学的見地においては、8歳程度の脳の育成における臨界期が重要だという事だ。分かりやすいが、もう取り戻せないではないか!と、ショックだが、この主張は著者の別著でも述べられてきたもので、今更、初見でもないのだ。

    言語や視覚系、絶対音感。バイリンガルの子供や日系二世と親の英語能力の違いを思うと、著者の言う「学習容易期」は確かにあるのだと理解できる。この本では他にもサヴァン症候群の子に、一般教養を教え込む事で脳のリソースが取られ、突出した能力が損なわれてしまう例も紹介される。環境によって脳は柔軟に変容する。しかし、それは幼少期まで。また、遺伝にも左右される。

    また、本著ではスポック博士による、自由な子育てが一部が誤りである事も示される。厳しく規律を教え込む事は意味がある。また、そうした実験結果からミスリードしてしまう疑似相関の罠についても解説する。

    まさに本領発揮、というよりも時系列的には著者が教職を退いて間もない著作なので、まだ研究者としての勘も鈍らず、筆も流暢にという所だろうか。しかし、救われない。成人になってからでは遅いという論説にフォローは無い。

  • ほんまでっかTVの澤口先生の本、突っ込みどころが結構あった。学校制度を6・6・3制にすべきってのは共感した。人間性知能HQを高めようってことを脳科学の視点から述べてく内容で、10年前の事情は存じ上げないが、現役の子育て世代としてはそれほど参考になることもなかった。脳科学というより心理学みたいな実験結果を根拠にしてる印象を持った。
    勉強ができてもドロップアウトしたりすることがない人物像を育成しようという狙いがあるみたいだが、とくに8歳までの幼少期の家庭環境によって境遇は決まってしまうってのは当然すぎやしないだろうか。そもそもここで問題視されてる社会リスクがある人ってのは人口の何%なのだろう。脳が萎縮してしまうぐらい人格障害がある人って極端すぎる例だと思うし、普通の家庭ならよほどそうならないと思うが・・一流企業で1年以内に40%が辞めてしまう会社の事例が出てくるが、40%も毎年辞めてるならそれは新入社員じゃなくて会社の問題だろう。最近の若者は友人付き合いが希薄だということが公然の事実かのように語られているが、それこそバイアスで何の統計的な根拠もない非科学的な知見をもとに話を進めている。5〜6才の子供ってバラエティ番組みるのか…ほとんどアニメばかりではないか?バラエティ番組を見て大人の社会ルールを見れる機会もないだろう。  ヒトとチンパンジーの系統が分かれてまだ700万年しか経ってないが、そこからヒトならではの進化を遂げてきた環境があるから(EEE)、それに即した子育てをしようという提案。これは一歩間違うとパレオファンタジーに陥ってしまう恐れを感じた。これからは核家族がさらに進む超工業化社会にあって加速的に子育て環境も変化していくだろうし、そうした新たな環境でさらにヒトは進化していくだろう。シンガポールやアメリカの一部など先進国では出産後わりとすぐに仕事に復帰してナニー制が取られてるケースも多いし、母親との時間が少なくても子供はいくらでもまともに育つだろう。ワーキングメモリーのトレーニング結果についても紹介されてるが、数字を2つ見せて後から何の数字だったか答えさせる問題って・・しょぼすぎないか

  • ◆ワーキングメモリーの能力向上、そのトレーニングが社会性に果たす役割が大きい旨、主張する。ただ、本書の記述内容ではエビデンスと訓練の具体的方法の提示に難が…◆

    2009年刊行。
    著者は元北海道大学大学院医学研究科教授。


     タイトルに書かれる以上に、「社会力」を伸ばす方向に力点を置いた書と言えそう。簡明なのであっという間に読める一方、新書の分量的制約のせいか、本書の書きぶりにつき、エビデンス提示には怪しさが残らないとは言えない(ただし、個人的には本書の帰結は一定の合理性があると考えるが)レベル。

     そこはおくとして、①一定の規範・規律を有した集団の中で、②小さな目的達成を経ていく中で褒めて褒めてという作業が必要というもの。③規範・規律違反に対し簡明かつ短い叱責は良いが、暴力はNGということのようだ。

     とはいえ、最も「社会力」向上に寄与しそうなワーキングメモリー向上の方法論は、ソフト宣伝に終始している。この最も重要なワーキングメモリー訓練法が書かれていないので、これではどうしようもない。
     そもそも、ワーキングメモリーが訓練で能力向上するかにつき、否定的見解を述べる研究者もいる。本書の記述内容では「私を信じろ」以上の内実は読み取れない。ソフト販促本の趣きもちらほら。

  • HQの重要性と対策。

    C0295

  • 脳内格差解消!読み書き算盤+音楽で成功脳に!社会的成功の裏には必ず幼少期の脳教育があった。誰もが幸せになれる「脳力」の秘密。
    著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
    澤口/俊之
    1959年、東京都に生まれる。人間性脳科学研究所所長。理学博士。1982年、北海道大学理学部生物学科卒業。1987年、京都大学大学院理学研究科動物学専攻博士課程修了。エール大学医学部神経生物学科リサーチフェロー、京都大学霊長類研究所助手などを経て、北海道大学大学院医学研究科教授に就任し、2006年に退職。著書には、日刊工業新聞技術科学図書文化賞を受賞した『わがままな脳』(筑摩書房)などがある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

  • とても読みやすく、また、事例に基づいて理解しやすい

  • 脳科学の観点から育児について考察した本です。

    育児本は沢山あふれていますが、惑わされないマインドが養われると思います。ただ、あくまで脳科学の観点からなので、実際とずれることも…。そのような時には、柔軟な解釈や他の専門分野の方の意見を適宜取り入れるとよいと思います。

  • 脳のそれぞれの能力はだいたい8歳頃までに成長の臨界期を迎える。
    HQ(人間性知能)を伸ばすこと、育成することが子どもの将来のためには重要。そのためにはどうするか?

    ○乳児期(生後~2歳頃)
    ・生後6ヶ月までは母乳のみで育てる
    ・神経回路が発達する時期。豊かな環境、特にクラシック音楽を含めた多様な環境に触れること

    ○幼児期(3歳頃~8歳頃)
    ・前頭連合野が発達する時期。
    ・HQ育成サイクル「目的の設定→努力→目的の達成→より高いレベルの目的の設定→努力・・・」で未来志向的行動力を総合的に育成
    ・目的=子どもの好奇心・探究心から発生
    ・仲間同士での集団遊び(けんかも大事)
    ・母親、祖母と過ごす時間を増やす
    ・箸を使って魚をたくさん食べる

    子どもが自分の力で考え、生きる力をつけられることを願って。

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著者プロフィール

北大教授 著書に『わがままな脳』『平然と車内で化粧する脳』『モテたい脳,モテない脳』など

「2005年 『HQ論:人間性の脳科学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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