《新装版》お引越し (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
3.75
  • (1)
  • (5)
  • (1)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 35
感想 : 3
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062762090

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • カバーの説明を読んで、主人公レンコの境遇が自分の過去と重なったので、思わず手にとった。
    もっと悲観的な内容かと思ったが、レンコも母なずなも、二人の生活を上手くやっていけるよう前向きに二人のルールを考えるところが良い。一見、なずなの言い分は自分勝手に思えるが、レンコを子供としてではなく、一人の人格として扱おうとしているところが、斬新。
    少し気になったのは、レンコの口ぶりが11歳にしては子供っぽすぎるところ。終始、話し口調で話が進んでいるのが良いところでもあるが、メリハリをつけるために他の書き方を挟んだほうがいい気がした。

  • よっしー推薦

  •  タイトルが自分の状況とタイムリーにリンクしていたので思わず衝動買い。

     読んでみると、離婚に伴う父親の引越しから話が始まる。全編通して娘のレンコの視点、一人称で書かれており、多感な小学校高学年女子の心情と、レンコのするどい観察眼や賢さと憎めない子供っぽさが読み手にボクシングで言うならジャブを連発してくる。ストレートはほとんど飛んで来ないので、いきなりの大ダメージはないのであるが、このジャブが的確にヒットして来るので、物語が進むに連れて、ずい~ずい~と深みを増して来るのである。

     レンコの母親のナズナを始めとして、父親、布引君、ワコさん、ミノルなどなど、個性的なキャラクターが揃っているところも面白い。特にナズナは離婚を機に昔の自分を取り戻そうとして必死だったりして、母親として考えたら腹立つこともあるけど、そんな姿が馬鹿っぽくてちょっとかわいらしい。その他の人間も含めて、全く自分のせいでもないのにとんだことに巻き込まれて、それでも泣かず喚かず頑張るレンコが心で叫ぶ素直でかわいらしい言葉が「バーカ」である。そういや子供の頃は何かにつけてよく「バーカバーカ」と言ったもんである。

     何だか淡々と物語が進んで行ってしまう気がするのであるが、そこには確かにレンコの心の成長の物語が描かれており、とにもかくにも前向きに頑張ろうと決めたレンコが頼もしく思えて来るところで物語りは終わり、と。

     あと話で、ミノルこと大木実、サリーこと、橘理佐、中学で新しくレンコと同じクラスになった渡辺の語りが描かれているのも面白い。特にサリーは別で主人公にして物語を作ってほしいぐらい。

     それからこの作品は映画になっているようで、原作とはかなり異なった内容となっているらしいが、相米慎二監督作品ということと、私の好きな田畑智子が出ているとのことなので、いつか見てみたいと思う。

全3件中 1 - 3件を表示

著者プロフィール

1953年、大阪府生まれ。同志社大学文学部卒業。1991年、『お引越し』で第1回椋鳩十児童文学賞を受賞。同作は相米慎二監督により映画化された。1997年、『ごめん』で第44回産経児童出版文化賞JR賞を受賞。同作は冨樫森監督により映画化された。2017年、「なりたて中学生」シリーズ(講談社)で第57回日本児童文学者協会賞を受賞。他の著書に、「レッツ」シリーズ、『ハルとカナ』『サンタちゃん』『ぼくは本を読んでいる。』(以上、講談社)、「モールランド・ストーリー」シリーズ(福音館書店)、『大人のための児童文学講座』(徳間書店)、『ふしぎなふしぎな子どもの物語 なぜ成長を描かなくなったのか?』(光文社新書)など。『児童文学書評』主宰。

「2023年 『あした、弁当を作る。』 で使われていた紹介文から引用しています。」

ひこ・田中の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
朝井 リョウ
有川 浩
藤野 可織
瀬尾まいこ
湊 かなえ
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×