屋上の君 (KCx)

著者 :
  • 講談社
3.82
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本棚登録 : 142
感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・マンガ (168ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784063806403

作品紹介・あらすじ

『VIVO!』(マッグガーデン刊)の瀬川藤子、待望の最新コミックス!!
少女の秘密は、屋上に眠る。自分探しの学園ファンタジー!!
転入して3ヵ月。ひとりぼっちの小学生・春菜は、“かなえ”というお姉さんに出会う。「名前しか分からない」と話す彼女は、ずっと小学校の屋上にいる幽霊だった。彼女の本当の姿とは。屋上で待ち続けるものとは。春菜&おじちゃんの凸凹コンビで、かなえの正体を探す旅が始まった!!

『VIVO!』(マッグガーデン刊)の瀬川藤子、待望の最新コミックス!! 少女の秘密は、屋上に眠る。自分探しの学園ファンタジー!!転入して3ヵ月。ひとりぼっちの小学生・春菜は、“かなえ”というお姉さんに出会う。「名前しか分からない」と話す彼女は、ずっと小学校の屋上にいる幽霊だった。彼女の本当の姿とは。屋上で待ち続けるものとは。春菜&おじちゃんの凸凹コンビで、かなえの正体を探す旅が始まった!!

感想・レビュー・書評

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  • VIVO!から引き続いての作者買い。
    表題作より、同時収録の「きずのあと」の方が印象的。
    でもレビューの長さは逆転。

    「屋上の君」
    新しい小学校に転校したばかりの春菜は、
    ちょっとしたことからクラスで孤立してしまった。
    週に一度のお弁当の日、ひとりでお弁当を食べていた屋上で
    制服姿の少女かなえちゃんに出会う。
    自分の名前以外思い出せないかなえちゃんを、
    おじちゃんと共になんとか助けようとするのだが。

    不安定な10代において、孤独や不安を抱いた子どもが
    一緒にいてくれる人がいる安心感を求めるのはある意味自然だろう。
    傷つき悩む心に、慰めの言葉は心地よい。
    でも、それではただ単に辛い現実から目を背けるだけ。
    校長先生はかなえちゃんに向かって言う、
    「あなたの言葉にはまるで中身がない」。
    「泣いている赤ん坊をあやすのと同じ」。
    強い人間ならそこから自分の進むべき道を見つけ出すことができるが、
    そうでない人間はそのぬるま湯に依存しきってしまう。
    それは成長途中の子どもにとって麻薬のように魅力的で、
    危険な存在なのだ。

    当然、春菜にはそこまでの理解はない。
    春菜の今後のために姿を消したかなえちゃんだが、
    このとき春菜によって救われたとも言えると思う。
    これまで孤独を癒す存在だったかなえちゃんは、
    ただ一人孤独を癒されない存在でもあった。
    ただ助けてくれた友達を助けたいという一心で
    「一緒に行こう」と手を差し述べた春菜は、
    かなえちゃんにとって唯一の救いだったのではないかと思う。

    しかし、全体を通しておじちゃんや校長先生の気持ちの方に
    共感する部分が多くて、春菜の真っ直ぐな糾弾が胸に痛い。
    「大人はああだこうだと言い訳だけして何もしない」
    それだけ社会を知ったということなのだろうけど。

    「きずのあと」
    VIVO!のときから思っていたけど、この作者は本当に
    人間のずるさ、それによって傷ついた心を描くのが上手い。
    この話はとにかく、たまきが叫ぶシーンに全て持って行かれた。

    「120%あんたが悪くても 私は絶対に味方でいるから言いなさい」

    子どもが一番必要とするものは、絶対的な味方だと思う。
    たとえ自分が悪くて最終的に叱られたとしても、
    「絶対に見捨てられない」「味方でいてもらえる」安心感が
    外の社会と関わるためのベースとなるからだ。
    清太は、これで確かな足場を一つ与えてもらえた。
    きっとこの後少しずつ、他の人にも馴染んでいけるだろう。

    このシーンは、相手の親御さんもカッコ良かった。
    実は自分の子どもが嘘をついていたと知って、
    あの場ですぐにゲンコツ一発&謝罪できるのはすごい。
    いいお母さんなんだろうな。

    こんな話自体、現実にもよく聞く話だ。
    それについて思うのは、
    子どもは大人の話をよく聞いているもので。
    かつ、無邪気な悪意で弱者を攻撃するもので。
    子どもの喧嘩の発端をたどっていくと、
    口さがない大人の悪口や噂話だったなんてことは少なくない。
    大人社会の構図は、簡単に子ども社会に伝播する。

    ところで最後のハッピーエンドはプロポーズ…?
    ちょっとやっつけ&コマ押し込み感もあるけど、
    さりげなくサラっと流せて良いかも。
    あの3人がだんだん家族になっていくのも、
    後日談のコマ一つでいいので見てみたい。

  • 完全なる作者買い。
    瀬川さんのお話が大好きな人なら買って損なし。
    表題も良かったが、もう一つのお話の方が私は好き。
    子供を守れる大人でありたい。
    こういう、何気なく救える大人でありたい。

    やっぱり瀬川先生のお話好きだー。

  • さらに続いて瀬川藤子さん作品を…。

    ほっこりとかほのぼのとか、
    そういうところがクローズアップされがちですけど、
    結構「ゆがんだ顔」のインパクトが強い
    作家さんだなぁと感じます。

