流線形の考古学 速度・身体・会社・国家 (講談社学術文庫)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062924726

作品紹介・あらすじ

20世紀前半の時代精神を象徴する言葉「流線形」。自動車・列車から家電、ダイエット、社会進化論まで、問題圏の拡がりを分析する。

感想・レビュー・書評

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  • 第46回アワヒニビブリオバトル「まだ」で発表された本です。
    チャンプ本
    2018.12.04

  • 本来は空気力学の概念である「流線形」が一種の流行語として、大衆文化に取り込まれ、本来の文脈から見れば、とんでもないような「意味」を獲得していく過程を考察する。アメリカ、ドイツ、日本の例が取り上げられているが、殊に興味深いのはアメリカの例。ちなみに背表紙に書かれている惹句は、ほとんどアメリカのことである。
    アメリカで起きたことは、流体の抵抗を最小化する流線形が、すべての無駄や抵抗を排除する合理主義のアイコンに、さらには優生思想に繋がっていく過程が鳥瞰される。流線形とファスナーの関係だとか、優れたものは美しいからと、美人コンテストに優生思想家が参加していたなんて、エピソードは興味深い。
    小さなモノクロだが、図版が多いのはやはり楽しい。

  • アメリカ、ドイツ、日本で戦前に「流線型」がどのようなイメージをもって大衆に見られていたかをテーマとした研究。
    1934年の「エアフロー」自動車から、流線型は「高機能」のイメージからさらに「障害の排除」というイメージで大衆に捉えられてゆく。
    アメリカでは高効率や高機能のシンボルとして人間の体型や社会組織の構造にまでイメージを広げ、
    ドイツでは自然がもたらす有機的な形態の精華として自然と融合している民族としての誇りとなり、
    日本では機能が軽視されてゆき「なんだかすごいもの」というイメージのみが一人歩きしだす。

    この著作では
     アメリカ:流線型は「障害の排除」を経て(人種的を含む)優生学に結びついていった
     ドイツ:流線型は自然からもたらされものとして技術と自然を融和させようとした
    と描かれ、それぞれの国と流線型の発展方向が現在の多くの人がもっているであろう
    イメージとねじれている点が興味深かった。

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著者プロフィール

1954年生まれ。早稲田大学教育学部教授。専門は表象文化論、ドイツ文化論。著書に『暮らしのテクノロジー』『ポピュラーサイエンスの時代』『サラリーマン誕生物語』『OL誕生物語』など、訳書に『DJカルチャー』(ポーシャルト)などがある。

「2017年 『流線形の考古学 速度・身体・会社・国家』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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