- Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062881746
作品紹介・あらすじ
古代ギリシャ哲学からアダム・スミス、完全競争論までその思想の源流をたどる。
感想・レビュー・書評
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過労と国際競争力の議論はなぜ水掛け論になるのか
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かつて、評者の父はこのようなことを言ったことがある。
「『競争が進めば淘汰され、ついには企業が1つしか残らなくなる』と大学時代の先生が言ってた」と。
しかし、現実はそうはならない。一般的な知識を備えていれば誰もが疑問をもつものだが、そもそもその講義を行った教授にも問題があるのは否めない。
しかし、根本的に何か分からないモヤモヤしたものを覚えている。
本書は 競争 という言葉に対して、”負けないようにする”=competition と ”勝とうとする”=emulation という2つの意味を置き、経済と哲学からアプローチした一冊である。
答えを求めようとするなら読者は満足しないであろう。しかし、著者のアプローチから「こういう考えもあるのか!」と考えさせられるし、競争だけに限らず、水掛け論となる議論は非常に多い。
「○○の議論はウソ」等の煽り立てる書籍が氾濫する中、議論のそもそもの概念の捉え方が不安定では不充分であろう。
我々は議論の対象となる概念を捉えたうえでの基軸が求められている と本書を通して考えたのは評者の飛躍した考えであろうか? -
競争を巡る議論の錯綜の原因を、競争における「エミュレーション」と「コンペティション」の二側面の混同と捉え、アダム・スミスやその思想的背景となっているギリシア古典哲学の考えを踏まえて分析していく。説明が分かりやすく、参考文献も充実した良い新書。
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最近、評判が悪いという「競争」について、完全競争論の検討、アダム・スミスの再読、古代ギリシャ哲学での議論等をふまえて検討している。現代の経済学の分野では、競争観が複数あり、それが「負けないようする」競争観コンペティションと「勝とうとする」競争観エミュレーションだとしている。このあたりの議論での経済と哲学の間に橋を架けたいとの著者の熱意は、良く伝わってくる。コンペティションを新しい競争観としてお勧めのようだが、しかし、これを競争そのものを嫌っている日本人を治療するための処方箋にするには難しいだろう。
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アダム・スミスの「道徳感情論」と「国富論」を参考に競争の概念について紐解いていく本。全体的に内容が非常に難解でほとんど理解できなかったため退屈であった。本書では上記2作品に出てくる競争という意味の単語である「エミュレーション(勝とうとする)」と「コンペティション(負けないようにする)」についてどうゆう意図で使い分けられているかを考察し、アダム・スミスの思考の変遷を説いた。