老いた家 衰えぬ街 住まいを終活する (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065141663

作品紹介・あらすじ

大死亡時代の到来とともに、注目され続ける「空き家問題」。2033年には約3戸に1戸が空き家となる。すでに戸建ての4軒に1軒が「空き家予備軍」となっているのだ。

そんなこれからの日本で、最重要課題となってくるのが「住まいの終活」である。子供世代にとっては、実家を相続した瞬間から、空き家問題は始まっている。親世代にとっては、自分の子供に、所有する家や土地の何をどのように伝えておけばよいのか? 

特別付録「書き込み式 住まいの終活(エンディング)ノート」に書き込みながら、あなたの住まいについて真剣に考えてみよう。


<主な内容>
第1章 国民病としての「問題先送り」症候群
1・「問題先送り空き家」の実態
2・誰のものかわからない戸建て、分譲マンション
3・「空き家予備軍」は大量に控えている

第2章 他人事では済まされない相続放棄
1・相続放棄というサイレントキラー
2・相続放棄空き家への対応には限界がある
3・老いた分譲マンションと相続放棄
4・不動産のままで国庫に帰属できるのか?

第3章 世界でも見られる人口減少という病
1・アメリカ・ドイツ・韓国の人口減少都市
2・デトロイト市ランドバンクの取り組み
3・人口減少都市の土地利用転換に向けて

第4章 空き家を救う支援の現場から
1・住まいのトリアージとは何か
2・空き家バンクの最前線―島根県江津市の尽力
3・売り手支援の最前線―マッチングサイトの仕組み
4・空き家解体支援の最前線―和歌山県田辺市の先進性

第5章 さあ、「住まいの終活」を始めよう
1・住まいの終活、その手順
2・民間市場で流通性がある戸建ての選択肢
3・民間市場で流通性が低い戸建ての選択肢
4・分譲マンションの選択肢
5・「住まいの終活」への支援策の提言

特別付録 書き込み式「住まいの終活ノート」

感想・レビュー・書評

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  • 不動産に関する基礎資料を揃えておくことが重要。

  • SDGs|目標11 住み続けられる まちづくりを|

    【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/729359

  • いわゆる「空き家問題」の概要と現状、さらに将来の課題と既に行われている対策について広範かつ
    整然と記述されており大変わかりやすく面白く読めた。

    戸建て・マンション問わず家が余っているのになぜ新築住宅の建設は止まらないのかずっと不思議だったが、放棄された家の始末をきちんとしないと誰も勝手に処分出来ず’死んだ土地’が増え、新しい転入希望者を受け入れたくても受け入れられない、だから家を作って’生きた土地’を無理くり作る、という負のサイクルが見えてきた。

    が、この手法だといずれ空き家だらけでどうにもならなくなる事は自明。

    問題は深刻だが、かといって個人が出来る事はさして多くなく、せめて自分が元気に動けるうちに家のことははっきりさせなきゃな、という心積もりは得られた。同世代の30・40代で心当たりがある人は今のうちに読んでおくべき。


    1刷
    2021.4.25

  • 前著「老いる家 崩れる街」の続編的な書籍ですが、住宅過剰社会の問題に(どちらかといえば)マクロにフォーカスされていた前著よりも、「空き家の適切な取り扱い方法」というテーマに限定された内容でした。

    街に点在する空き家は、相続・税制度といった構造的な背景から生まれていきますが、空き家の増加は街の崩壊(防犯・防災・治安悪化ほか、エリア価値の低下)につながりかねません。そうした空き家を、うまく住宅市場や再活用に活かすための事例紹介がされています。
    特に、全米で展開されているランドバンクは注目に値すると感じましたが、そのための法制度的な環境整備がまだ日本は追いついていません。

    最後に、住宅を所有する当事者に向けた「住まいの終活」の方法が紹介されており、ここが著者の最大のメッセージなのだと感じました。

  • 他人事じゃない、それに尽きる…(`・ω・´)

