- Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062901581
作品紹介・あらすじ
近代日本文学において独特の位置を占める「私小説」は、現代に至るまで、脈々と息づいている。文芸評論家・中村光夫により精選された、文学史を飾る作家十五人の珠玉の「私小説」の競演。
感想・レビュー・書評
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田山花袋「少女病」を収録しているので読む。ロリコンとストーカー気質のある男性の通勤風景を描いた小説で、なかなか面白い。
志賀直哉「城崎にて」は十数年ぶりの再読だが、死への親近感がテーマで、こんなに虚無的な作品だったとは知らなかった。
他に印象的だったのは、
妻子を捨てて女と駆け落ち、上京した嘉村磯多「崖の下」
戦時中の釣り人を観察した梅崎春生「突堤にて」
死んだ友人から鯉をもらった井伏鱒二「鯉」
家族とのやり取りが楽しい尾崎一雄「虫のいろいろ」
夭逝した彫刻家との交流を描いた上林暁「ブロンズの首」
助手の速記者との不倫を描いた和田芳恵「接木の台」
など。
(おそらく)戦後の作品になると途端に読みやすくなる。太宰治も十数年ぶりに読んだが、案外悪筆で、自分の外見を気にする様がうかがえる。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
梅崎春生の「突堤にて」読んだけど、あまりピンとこなかった。『怠惰の美徳』に収められた「防波堤」のほうが好き。「防波堤」は、最後に主人公が虚無から脱するところに惹かれたんだと思う。
それ以外の短編もあまりピンとこないものが多かった。ただ、近松秋江「黒髪」の最後、女の底知れなさのようなものにゾっとした。 -
近松秋江『黒髪』を読みたくて借りた。男の人ってどこかに「美女に騙されたい願望」を持っているものなのかしら?
「へ~、これも私小説なんだ」というものもあったけれど、全体的に内容があまり好きになれないものが多い。私小説ってよく愛人と病気が登場するけど、題材他になかったのかな?昔の小説家って、小説のネタを作るためにあえて愛人作ってたんじゃ…と邪推してしまう。
田山花袋『少女病』最高に気持ち悪い。が、ラストが衝撃だった。
太宰治『富嶽百景』太宰は嫌いだけど、この小説は好きなんだなぁ。でも太宰ってやっぱり変な男だ、と読むたびに思う。
井上靖『セキセイインコ』この名作選の中では一番好き。スズメの群れに紛れこんだセキセイインコ、あなたにはどう見える? -
私小説、と聞くとやはり興味はそそられるが、読んでいくうちに、筆者たちが「自分がいかにひどい人間か」を人目にさらすことで、ある種の快感を得ているマゾヒスト集団に思えてきた。