ニムロッド

著者 :
  • 講談社
3.14
  • (35)
  • (110)
  • (207)
  • (73)
  • (22)
本棚登録 : 1646
感想 : 226
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (146ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065143476

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 町屋良平さんの「1R1分34秒」とともに、第160回芥川龍之介賞(2019/01/16)を授賞した。
    仮想通貨(ビットコイン)をテーマにした話。作者(上田岳弘)は、前作(新しい順に「塔と重力」「異郷の友人」(第154回芥川賞候補)「私の恋人」「太陽・惑星」(「惑星」が第152回芥川賞候補))までより「広く読まれるように書いた」とのことで、仮想通貨のしくみが理解できるように丁寧に説明されている。文学作品として、そのような説明的な記載がかなりの量混じることを批判する読者もいるようだが、わかってもらうことを前提に目新しい素材を扱う以上、やむないと思う。
    分かりやすさにふった分、尖鋭さが落ちている点は、正直、残念。

  • 「人類が積み重ねてきた営為がもう終わってしまうかもしれないことへの愛惜が滲む作品」(選考委員:奥泉光)

    だそうです!


    ビットコインについてちょっと詳しくなれる。
    意外に読みやすい。

  • 完全大衆感覚の自分は毎回芥川賞を読んで「よくわからない」の感想で終わるけど、今回も勿論結局よくわからないけど、でも何となく嫌いじゃない。
    文体と、登場人物達の人間臭さへのいとおしさと、あとニムロッドの語感。
    あと、東方洋上に去りたいとある瞬間に誰もが思ってる。

  • 芥川賞受賞作品。情報化が進んで高度な意思決定をAIが代替する社会において、ダメな飛行機は私達ではないかとたびたび不安になる世の中です。いま私達が社会に対して有用であると、例えばコミュニケーション能力が高いとかファシリテーション能力があるとか英語ができるとか、社会に対して便益があると主張し続けなければいけない世の中になっているのだけどそうしたことの漠然とした不安感の中で、少し不完全な社会の営為からやや外れた主人公達の存在に愛情を感じる作品です。

  • 芥川賞にしては読みやすかった。
    小説部分がおもしろかった。
    僕はニムロッド、人間の王。
    なんかの演劇のセリフっぽい。
    ダメな飛行機コレクション、興味深い。
    どうしてひとは完全じゃないものに魅かれるのかな?

    女性のキャラはイマイチわかんない人だった。

    淡々と進んだ感じだったけど、三人が出会ったところへんからドドドっと終わりにむかった感じ。
    あの2人の関係は予想ついたけど、
    桜花に乗っていくシーンは綺麗だな、と思った。
    綺麗、と感じるのがいいのか、悪いのか、は分からないけれど。

    ビットコインは殆ど名前しかしらないんだが、
    お札を数える時に、これってでもほんとうはただの紙なんだよなあ、
    火つけたら燃えるんだよなあっと、よく思うのだが、
    皆が価値あると認めるものが価値をもつ、ということの
    ふしぎ。

  • 芥川賞受賞作ということで手に取りました。

    ビットコインとPCのサーバーを守る主人公の中本哲史、
    小説家志望だった同僚の荷室仁、
    過去のトラウマを持ったキャリアウーマンの恋人の田久保紀子の間で繰り広げられる物語。

    仮想通貨やIT関係のことがそれ程詳しくないので
    頻繁に専門用語が出てくるので内容を理解するのに大変でした。

    ビットコイン、ITの仕事も目の前で見えるものでないので、
    リアリティーが無いので更に無機質に思えてしまいます。

    主人公の無意識に涙が出ているのというのが
    よく出てきますが、これはこのような無機質の中にいるから
    感情が上手く表に出せない心の叫びだと思えてしまいました。
    唯一恋人とのやり取りがリアリティーを持っていましたが、
    それもどこか淡々としていて掴み所がなく、
    その後の行方が分からないのが気になりました。

    仮想通貨、ITなどが中心になるということは
    現代社会の象徴というものであるので、
    それを上手く表現されているのかとも思います。
    この無機質なものが今の時代でもあり、
    この先にあるものはバベルの塔のようになるのか、
    だめになった飛行機のようになってしまうのかを
    問われているのかと思いました。

    あまり登場人物の心情が伝わらなく、
    心に響くようなものが無かったのが少し残念です。
    読解力が乏しいのもあり、
    やはり純文学は難しく奥深いものだと
    痛感させられた作品でした。

  • 仮想通貨と小説と「嫌なこと」
    彼の小説は女性がとてもさらりとして色っぽくて素敵だ

  • ナカモトサトシ と言う名前が主人公であることが、
    この物語のモチーフなのだろう。
    ビットコインの発明者。現実には、誰だかわからない
    日本人の名前をした 開発者。
    仮想通貨を作った男が 仮想であると言う暗示。

    現実から、仮想の世界に 通貨のマイニングをするものも
    仮想の中に生きようとする。
    ナカモトの左目から 意味がなく流れる涙。
    悲しいとか、絶望とかでなく 意味の持たない涙。

    ナカモトの セックすパートナーとして登場する
    ガイシ証券会社の 田久保紀子。
    セックスをしても、実体のない営み。
    存在が限りなくなく、薄い関係。
    セックスさえも、意味を持たない営み。

    ナカモトの涙を見ながら、小説を紡ぐのをやめたニムロッド。
    飛ばない飛行機のコレクターであり
    高い塔を懸命に作る。その屋上に 飛ばない飛行機をのせる。
    確かに 「桜花」なんて、飛行機なのか 爆弾なのかわからない。
    そんな 飛行機に乗って 太陽に向かって飛ぶニムロッド。
    絶望に向かうのか、希望に向かうのか。
    もう帰ることはできない片道飛行。

    ナカモトは、意味のない言葉を 掘り続け、
    代替可能な、意味を持たない人生を 掘り続ける。
    それは、決して 無駄とは言えないが、無駄なのだ。

  • ビットコインを切り口にして、人間を人間たらしめるものは何かを問う。

    たとえ失敗すれども、無用の長物と言われようとも、何かを追い求める姿こそ、
    人が人である理由なのでしょう。

  • 現代人に向けた実存主義小説。

全226件中 61 - 70件を表示

著者プロフィール

作家

「2023年 『ベスト・エッセイ2023』 で使われていた紹介文から引用しています。」

上田岳弘の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
ヴィクトール・E...
塩田 武士
辻村深月
島本 理生
九段 理江
米澤 穂信
佐藤 正午
恩田 陸
劉 慈欣
森見 登美彦
真藤 順丈
村田 沙耶香
宮下奈都
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×