  • 私に取って、目新しい話は無い。

  • ●相続放棄からの逃げ遅れ
    ●親が認知症になってしまったら、後見人は財産を処分するのに、裁判所の許可が必要になり売るのは難しい。そのため他界するまで実家は空き家のまま放置せざるを得なくなるのです。
    ●家族信託はどうか?
    将来、認知症になるかどうかもわからないのに、親の貯金額を聞き出す必要がある。司法書士に支払う報酬は、信託財産の1%、契約書や登記費用などで最低でも60万円以上かかります。家族信託は親が認知症になったからでは利用できないので、成年後見人報酬を払うことを考えると決して高くないですよと言われた。
    ●「所有者不明土地問題研究会」(増田寛也)の推計によると、所有者不明の土地面積は九州の面積を上回る規模にも上っていることが明らかになりました。
    ●相続未登記の不動産の問題点。相続人に海外勤務の人がいた場合、印鑑証明の発行することができないため、その国の在外公館に出向いてもらい、領事の面前で署名をしてもらわなければならない。
    ●所有者不明の不動産は、分譲マンションにも発生している。
    ●中国四国地方の戸建ての空き家予備軍率の高い市町村に今治市が入っている。
    ●不動産の場合は、相続放棄をした後でも、次の引継ぎ手が現れるまでは、相続財産の管理をしなければならない、「管理義務」がつきまとうのです。また、家庭裁判所から「先の順位の相続人が相続放棄をしたので、相続権があなたに回ってきました」といった通知をしてくれるわけではありません。したがって相続放棄をする人は、他の相続人にもきちんと状況を知らせて、自分が放棄を選択した理由を伝え、他の相続人が正確な情報をもとに放棄をするかどうか決められるようにすることが重要になります。
    ★負の動産の押し付け合いである相続放棄をめぐって、新たな「争続」が勃発するのである。
    ●相続人全員が相続放棄をしたからといってすぐ国のものになるわけではありません。相続財産管理人制度に従った手続きを経て初めて国庫に帰属する。この相続財産管理人を選任されないケースが多く、義務化の検討が望まれている。
    ●アメリカには、「ランドバンク」と言う組織を設立して、空き家対策をしていると姿が見られます。地域の荒廃を減少させ、放置された空き家や空き地家、差し押さえ物件等を、利用される物件に転換し、課税対象の状態に戻すことを目的とした公的な機関です。
    ●今後人口の世帯数も減少していく日本では、相続した住宅を住宅として使う需要が減少していくため、デトロイトのように、菜園やコミュニティーガーデンといったオープンスペース型の土地利用への転換について、今後から検討しておく必要があります。
    ●空き家ビジネス。空き家を探している人は買いたいと言うよりも買いたいと言う人が多く、逆に所有者は売りたい人が多い。賃貸にすると、入居者が居座ってしまうのではないかと抵抗がある人も多い。そこで、空き家のサブリースにも取り組んでいる。東京などの大都市分では、空き家を借り上げて、リノベーション後に、対するサブリース事業を手がける事業者も出てきている。
    ●市外の所有者向けに、固定資産税の納税通知書に、空き家バンクの案内を同封する等の取り組み。

  • 特定空家や所有者不明の不動産、相続放棄、これらが将来の市町村の公共投資、税負担増をもたらす。
    救急車が1/3しか稼働しないとか、ゴミ収集の回数減など、連邦破産法が適用されたデトロイトの実例なんかは興味深い。

    将来、まちを「使える」ようにするための「素地」をつくる。
    そのために個人ができることは「住まいの終活」をすること。
    負動産の押し付け合いにならないように、対策が必要だ。

  • 著者の前作と併せて、家の購入を考え始めた身としては非常に参考になる。
    また、実家は地方にあり、私も兄弟も大都市に住んでいるので、そういった意味でも今後を考える参考になった。
    これから人口が減っていく日本で、土地をいかに効率よく使っていくか。
    何にせよ、現状を変化させるにあたっての住民の合意形成ってとても難しいなあと思う。30年後、日本はどうなっているのか…。

  • 不動産における相続放棄にまつわる諸問題や、海外の空き家バンクといった事例も興味深く読んだ。

    日本の各自治体がこの空き家問題にどう対処していくのか。

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著者プロフィール

兵庫県生まれ。1996年、大阪大学大学院環境工学専攻修士課程修了後、ゼネコンにて開発計画業務等に従事。その後、東京大学大学院都市工学専攻博士課程に入学、2002年、博士号(工学)取得。東京大学先端科学技術研究センター特任助手、同大学大学院都市工学専攻非常勤講師を経て、2007年より東洋大学理工学部建築学科准教授。2015年より同教授。共著に『白熱講義 これからの日本に都市計画は必要ですか』(学芸出版社)、『都市計画とまちづくりがわかる本』(彰国社)がある。

「2016年 『老いる家 崩れる街 住宅過剰社会の末路』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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