夏の約束 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 158
レビュー : 30
  • Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062737050

感想・レビュー・書評

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  • この作者が織りなす悲しみの雰囲気は、少しだけ癖になりそう。
    ハッキリと書くことなく、ジワリと滲ませる感じ。

    表題作の「夏の約束」について。
    MtFの美容師がひょんなことから入院することになる。
    友人らがお見舞いに行くと、同じ病室の男性から心無い言葉を聞いてしまう。

    "隣のベッドに新しく入った中年男性が、白髪まじりの坊主あたまをなでまわしながら、あんた、おかまちゃんの友だち?とぎすぎすした声で訊いた"

    酷い。あまりの無理解さに頭痛がする。
    それでも、友人らは抗議することなく、当の本人が苦しむ描写も為されない。

    だけど、一人のゲイとして、あえて描かれなかった部分が容易に想像できてしまう。

    この他にも、マルオというゲイの登場人物に為された差別的なアクションがすらすらと書かれる。

    決してドラマチックに書かないことで、こんな差別的な言動は日常茶飯事でありふれたものなのだ、ということがむしろ強調されていた。
    そっか、1999年の作品。時代はまだ寛容への道すがら…。


    同時収録の「主婦と交番」も悪くなかった。
    電車恐怖症の主婦から見た世界は、マイノリティの生き方を感じさせて、夏の約束と同じエッセンスを持っていた。
    話と登場人物がよりシンプルなだけに、こちらの方が読みやすいかもしれない。


    さて、どちらの作品もある種の魅力的な囲気を持ってはいるのだけど、小説として秀でているかと言えば、凡庸さは否めない。ということは付記しておく。
    芥川賞、やっぱりよくわからない。

  • 「夏の約束」と「主婦と交番」の二編を収録した短編集。
    「夏の約束」は芥川賞受賞作品。
     最近は集中して芥川賞受賞作を読んでいる。
     さて、この「夏の約束」。
     ゲイのカップルや性転換した女性(元男性)、不倫女、障害者を兄に持つ妹、といったマイノリティと、その他大勢(文中では「8:2」の対比の「8」にあたる)のマジョリティの関わり合いを描いた作品なのかな、と思える。
     思えるんだけれども、どうも淡々と、というか平坦にスススーと物語が流れて行ってしまって、どうにもとっかかりがない。
     そこが読みやすいとか、変に深刻になっていないとか、そういった長所になってもいるのだろうけれど、僕としては、何かうわべだけをシュシュシュっとなぞられただけって感じがする。
     物足りないのだ。
    「主婦と交番」の方が、この長所と相まって面白かったように思える。

  •  登場人物にはゲイカップルやトランスセクシャルな女性、養護学校に通った兄をもつ作家や、乗り物パニック症の主婦など、世間でいうところの少数派に属する人達が沢山出てくる。世間の人達から好奇の眼差しで見られたり侮蔑されたりしつつも、彼らは彼らの日常を送っている。そんな日々を淡々と描いており、劇的な展開はないのだけど、胸にざわめきが起こる読書だった。そして自分自身がこの物語でいう「世間の八割」として少数派の人々を心のどこかで笑ったりしていないか、そんなつもりは勿論ないけれど、ふと考えさせられるような一冊だった。

  • 藤野さんは好きだけど、どんな内容かざっくりと知ってしまったら、読み進めたい気持ちがなくなってしまった。冒頭からあんまり入れなかった。時間がめっちゃある時に読むかな。。男子同志のラブは興味ないです。。。

  • 1999年下半期芥川賞受賞作。ゲイのカップルの日常を明るく描き出した小説。会社員のマルオはカミングアウトしたわけではないが、社内ではみんなにホモセクシュアルであることを知られている。相手のヒカルと街中でも堂々と手をつないで歩いたりもする。それで特に大きな不都合もないし、アパートの階下に住む岡野さんとの関係も良好。他にも性転換したたま代さんなど、ユニークなキャラクターが登場するのだが、では小説として新しいかといえば、登場人物の設定以外に斬新さはない。選考委員たちも素材に眼を眩まされた感がなきにしもあらずだ。

  • Boys Love中のカップルや女性になった美容師といったマイノリティが登場します。

    数の多少にかかわらず、単なる「違い」との価値感が物語からあぶりだされてきます。
    それでも、
    やっぱり悲哀も感じることがあるのか、強がらずにはいられない様子が台詞も。

    一見、能天気な感じの文体、ストーリー、登場人物の人柄のなかに、楽しさとともに、優しく、哀しい思いが織りこまれた作品でした。

  • 盛り上がりが特に無く、いまいちピンと来なかった。ただ、マルオの柔和に人を避けるような態度や、面倒くさいと仕方ないと何だか嫌だが混ざったような感情の表現が良いなあと思った。

  • マルオのトイレの個室で自分のことを罵った落書きを見て
    生きる気力がわいたというのが印象的だった
    マルオはヒカルと手をつなぎながら歩いていて
    それを小学生に馬鹿にされようと怒らない

    それはマルオが強いわけでも優しいわけでもなく
    ただ、人一倍弱いから、そうやって気にしないように
    紛らわしていたのではないだろうか

    それが体型、上司や同僚、知り合い以外の
    知らない人としゃべるときの言葉遣いに表されている気がする。

    最後の解説も凄く良かった。
    今回は解説が本当に良かったかもしれない

  • 星の数ある日常の一風景。
    時にはライブハウス、
    時にはステレオタイプに、
    人間ドラマは動き出す。
    まるで月光を遮る遠心分離器のようだ。

  • 芥川賞受賞作品を全部読んでみようと思って読んだだけの本。
    五年ぐらい前のことだったと思うが、今になってパラパラとめくっても、なにも蘇ってこない。ストーリーすら忘れた。
    マルオとかヒカルとか、なんで登場人物がカタカナ名なのか?と思ったことを思い出した、ぐらい。。。

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著者プロフィール

藤野千夜(ふじの・ちや)
一九六二年福岡県生まれ。一九九五年「午後の時間割」で海燕新人文学賞を受賞しデビュー。一九九八年『おしゃべり怪談』で野間文芸新人賞、二〇〇〇年「夏の約束」で芥川賞受賞。

「2019年 『掌篇歳時記 秋冬』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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