    悔しさだとか寂しさだとか叶わぬ思いとか、
    それらが詰まった「表情の歪み」。
    そこに感じる「生の熱さ」が好きですw。

  • 表題作も良かったですが最後の読切が良かったです。
    表題作は屋上に取り残された幽霊の話。きっと最後は中学校に連れて行けたんでしょうね。主人公が子供の強さで良かったです。大人はやりもせずあーだこーだって!まずやれよ!て。そういう気持ちはきっと持ってたなぁ。でもまた第二第三のかなえちゃんは生まれ続けるんだと思います。抑え付ける大人がいる限り。そういう理不尽さを知った時、その先どういう人になっていくのかが決まるのかもしれませんね。
    読切。大人からしたら何の気なしに言った言葉でも小さな子にとっては親が自分以外を信じるってのは傷つきますよね。その小さな傷を覚えたまま大人になった主人公と、虐待を受けてる子供の話。行動の善悪と、信じる信じないってのは別の話なんだよなぁと。相手の子の親がまともな人で良かったけど、今ってどうなんだろうなーとかふと現実を思ったりしました。岩ちゃんがとっても良かったです。ああいう器の大きな人に憧れる。自分が子供の頃にして欲しかった事をしてあげる主人公にも。3人で家族になるといいですね!

  • 小学校の屋上に行くといつもいる「かなえちゃん」。
    ささいなきっかけからクラスで孤立してしまった春菜は、かなえに会うために屋上に足をはこぶ。
    「かなえちゃん」は自分のことがわからないという。
    春菜は叔父さん(ニート)に相談にのってもらい、かなえの正体をつきとめようとする。

    途中でユーレイものと気づいたけれど、春菜の性格もあって全然怖くないです。あっけらかんと陽気な、でも優しい子。
    かなえちゃんの正体もラストも予想外でした(笑)



    で。同時収録の「きずのあと」がすっごいよかった~。
    主人公が自分と近い歳ってのもあるし、小さいころに心に負ったちいさな傷についてのお話でもあるし、傷を負った子どもとどう向き合っていくかという話でもある。
    ケンカのくだりは本当によかった。
    間違ったことや悪いことをしない子どもなんていないけど、それに大人がどう向き合うべきか。本当に難しいけれど、ここで主人公が言った言葉がすべてだと思った。

  • 久しぶりに、漫画に横っ面を吹っ飛ばされた
    やっぱり、私、瀬川藤子先生の漫画、大好物の一つだ、そう自信を持って言えちゃうわ
    自分でも上手く説明できないんだけど、漫画そのものが感動とか共感、そう言うものをひっくるめたパワー? を持ってると思っているんですが、この『屋上の君』はそれが他のと比べると、格段に高い気がするんですよね
    温かみのある素朴で優しい画がそれを生み出しているのか、もしくは、読み手をストレートに叱咤激励してくれるストーリーが理由なのか、または、飾らない熱の籠もった愛ある台詞が心の芯を震動させるのか受け取る側の私の能力値が低い所為で、ハッキリさせられないんですが、ともかく、トンでもなく体重の乗ったハイキックを繰り出してきて、読み手をKOしようとしてきます
    この漫画が凄いー少女漫画部門―で上位に入って欲しい、仮に私が選べる立場なら迷わない作品です
    漫画読みに、「この漫画に出逢えて良かった」と思わせてくれる漫画は、実際にはホント少ないから、ただただ嬉しい、瀬川藤子先生が漫画を描いてくれている事が

  • 作家買い(「VIVO!」の作者さんだったので)。表題作より「きずあと」の方が心に残る(というか”傷が疼く”)。清太の泣いた顔に涙が出てしまった。傷の内容は違うし、もっと些細なことでも傷は傷として残る(たまきのように時々思い出してブルーになる)。子供でも、大人になって出来た傷でもずっと残る。なので清太にとってガンちゃんは勿論だけど、たまきと出会えたことは本当に良かった。ガンちゃんの存在に救われたと思っていたけど、ガンちゃんも救われているんだなと思う。最後の台詞(ガンちゃん頑張った!?)の通りになったところ、もっと仲良くなった2人(たまきと清太)もそう少し読みたかったかな? 巧みないじめっ子は大抵そのまま大人になる。大人になれば、大人の世界ではこんな馬鹿げたことはなくなると思ったが狡猾な子供はそのまま大人になる(気がする)。大人の嫉妬や妬み、噓ばかりの噂話、騙し合い等々は本当に怖い(より狡猾になるだけに)。社会に出た直後のショックは期待があった分とても大きかったし傷になった。諦め癖にも納得(多分それもあって相談はされても自分では出来ない。真剣な内容であればあるほど)。

  • どうかな~。
    VIVOほどインパクトはないし、神様みたいにほんわり優しくもない。
    でもそこに「もしかして、あるんじゃないかなぁ」って思えてしまうような日常があって、う~ん、って考えさせられる。
    綺麗にまとまってるし、素敵なストーリーなんだけれど、う~ん。

  • こどもうまいなー。

  • 2013/08/09購入・08/21読了。

    【屋上の君】一生懸命「かなえ」の正体を探る、真っ直ぐな春菜の姿が良かった。

    【きずのあと】たまきの心境がよく分かる。もし親になる機会があれば、子どものことはずっと信じるようにしたい。

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著者プロフィール

■瀬川藤子・・・・・・ 代表作に「VIVO!」「お嫁さんは神様です。」「ハシレジロー」など。

「2019年 『コノマチキネマ ②』 で使われていた紹介文から引用しています。」

瀬川藤子の作品

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