温泉をよむ (講談社現代新書)

  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062880886

作品紹介・あらすじ

日本人にとって温泉とはなにか。それは癒しと憩いの場であり、明日への活力を養う場であると同時に、非日常的な時空間に身を置き、文字通りの「再生」を願う場所でもありました。
古代人は熱い湯が大地から噴き出すことに恐れおののき、これに神格を認めました。また、医療の発達していない時代にあっては、薬石効なく医者から匙を投げられたものたちが最後の望みを託して杖をひく場でもありました。近世に至れば歓楽の場ともなり、また科学的に温泉を理解しようとする動きも出てきます。

近代になって温泉を「観光地」「保養地」として理解しようとする人びとは、それまでの信仰や民俗が雑多に、重層的に存在する温泉地のありかたを「旧来の陋習」として排斥していきます。その一方で、インテリとよばれる若者たちによって温泉は「青春の煩悶」と結びついた特権的な場所として表象され、やがてそれは文学名所として観光的に「消費」されていくことになります。

本書は温泉が日本文化においていかに重要な存在であるかを多角的に明らかにしていきます。

感想・レビュー・書評

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  • ¨温泉という伝統文化¨の発展と継承のために。新しい日常の実現に向け今こそ考えたい。

    火山国日本、当然に多くの湯が噴出しており温泉大国。本書は温泉に関する七つの学問分野から、温泉のモノ、コト、トコロについて解説。

    2010年刊行の本書は「日本温泉文化研究会」という学術研究会の会員が分担して執筆したもの。

    単に観光スポットとして1泊するだけの温泉でなく、古代からの温泉の歴史、文化、宗教的な役割や民俗学そして文学上の温泉まで、幅広いテーマをそれぞれの専門家が語っている。

    例えば温泉文化。本来の温泉は自然湧出。現代のように掘削する前は源泉はずっと貴重。多くの古湯では源泉は神として祀られている。今は源泉にそこまで荘厳なものを求めることはほとんどないだろう。

    湯治の時代と現在を単純に比較するわけにはいかないが、温泉特に古湯についてもっと由緒を探究してみたいと本書を読んでつくづくと感じる。

    個々のテーマそれぞれ限られた紙面のため気になるところで終わってしまうのがやや難。そこまで追求するのは厳しいのかもしれないが。

    ネットで調べたところ今も本会は活動中、会の活動に注目しつつ次回作にも期待したい。

  • 日本の温泉の歴史、文化、地理、医療、文学、そういった観点から見る。
    日本全国の特色と歴史ある温泉街についての歴史を知ることができた。

  • 日本の温泉文化を、民俗学・文学・歴史学・医学等々の専門分野から読み解いていく。ありそうでなかった一冊。そして必要な一冊。ただ、これをおもしろく読めるのは、日本の温泉地をけっこうな数巡り、それぞれの温泉や温泉地をそれなりにイメージできるような人に限られるように思う。ちなみに私はおもしろく読みました。

  • 2014/9/7読了。

  • 本来の温泉、湯治の視点から書かれていて、歴史、文化からに視点でも書かれている。観光的なものではなく、新鮮だ。

  • ≪目次≫
    第1章   湯の底の記憶―温泉の歴史学
    第2章   再生と変身―温泉の宗教学
    第3章   「湯治」の実態を探る―温泉の医史学
    第4章   効き目はいったいどれくらい?―温泉の医学
    第5章   来た、見た、浸った―温泉の博物学
    第6章   湯の力、人びとの暮らし―温泉の民俗学
    第7章   漱石、川端、賢治―温泉の文学

    ≪内容≫
    「日本温泉文化研究会」なる組織のメンバーが綴った、温泉の入らない魅力の書。第3章あたりは、ハンセン病の絡みがあり、ちょっと読むのがつらかったが、あとはなかなか面白かった。
    メンバーにとって、温泉の文化が廃れ、単なる「宿泊場所」に成り下がった温泉の魅力を再認識して欲しいらしい。

  • 日本人にとっての温泉を、外面からではなく内面=泉源から見つめ、描き出すことを目指した秀作だと言える。

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