- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062880855
感想・レビュー・書評
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「言葉が出ない」「発話できない」ってそもそもどういうことなの?「言葉を失う(文字通りの意)って、何??」という疑問から手にとった本。脳・神経医学の著者が症例を元にわかりやすく説明してくれていて非常に興味深かった。
言葉を失う、というか言葉がどのように脳で生成され発話されていくのか、に至ってもまだまだ解明されている部分が少ないんだね。「脳と心は別もんです」と序盤ではっきり言ってくれているのも好印象。失語症患者でも歌はうたえる、呼称できないモノや意識できない身体の麻痺について脳が勝手に補填して文をつなげてしまうことがある、というのが特に印象深かった。脳損傷によって「心理的空間」が壊れてしまう・・・というくだりはなんとなく円城塔の「良い夜を持っている」を思い出す。
エピローグで触れられていた「意識のない部分を意識できない」「意識に欠損を見いだすことができるのは観察者のみ」についてももう少し詳しく知りたいな。このあたりは哲学に繋がってしまうだろうから、いい意味で途方もなさそうだけど。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
脳梗塞のために高度脳機能障害を持った山田規畝子さんが師と仰ぐ山鳥さん。
本を出していたので、読んでみる。
失語症が専門で、いくつかの失語症のパターンについて分類している。結果としてモノの名前の意味を理解したり、モノの名前を呼び起こしたりする複雑な心の仕組みについての解説になっている。もちろんまだ多くが仮説である。
この本で紹介された失語症のパターンは、権謀失語(想起障害)、ブローカー失語(話すことの障害)、ウェルニッケ失語(理解障害)、伝導失語(単語の分化・展開障害)、右半球損傷や脳梁切断(発話障害)。著者も言うように今後脳の活動の可視化技術は飛躍的に進歩していくことが想定されることから、脳障害による失語症に関してもますますの発展が期待できる。
それ以前に人の名前が思い出せなかったり、前は苦も無く出ていた用語が出てこない症状を直してほしい...。
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『壊れた脳 生存する知』のレビュー
http://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4044094136
『壊れた脳も学習する』のレビュー
http://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4044094322 -
面白い事例とともに作者なりの仮説にあわせて解釈していくところが好きです。
言語というのがどうやって頭脳の中でプロセスされているのかという問題の解決ではないですが、それについて事例や理論を提供し、もっと考えさせる一冊だと思います。 -
平易な言葉遣いで、これまでの研究と自説を展開しつつ失語症についてまとめてくれている新書です。
ただ、じゃぁどうやったら失語症が治るのかという問いには答えていませんというか答えられないというのが現実なのではないかという感想も抱きました。
脳と心の違いに最初に触れていただけてるのもありがたいです。
ただ概念についてはもう少し踏み込んで欲しかったかなぁというのはこれは心理学的な立場から飲み方でしょうか。
最後、山鳥さんご本人が
「読み返してみて、俺はまだまだなにもわかってないな」というもどかしさだけが残っています
と記してらっしゃるのですが、本当に読みながら「ことばとはなんぞや意識とはなんぞや心とはそれにあたる脳とは」みたいになって頭がバーンしました。おちついたらまた読み返しますです。 -
2011.10.04. もうすぐ失語症友の会へ見学に行くので。この新書、わかりやすいです。専門用語がけっこう出てくるので、下準備に子ども向けの失語症の本とかを読んでおいたら、理解が進みます。ブローカ失語、ウェルニッケ失語、健忘失語、伝導失語について、いろいろな考え方が載っていて、後期の失語症の授業の準備にもなるし。また、読み返したいです。