日本人のための声がよくなる「舌力」のつくり方 声のプロが教える正しい「舌の強化法」 (ブルーバックス)

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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065020425

作品紹介・あらすじ

声のコンプレックスの元凶は「舌力」不足だった! 舌の筋力が足りない「低位舌」「前位舌」は、発声・滑舌を阻害するだけでなく、顎の変形を引き起こし、姿勢、呼吸、運動能力、知的活動にまで悪影響をおよぼす。美しく印象のよい日本語を話すためにも必須の「舌力」が身につけば、見た目も若返り、職場や学校での人間関係もよくなる! 簡単にできて効果絶大の「舌力」トレーニングを実践して、明日からの人生を変えてみよう!

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    篠原さなえ
    東京都生まれ。駒澤短期大学国文科卒業。TOKYO FMのDJとしてデビュー後、料理番組の司会、レポーター、アニメの声優など幅広い芸能活動を行う。スポーツ中継を得意とし、高校野球・大学野球・駅伝などで女性の実況アナウンサーの先駆けとなる一方、取材記事執筆、野球番組の制作などでもスポーツに携わる。その後も長年、TVやCMのナレーションなど声の仕事をする傍ら、声のプロに対する個人指導も行い、誰もが普通にしゃべれる日本語の、誰も知らない謎に挑み続けている

    https://www.invisalign.co.jp/

    また、舌が緩むと、顔も緩み、緩んだところに脂肪がたまり、唇が分厚くなったり、二重顎になったりします。そのような人は口元全体がだらんと緩むので、覇気がなく、暗く見えてしまいます。  これらが、舌力不足がもたらす大きな問題です。

    ただし、そのためには、舌の筋力をつけることを阻害する、ある大きなハードルを克服できていなくてはなりません。それが、口をポカンと開けたままの、いわゆる「ポカン口」です。

    最近の子供たちを見ると、私が子供だった時代より、口を開きっぱなしにしている「ポカン口」の子がとても多くなったように感じます。食べ物が柔らかくなって、舌や顎をちゃんと使わなくなってきたからではないかと考えていますが、周りの大人たちが、あまり子供に注意しなくなったということもあるかもしれません。

    ポカン口や低位舌の人は、姿勢が悪くなります。姿勢をいつも注意される子供は、口が開いている確率が高いので大人の方はしっかり注意してあげてください(姿勢が悪くなる理由はのちほど、低位舌のところで説明します。

    最近、若い人たちの間では、口臭を気にして口臭の専門外来に通う方も増えているそうです。実は口臭は、舌苔のほかに、唾液が減ることによっても起こります。唾液には殺菌効果があるのですが、唾液が減ると、口内に雑菌が繁殖しやすくなるからです。そこで病院では、唾液腺を刺激して唾液の分泌量を増やすよう指導したりしているそうです。しかし、口呼吸をしている場合は、刺激によって一瞬は唾液が出ても、口が開けっぱなしなわけですからすぐに乾いてしまいます。つまり口臭も、口呼吸が原因であることが多いの
    です。

     また、口呼吸によって乾燥するのは、口内だけではありません。喉全体も乾燥します。すると、線毛の働きが鈍くなり、風邪をひきやすくなります。さらには、アレルギー体質になりやすいことも最近、わかってきたそうです。  口を閉じて、きちんと鼻呼吸をしてさえいれば、口が乾かないだけでなく、鼻の中の粘膜が雑菌を吸着して捨て去ってくれますし、適度に湿度を保った空気を送り込んでくれます。ちなみに鼻は1日に1~1.5リットルもの鼻水を出して、粘膜を潤しつづけているそうです。つまり鼻は「加湿器機能付き空気清浄機」なのです。人間の体はよくできています。

    ポカン口の人は、もさっとした覇気のない声になる確率がとても高くなります。そのような声では、子供時代からいろいろな場面で苦労するでしょう。当然、大人になって声優やアナウンサーをめざそうとすると大変な困難をともないますし、普通のビジネスマンとしても滑舌が悪く覇気がなければ、「あの人の話は聞きとりにくい」と印象が悪くなり、仕事に支障をきたします。もちろん就職のときも、なにかと不利になることもあるでしょう。

