- Amazon.co.jp ・本 (624ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062921626
作品紹介・あらすじ
朝鮮民主主義人民共和国。その建国の父とされる金日成の生涯を跡付けた朝鮮研究の最重要古典。満州抗日戦争を戦った英雄は、ソ連の代理人として果てしない党内抗争をも勝ち抜いた。その粛清の歴史は西側・ソ連・中国の三方面を相手に立ち回る国家的苦悩に彩られていた。"北朝鮮"とはなにか?答えは金日成の歴史のなかにある。
感想・レビュー・書評
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【要約】
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【ノート】
・図書館の講談社アラート
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[素顔の「首領」]積み重ねられたベールにより、実態の把握が非常に困難になってしまった金日成という人物を、数多くの一次資料などを用いて冷静に改めて歴史の中に位置付けようとした労作です。著者は、ソウルを経て米国で朝鮮に関する研究を続けた徐大粛。訳者は、『朝鮮半島の国際関係』などの翻訳も手がけられている林茂。原題は、『Kim Il Sung: The North Korean Leader』。
公開されている情報量が少なく、ともすれば誤謬ばかりが目についてしまいかねない中で、ここまで学術的かつ客観的に金日成という人物を捉えていることにまず感銘を覚えました。金日成の歩みが北朝鮮のそれと不可分であることを踏まえれば、朝鮮半島問題に関心のある人にはぜひオススメしたい作品です。執筆からかなりの時間は経過していますが、今日においても引き続き手に取る価値が十二分にある古典の域にある作品なのではないでしょうか。
〜主体思想は抽象的な観念を哲学的に表現したものでないことは明らかである。むしろ主体思想は、北朝鮮の人民および金日成の経験にこそ深く根を下ろしている。主体思想とは基本的には自立を志向する北朝鮮の努力そのものである。〜
純粋に読んで正解☆5つ -
本書の記述は、金日成がまだ生存している1994年の段階で終わっている。故に、それ以降の変化や周辺諸国との紛争については一切記述がないが、本書が第一級の北朝鮮に関する基礎的資料であることは些かも揺るがない。文庫版で600ページ近くの大著であるが、国内の権力闘争の様や、諸外国との紛争や交渉の経緯などが詳らかに記されており、一気の読める。徒に金日成を悪役にすること無く、逆に彼がいなければ(経緯や正当性、後年の評価は別として)、民族の独立と建国が為されなかったこと、1950年の朝鮮戦争を含めて、極めて流動的だった周辺の国際情勢の中、脆弱な権力基盤しか持たないながらも、国家運営をしてきた手腕や実力を、無駄に貶めること無く記述されていることに、著者の知性を感じることが出来た。
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金日成の抗日パルチザン時代から1980頃までを、ソヴィエトや日本の資料、さらには北朝鮮の資料にもあたって、かなり詳しく書かれている
原著はかなり昔なので、時代を追うにつれしりすぼみになってしまっているが、パルチザン時代から建国後の権力闘争についての頃までの詳しさは、未だに最も素晴らしい出来だと思う