- Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062938112
作品紹介・あらすじ
「頼子が死んだ」。十七歳の愛娘を殺された父親は、通り魔事件で片づけようとする警察に疑念を抱き、ひそかに犯人をつきとめて刺殺、自らは死を選ぶ――という手記を残していた。しかし、手記を読んだ名探偵法月綸太郎が真相解明に乗り出すと、驚愕の展開が。著者の転機となった記念碑的作品。長く心に残る傑作!
感想・レビュー・書評
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確かに意表を突いた展開、というかどんでん返しではあろうが、話が長い。後書きを読んで納得したが、元々が中編で会った小説を加筆したらしい。前半の”遺書”から真実を導いていくという過程は面白いのだが、とにかく文章が無駄が多いし、キャラも魅力が無いだけでなく、不要な設定・登場人物が多い。何より文章がまだるっこしくて退屈だった。
これは中編のままの方が面白かったのでは? -
☆4.0
「頼子は死んだ」から始まる娘を亡くした父親の手記。
それには、娘の死は殺人なのに警察の捜査はどうも様子がおかしく、まともにされているとは思えないことや、自らの手で犯人を見つけ出し殺すことを決めていた心情が書かれていた。
父親の西村悠史はある男を殺害し、その後すぐに自殺を図ったが、辛くも一命をとりとめ昏睡状態であるという。
推理作家の法月綸太郎の元へ、この一連の事件の再調査の依頼が舞い込んだ。
手記を読み事件について調べ始めた綸太郎は、この事件に隠された真実と真っ向から向き合わされることとなる。
この作品は最初に手記が配置されたことが肝要だったと思う。
読者がどんな立ち位置で事件を見るか、何を前提に思考するかを上手く作品に乗せている。
頼子は本当はどんな娘なのか。誰が何を考えて、本当は何を望んでいたのか。
すべての真実が見えたとき、決定的な敗北感に打ちのめされた。
これはちょっともう一度読まねばならんと、ページを捲った。
読み返したときの各所に漂うエゴイズムがこちらの心を苛んでくる。
二度目は全然精読じゃなかったけど、苛まれすぎてちょっと吐き気がするくらいだった。
なのにタイトルは『頼子のために』なんだよなぁ。
これしかないってタイトルなのでは。
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ミステリーというのは様々な形が色々あると思うんです。今回は復讐も重なってきますね。 家族を殺されたら自分だったらどうしますか? 復讐は基本的にありですか?ミステリーって色々面白いですよね。 '233/27 '2311/20
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傑作だと思います。
犯罪悲劇的な作品ですが、それが苦手な方は読後感がよろしくないかもですね……。
私はフィクションにおける犯罪悲劇で好きな作品が多いので、高評価です。
元ネタ(小ネタですが)であろうものを少し。
作風→ニコラス・ブレイク『野獣死すべし』のロス・マクドナルド風味(これには法月さん自身の言及もありました)。
手記について→ニコラス・ブレイク『野獣死すべし』の手記の最終日の翌日から始まっていますね。
「フェイル・セイフ作戦」→ジョン・ル・カレ『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ』の「ウィッチクラフト作戦」「テスティファイ作戦」のオマージュだと思います。
『頼子のために』→ニコラス・ブレイクは本名がセシル・デイ=ルイスで、英国の推理小説作家であると同時に桂冠詩人でもありましたが、彼が詩人のために書いた本の献辞が「鈴子のために」です。
元ネタをわかるために小説を読んでいるわけではありませんが、わかるとニヤッとできる程度の意味はあると思います。作品の面白さとは関係ありませんが、ミステリ好きの遊び心なんだと思います。
もっとオマージュがありそうですが……。 -
愛する娘を殺された父親が復讐を果たしたうえで自殺を図るがギリギリ救われる
父親の手記でその背景が分かるが内容の一部に疑問を抱いた綸太郎は調査に乗り出す
タイトルは手記のだよなぁ
ただ真相は‥
事故の原因はそういうことか
頼子の立場になったら‥
真相が悲しすぎる
綸太郎が調査に乗り出さなかったら結末は変わったんだろうけど父親は一生苦しむことになったんだろうな
綸太郎の考えが正しかったら母親の生活は変わらないか
でも意に沿わないのがもう1人いるのか -
ハードボイルド風味が苦手だった。登場するどの女性の描き方にも違和感を覚えてしまった。
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面白かった。
解説にもあるが、ある一家の一人娘の死の真相に迫るというミステリ要素のみならず、政治家などの有力者にも屈せず行動する硬派な側面、あるいは人間という存在の複雑さやそれが抱える業を主題に組み入れていることによって、たんにミステリを読み終わった時とは異なる読後感がある。
トリックに感心した、という部分もなくはないが、小説を読んだな、という感じの方が強い。
星の数は多くはないけど、やっぱり法月綸太郎は良いなと思った。