     また、ポカン口のまま大人になると、次第に唇が分厚くなり、口角が垂れていわゆる「不平不満顔」(図1‐2)になったり、猫背やスマホ首、肩こり、体のゆがみ、イビキ、果ては睡眠時無呼吸症候群へつながったりしていきます。しかも、年をとればとるほど、治すのは大変になります。

     何よりの問題は、口呼吸やポカン口の人がせっかくそれを治しても、低位舌の状態では、舌とともに顎も下がるので、すぐに元に戻ってしまうことです。したがって医学界でもいま、低位舌については大いに注目しているようです。

    なぜ、そのようなことが起こるのか。それは、舌を鍛え、舌の後ろまでしっかり上顎に持ち上げる筋力がつくと、顔や首、インナーマッスルなど、いろいろな筋肉が連動して体の芯がぐっと持ち上がり、必然的に姿勢がよくなるからです。姿勢がよくなれば、当然、発声は改善されます。  ちなみに前著を書いた頃の私は、体が硬く、力が入りすぎて喉声になってしまう人には、脱力のレッスンをし、それでもどうしても治らない人には「アレクサンダー・テクニーク」などの身体調整方法を習ったほうがいい、などとアドバイスを送っていました。なぜなら、これらの問題は、結局は姿勢の悪さからくるものなので、姿勢が悪くなる根本原因を治してもらうしかないと思っていたからです。  しかしいまでは、脱力のレッスンすら、ほとんどしていません。そのぐらい、ほとんどの人が前位舌を治すことで姿勢がよくなり、姿勢がよくなることで無駄な力が抜け、喉声などの発声が改善されるからです。

    舌が後ろまで上顎にべったりつくようになると、自然に首にパワーが入り、前のめりの姿勢が改善されます。

     試しに、次のような実験をやってみましょう。まず、軽く姿勢を正して、口幅は鼻の幅ぐらいに狭めた状態(図2‐5)で、舌をぐっと上顎にはりつけてください。ちゃんといちばん奥の歯のあたりまでつけるように意識してくださいね。そのまま、本やスマホを机の上に置いて、画面を見てください。ある程度、姿勢を保ったままで、なおかつ舌も後ろまで上顎にしっかりついていれば、頭はある程度以上は下がらず、力を入れて無理に下げようとすると、首が痛かったり、息が苦しくなったりするはずです(頭が楽にどこまでも下がっちゃう……という人は、本人に自覚がなくても、実は「舌が後ろまでついていない」という人です。

     次に、その正しい姿勢のまま舌の力を抜いて、舌をダランと下げてみましょう。あえてポカン口のようにするのです。その状態で頭を下げてスマホを見てください。今度は、何の力を入れなくても、頭がびっくりするほどガクンと下がりますよね。  舌による支えがなくなると、このように頭が垂れてしまうのです。そして、この状態でものを見るのが当たり前になってしまうと、だんだん、首の骨が変形していきます。これが「ストレートネック」あるいは「スマホ首」などといわれている状態です。

    頭が落ちれば首も曲がりますから、当然、喉が締めつけられ、声も出にくくなります。それでも無理に出そうとすれば、喉声が悪化します。また、姿勢が悪いと、呼吸も浅くなりますから、大きく、しっかり通る声が出にくくなります。

    実際、元気にはきはきしゃべる人は姿勢もよく、ぼそぼそ小さい声でしゃべる人は猫背気味、という印象がありますよね。そうなる理由は、結局、舌力の有無なのです。

     また、ストレートネック、スマホ首を放っておくと、自律神経が不調になり、めまい、手足のしびれ、吐き気などを起こす原因となります。最悪の場合、自律神経鬱になると指摘する医師もいるほどです。

    逆に、正しい腹式呼吸ができず、胸式呼吸や肩式呼吸になっている人は、呼吸が浅くなりますから、体内に取り込まれる酸素量が少なくなります。すると血流が悪くなり、当然のように、肥満、肩こり、頭痛、めまい、肌荒れなど、いろいろな問題が起こりやすくなるというわけです。また、低位舌を放置していると、むせやすくなり、ひどい場合は、嚥下障害を起こします。嚥下障害は誤飲性肺炎の原因になります。

