- Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062921480
作品紹介・あらすじ
明朝第三代、永楽帝。甥である建文帝から皇位を簒奪し、執拗なまでに粛清と殺戮を繰り返し、歴史を書き換えて政敵が存在した事実まで消し去ろうとした破格の皇帝。その執念と権勢はとどまるところを知らず、中華の威光のもと朝貢国六〇余をかぞえる「華夷秩序」を築き上げた。それは前近代東アジアを律しつづけた中華の"世界システム"であった。
感想・レビュー・書評
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壇上寛"永楽帝"を読む。
明の三代皇帝の評伝。元末の混乱期、のち明朝を起こす太祖朱元璋の立身から語り起こし、制度や社会情勢にも丁寧に触れられています。
永楽帝は太祖朱元璋の四男で、本来は皇帝になれるような身分ではありませんでしたが、皇太子である長兄の死後を継いだその息子、二代皇帝の建文帝の隙を突いて実力で帝位に就いています。
公式の記録に見られる永楽帝の苦悩、また都合よく史書の記述を変えていくさま。勝者が歴史を作る、でありつつも、断片資料や内容の矛盾から改竄の跡は透けて見えてしまいます。
◯彼は即位の当初から、ぬぐいきれない過去を背負わされていた。彼の一生はそれとの闘いであった。彼は衆目が一致するところの偉大な皇帝にならねばならず、事実、彼はそのために苦闘し、そしてやり遂げる。この点だけを論じて見ても、彼が並の皇帝でなかったことは明らかである。
◯永楽時代に編纂された官撰書のなかでは、総じて三人の兄たちに対する評価が低い。低いどころか、指導者としては失格の烙印が押されている。それは燕王が皇帝になるべくしてなったことを、暗黙のうちに読者に了解させるためである。そこではありもしない事柄が、あたかも事実のように語られ、燕王を主役とする舞台が繰り広げられる。詳細をみるコメント0件をすべて表示