インカとスペイン 帝国の交錯 (興亡の世界史)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (404ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062807128

作品紹介・あらすじ

先住民と征服者。征服と融合、服従と反乱。アンデスの大地は揺れた。

感想・レビュー・書評

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  • 興亡の世界史シリーズは『イタリア海洋都市の精神』に続いて二冊目で、こちらも本当に面白かったです。
    まず裏表紙に書かれた紹介をそのまま写します。

    「16世紀、新大陸に渡ったピサロはインカ帝国を征服した。
    植民地空間に生きるスペイン人、
    インカの末裔、さまざまな混血集団。
    そして、イベリア半島を追放されたユダヤ人たち。
    共生と混交、服従と抵抗の果てに
    スペインとの訣別へと向かうアンデスの300年。」

    そして私は女だから、第八章「女たちのアンデス史」から書いておきます。
    ワイドショーを見ているよう。

    1532年カマハルカの戦いの後、インカ王の大勢の娘や妹たちがスペイン人に提供された。
    インカ王アタワルパは妹イネスをピサロに提供。
    2人の子どもが生まれたのち、イネスは捨てられ、部下スペイン人アンプエロものとに嫁がされた。
    1547年イネスによる夫殺害未遂事件が発覚。
    虐待と束縛の苦境から、「魔術」に頼って逃れようとしたのだ。

    新世界が始まったころはスペイン人と先住民との混淆は奨励されたが、
    その後純潔性重視のイデオロギーが作動、
    コンキスタドール(征服者)たちは旧世界からやってくるスペインの花嫁たちを迎えはじめる。

    彼女たちの目的は玉の輿にのること。
    あるお見合い目的の夜会での会話。

    「あたしたち、あのコンキスタドールたちと結婚しなければならないそうよ」
    「この腐った連中と結婚ですって。
    ごめんだね。こんな連中、くたばればいいんだ。
    まるで地獄から抜け出てきたみたいじゃないか。
    あの男は足が萎えている、これには手がない、あれは耳無し、こいつはひとつ目、あれは顔が半分っきゃないじゃないか。
    まともなのだって、顔は傷だらけだよ」
    「何言ってるんだい、あたしたちは、連中の見端と結婚するんじゃないよ。
    あの男たちのインディオを相続するためなんだよ。
    老いぼれさんはまもなく死ぬよ。
    その後、好きなだけ若いのと結婚すればいいじゃないか、古びて穴の空いた鍋を、新しいやつに替えるみたいにさ」

    これを読んで「コンキスタドールってやっぱり大変なんだなあ」と思いました。
    『ポカホンタス』のジョン・スミスみたいな人、ありえない!
    彼がイギリス人だからではなくて、やっぱりディズニープリンセス映画は美しくなくちゃいけないんだー。

    さて17世紀のリマは16世紀と変わり、女性数が男性の倍!
    恋愛や結婚の市場バランスにおいて女たちが不利であった?ためか、「恋愛魔術」を繰り広げる。
    ファナ・デ・マヨという先住民の老女。
    彼女の客や邪術仲間になったのは、スペイン人女性、メスティーソ(白人とインディオとの混血)女性、黒人女性、ムラート(白人と黒人の混血)女性、サンボ(黒人とインディオの混血)女性、そりてインディオ女性というように、およそ都市リマに見いだしうるあらゆる女性だった。
    権力をもつ男性たちが構想した、「人種によって明瞭に差異化された二つのレプブリカ」というイデオロギーは、女性たちの生き生きとした日常的交わりの中で、見事に破綻していた。

  • インカ側から書かれたスペイン侵略の本はなかなかありませんし、ポグロムが始まり出すきな臭いこの時代のユダヤ人の境遇とも絡めて、このシリーズのテーマと思われる帝国の周縁から見た世界がよく描かれているとおもいます

  • 地元の図書館で読む。期待はずれではありませんが、期待以上の出来ではありません。このシリーズは、期待はずれのものが多いです。アカデミックすぎます。それに対して、この本は読みやすいです。インカは無文字社会ではないが、記録媒体がないわけではない。織物で記録していたそうです。織物にかかわらず、何故、こんなに詳しいのでしょう。

  • 図書館にて。
    編年体でない歴史本って、バックグラウンドがないと厳しい。

  • [ 内容 ]
    先住民と征服者。
    征服と融合、服従と反乱。
    アンデスの大地は揺れた。

    [ 目次 ]
    第1章 インカ王国の生成
    第2章 古代帝国の成熟と崩壊
    第3章 中世スペインに共生する文化
    第4章 排除の思想 異端審問と帝国
    第5章 交錯する植民地社会
    第6章 世界帝国に生きた人々
    第7章 帝国の内なる敵 ユダヤ人とインディオ
    第8章 女たちのアンデス史
    第9章 インカへの欲望
    第10章 インカとスペインの訣別

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著者プロフィール

東京大学教授

「2020年 『宣教と適応』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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