    ただ、舌小帯を切ってくれるような口腔外科的な歯科医の多くは、舌小帯と無呼吸症候群との因果関係は、あまり気にしていないようです。

    「レッスンを始めてから、体重は変わらないのに“やせた?”とよく聞かれるようになりました」 「顎のラインがシュッとしてきました!」 「みんなに、口の形が変わったと言われました」 「ほうれい線が、薄くなってきたような気がします」 「首にくっきり出ていた横線が、少し取れてきました」 「たらこ唇がだいぶ薄くなってきました。

    最近、体はスレンダーなのに、顎の下にお肉がついている若い人が増えた気がしますが、若い方でしたら2~3週間も舌の筋トレを頑張れば、二重顎はだいぶすっきりしてきました。

     また、舌の筋力が足りないと姿勢が悪くなり、発声時に変に力が入って喉声になるわけですが、こういう人も呼気が口の外にスッと抜けにくくなっているので、たいてい鼻に空気が抜けてしまっています。  どちらにせよ、舌の筋力不足、とくに舌の後方の筋力不足である前位舌こそが、「鼻に抜けすぎ」の鼻声になってしまう最大の要因なのです。

     だから滑舌よくしゃべれる人は、唇も小さく薄くなってきます。実際、ベテランのアナウンサーで、分厚い唇の人を見たことがありません。私の生徒さんたちも、滑舌のために舌の筋トレと唇の筋トレをしてもらうと、数ヵ月で分厚かった唇が薄くなる人が続出します。日本語の正しい音をつくる舌の使い方をしていれば、唇は厚くならないのです。いまでは私は、写真を見ただけで、その人が滑舌にどんな問題を抱えているのか、わかるようになってきました。そのぐらい、舌の筋力は顔に表れてしまうということです。

     ところで、前著『「魅せる声」のつくり方』を上梓したときもそうでしたが、このような手術についての情報を紹介すると、「手術などしないで何とかなる方法が知ります。

    のに」「生まれたときから鼻が悪いが、それで不自由してこなかったのだからこのままでいい」などという反応を、ときどきいただきます。  しかし、最初に話を聞いたときは「別に何の問題もない」などとおっしゃっていた方でも、よくよく聞いてみると「そういえば子供の頃から、運動していてもすぐ苦しくなっていた」「鼻声と指摘されたことが何度かあった」「小学校の頃から、朝起きたとき痰が絡まってドロッとした白いものが出てくることがあった」などと思い出される方は意外なくらい多いのです。つまり、実は何かと不自由なことがあったのに、「このぐらいは誰にでもある、あたりまえのこと」と思い込んでいて、気がついていなかっただけということです。ですから、「普通に生活できているように感じているけど、もしかしたら他の人より苦しい思いを強いられているのだろうか?」と自分の体に聞いてみるのは大事なことです。

    実際、鼻がつまっていると、呼吸量が足りなくなるので、走るのはしんどいし、集中力にも欠け、勉強や仕事の能率も落ちます。しかも、どうしても口呼吸になるので、舌の筋力がつかないことによるさまざまな弊害が出てきます。もちろん年をとればとるほど、その弊害は大きくなります。逆に、早く気がつけば、それだけ問題の発生も抑えられるわけです。

     生徒さんの一人に、「声がもごもごして響かない。ずっと痰が絡んでしゃべりにくい。しかし、いくつかの耳鼻咽喉科で鼻や声帯を診てもらっても異常がないと言われて悩んでいる」という女性アナウンサーがいました。そこで、喉の専門医で徹底的に調べてもらったところ、原因の一つとして「上咽頭炎」がありそう、と診断されたそうです。まさにアデノイドのあるあたりです。彼女の場合、さすがにアデノイドは退化してもうなかったようですが、アデノイドが退化していようがいまいが、上咽頭は外部からの菌やウイルスを受けとめて戦ってくれる第一関門であることには変わりないのです。つまり、炎症を起こしやすい場所ということです。

     なお、「鼻うがい」と、口でする「普通のうがい」はセットでおこなってください。上咽頭は喉と鼻のどちらからも届きにくく、逆にいえばどちらからも少し届く場所です。なので、口うがいもやったほうが、より効果が期待できます。また、普通のうがいは「あー」と言いながらやる人がほとんどだと思いますが、「あー」と「おー」を交互に言うようにしましょう。「あー」は全体に、「おー」はより深く、上咽頭のとば口にまで届くからです。また、うがい薬を使ったうがいは、刺激が強すぎて、かえって喉を痛めることもありますので、1日に3~4回程度にとどめてください。塩水での鼻うがいはそこまで神経質にならなくてもいいと思いますが、塩でも多少の肌荒れを起こしますから、極端にやりすぎないようにしましょう。

     ところで、「上咽頭炎」と診断されたその女性アナウンサーは、塩化亜鉛という消毒薬をしみ込ませた綿棒を、上咽頭に直接塗布する「Bスポット治療」という方法を続けて、ずいぶん楽になったそうです。最初はものすごく痛くて、「1回目がいちばん強烈で、地獄を見るような痛みが24時間続きました」とのことでしたが……。  そんな痛い目にあわないためにも、ふだんから鼻呼吸を意識して、ちょっとおかしいと思ったら、鼻うがいをすることを習い性にしてほしいと思います。

     すると、程度が重かった人も軽かった人もみなさん、「本当に切ってよかった」「舌が自由に動くようになって、滑舌も姿勢もよくなった」「声の響きが明らかに変わった」などと口をそろえて言うのです。また、唇や顎の形も、1ヵ月もしない間に、ほぼすべての方に、明らかな変化が認められました。  そのため、最近は考えが変わってきました。もちろん「よい医師を見つける」ことが前提ですが、そのうえであれば、切ってしまったほうが圧倒的に楽ではないかと感じるようになってきているのです。  たとえば、とあるアナウンサーは、最初はいくらお勧めしても怖がってなかなか踏み切れなかったのですが、いざ切ってみると「言いにくい音が減り、羽根がはえたみたいにしゃべりやすくなった。顔周りもほっそりしてきた。自分が言うのもなんだけれど、プロだったら絶対切ったほうがいいと思う」と、180度考えが変わりました。そのくらい、本人にも自覚できる効果が大きかったということです。  その手術は、みなさんが「本当にあっという間で、気がついたらもう縫う段階になっていた」と口をそろえるくらい、ごく短時間ですむ簡単なものです。また、私の信頼している名医の場合、痛みを感じるのは舌に麻酔注射をする数秒のみで、人によっては「虫歯治療のときに歯茎に打たれる麻酔注射のほうが数倍痛い」というほど、軽い痛みのようです。もちろん、痛みに弱い人もいますから、感じ方は千差万別でしょう。

     ちなみに、前述した無呼吸症候群になってしまった女性アナウンサーは、この先生のところでたった2針ですんでしまいました。つまり、ほかの歯科医では切ってもらえなかった可能性が大きいのです。それでも本人にとっては、「この舌小帯のせいで無呼吸症候群になっていたことがはっきりした! 切ったら呼吸が明らかに変わった」と感じるぐらい、切ったことによる効果は絶大でした。そんなわけで私は、声のプロ志向で舌小帯に異常がある人には、とりあえず歯科医に相談に行ってもらっています。多少でも異常があれば、切ることの効果はこのように明らかです。

     たとえば、舌小帯を切ったタレントがよく、「サ行は言いやすくなったけど、ラ行が言えなくなった」などと言っているのを聞きますが、それは、いままでの怠けたラ行の言い方で言おうとしているから、きれいに発音できないのです。日本語のラ行の音は、舌の前方だけをはじいてつくりますので、舌の後ろの両側をぐっと上げて、安定させないとうまくいきません。しかし舌小帯がある人は、舌小帯が舌を引っ張って自然に後ろを安定させていたので、比較的簡単にラ行が言えてしまう人が多いのです(もちろん、本来のラ行と比べればちょっと不自然な音になりますよ)。しかし、この自動の引っ張りがなくなったら、今度は自力で舌を固定しなければなりません。つまり、舌力アップが必要になってきます。

     結局、この方は大学病院で舌小帯を切ってもらいましたが、ここまで強く舌小帯が残っていれば、舌の先端が上の歯の裏についても、どの医師も文句なく切ってくれます。

    そして切ったあとは、驚くほど舌が前に出るようになり、上にも持ち上げられるようになりました(図4‐7)。そして「いままで舌先がいかに動いていなかったか」を感じるようになったそうです。そりゃそうですよね。これだけの可動域の違いですから。滑舌に効果があったのはもちろんですが、この手術で間違いなく、健康寿命も延びたはずです。

     このように舌小帯異常も、鼻の問題と同じく、医師によって手術すべきかどうかなどの判断がだいぶ違うようです。「滑舌と舌小帯は関係ない」と言い切る医師もいますが、構音のプロから言わせていただければ、大いに関係します。また、無呼吸症候群の改善のために舌小帯の手術が必要な場合も必ずあると思います。舌小帯切離手術を担当されている医師の方々には、柔軟に対応していただくことを心から願ってやみません。

    なお、舌小帯切離手術は保険が適用され、薬代を含めても3000円程度です。保険適用ということは、国がちゃんと必要を認めている手術だということです。

    インビザライン矯正

    実はこの訓練、舌力アップはもちろんですが、二重顎の改善にも、即効性があります。二重顎がかなり目立ってきてしまった男性が、ちょっと頑張ってこの運動を朝晩3セットずつ続けたところ、タプタプだった顎が、たった2週間で驚くほどすっきりしました。その変化を傍で見ていた奥様が、「私もやろうかしら」と言い出したぐらい変わったのです。

     こんな人がいました。声のプロをめざして地元で専門学校に通ったあと、東京に出てきてやはり声の関係の学校に何校か通い、学びつづけていたという当時25歳の男性です。 「なぜだかわからないけれど、どこの学校でも、先生から何となく嫌われているのを感じていた」というのです。そればかりか友人からも、「何を言ってるかわからない」「暗い」とよく言われ、コミュニケーションにも少し苦手意識をもっていたようです。  そんなわけで、私のところにいらっしゃったのですが、舌の筋トレと滑舌レッスンを始めて半年ほどで、「何を言っているかわからない」のほうはずいぶん改善されました。  しかし、「暗い」「なんとなく大人から嫌われる」のほうは、残念ながら改善されません。  実は私には最初から「何が原因なのか」、心当たりがありました。でも、すぐにその話をしても、滑舌の問題だと思い込んでいる本人は腑に落ちないだろうと思い、滑舌がある程度改善されるのを待って、こう聞いてみたのです。 「いままでに、大人の人から『はい』をちゃんと言いなさい、って言われたことなかった?」  すると案の定、「たしかにそんなことをときどき言われていた」との答えが返ってきました。いったい、何が問題だったのでしょうか。それについてはあとで説明するとして、まずは、その人に取り組んでいただいた「はい改善計画」の結果を先にご報告します。  2~3ヵ月ほど、ふだんから徹底的に「はい」を意識しつづけてくれたおかげで、あるときから突然、それまでのふてくされたような嫌な感じの「はい」は、さわやかでとても感じのいい「はい」に変わりました。正直なところ、これまでの人生であたりまえに発していた音を、25歳を過ぎて変えるのはなかなか大変だろうと思っていました。

    これに対して、日本語は高低アクセントですから、音楽においては、少し難しい状況になります。事実、昔の童謡や、昭和の歌謡曲全盛時代の作詞家・作曲家は、「日本語は音楽に乗せにくい」と頭を悩ませていたそうです。なぜなら、高低のアクセントと、音階が喧嘩をしてしまうからです。そこで、すべては無理でも、歌詞のなかのキーポイントとなる言葉だけはなるべくアクセントに合わせた音にしようと、四苦八苦していたということです。いまは、そこまで悩む人は少ないかもしれませんが、それでも、実際にこんな混乱が起こっています。

     ほかにも、ある日本人のオペラ歌手が、「英語で歌うより、日本語のほうが歌いにくい」と話しているのを聞いたことがあります。きっと「日本語に気持ちを乗せようとしても、アクセントが逆になってしまうことがあるから乗せにくい」といったこともあるのではないかと思います。ミュージカルなどでも、アクセントと音階の喧嘩によって、聴いていてちょっとした違和感をおぼえることがよくあります。

    「揺らぎ」とはデータ量の多さである  実は「揺らぎ」によって情感を入れるのは、歌や踊りも同じです。  歌でいえば、たとえ音程通りに正確に歌っても、ビブラートや「こぶし」「しゃくり」などがなければ、つまらない歌、あまりうまくない歌に聞こえてしまいます。音符には書かれていない、いろいろな「揺らぎ」を使ってこそ、歌が「うまい」と聞こえるものだからです。  もちろん、しゃべるときにビブラートや「しゃくり」など入れたら嫌がられてしまいますが、音の高低の「揺らぎ」に情感をかき立てられるという意味では同じなのです。  ちなみに、大人数で歌う合唱団は、音程通りに歌いますし、ビブラートはともかく、「こぶし」や「しゃくり」などはまず使いません。それなのに、なぜすばらしい歌声に聞こえるかというと、人それぞれの「声の高低」という「雑味」が加わることで、その高低が「揺らぎ」の効果をあげているからなのです。  歌だけではなく、踊りも同じです。ロボットダンスのような、わざとぎくしゃくした動きを楽しむものもありますが、基本的にダンスは、優雅にしなやかに流れるもののほうを、私たち人間は「美しい」と感じます。  


    フィギュアスケートなども同じです。ただまっすぐ滑るのでなく、しゃがんだり伸び上がったりしながら滑れば優雅に生き生きと見えますし、指先まで柔らかくうねるように腕を持ち上げれば、やさしい動きに感じられます。どんなに手足が長く、みごとなスタイルをしていても、直線的にバンバンと腕を投げ出すような動きでは、ちっとも美しくは見えません。  では、動きや音に「揺らぎ」という表現が入ると、感情豊かに感じられるのはなぜでしょうか。  それは結局のところ、データ量の多さということではないかと考えられます。

     しかし、歌舞伎の節回しこそ実は、日本語の「揺らぎ」をかなり正確にトレースしているものなのです。実際に、TVのナレーションなどを超スローにして聞いてみると、ほとんど歌舞伎にしか聞こえないものがたくさんあります。そのくらい、日本語の普通の音に近いのです。  つまり、子供が自然に日本語の特性(高低の「揺らぎ」)を感じとって、歌うように友だちを呼んでいたように、昔の人も、自然に日本語の特性を感じとって、歌舞伎という舞台芸能として完成させたというわけです。なんだか、すごいですよね。

  • ポカン口、低位舌、前位舌になっている人は舌力が不足しているので、舌力をつけましょうというのが本書の内容。

    舌力をつけることによって、発声や滑舌の改善だけでなく、イビキや歯並びの改善など多くの効果があるとのこと。
    具体的な舌力をつけるトレーニングは第6章で紹介されている。

  • 何故舌トレが必要であるかを重点的に書いてある本
    舌トレの部分はかなり短い印象的

  • 舌力の必要性を理解した上、
    セルフチェック方法、および(課題があった場合の)解決方法が具体的に記載。

    ここは、
    課題への該当者以外、あまり重要度の高くない情報。

    最後の章にて、
    舌力のトレーニング方法がまとめられている。

    僕にとっては、
    セルフチェックと最終章だけが必要な情報だった。

  • なないろ日和で紹介!
    簡単にできて効果絶大の「舌力」トレーニング方法が解る一冊。

  • 請求記号 S809.2-ブル-B2042(新書)
    資料番号 300621075

    新潟医療福祉大学図書館 蔵書検索(OPAC)
    https://library.nuhw.ac.jp/opac/opac_details/?reqCode=frombib&lang=0&amode=11&opkey=B158834347628912&bibid=1000123752&start=1&bbinfo_disp=1

  • 「良い声」について、舌の筋力の観点から説明している。
    具体的なトレーニングは巻末20ページ程度で、その他は著者の理論の解説。
    自分は舌小帯長めでかみ合わせも良くないので、絶望したのだが、紹介されているストレッチやトレーニングとりあえずこなせた。どうなんだろう。

    良い声で滑舌良く話すには舌の筋力が必要で、口を閉じて何もしていない状態では下が上顎についているのが正常だという言う。舌の筋肉の発達の妨げになるのは以下の事項。
    ・あごを閉じない「ポカン口」
    ・舌の裏側の舌小帯が長い(本来成長するにつれて咀嚼によって切れるものらしい)
    ・歯並び
    これらは親の注意も大きく影響する。

    紹介されているトレーニングは、ストローを舌の上側と上口の間にはさみ、舌の力で押しつぶすというもの。

  • 舌以外にも、鼻、歯並び等の多様な器官が声を構成している。喉だけを鍛えても意味がない。

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