- Amazon.co.jp ・本 (407ページ)
- / ISBN・EAN: 9784065183465
作品紹介・あらすじ
幕末の不平等条約から大日本帝国憲法の制定、そして敗戦を経て日本国憲法の公布、サンフランシスコ平和条約による主権回復まで、成立の過程、運用の紆余曲折、思想と解釈の変遷を膨大な史料を繙き明らかにし、統一国家としての日本における立憲の歴史を体系立ててたどる。近代国家へのあゆみのなかで、この国は何を必要とし、どこへ向かおうとしてきたのか? 全国民必読の書。
感想・レビュー・書評
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大石眞『日本憲法史(第二版)』(有斐閣、2005年)の講談社学術文庫版である。概ね全400頁のうち8割が大日本帝国憲法、2割が日本国憲法に当てられ、前者の制定過程と運用に圧倒的な頁数が費やされている。それもそのはず、明治政府にとって憲法制定とは一国の法秩序をまるごと創設する大事業だったのである。その目的は、日本が近代的法治国家であることを中外に宣明し、旧幕府が締結した不平等条約の改正を諸外国に認めさせるためであった。きっかけは条約改正かもしれないが、法秩序は独自の論理でその存在を要求する。本書では、憲法典および基本的な憲法附属法を「基本法典」と総称し、憲法典(帝国憲法・皇室典範)だけでなく、憲法附属法(議院法、選挙法、会計法、貴族院令、会計検査院法、内閣官制、裁判所構成法、行政裁判法、訴願法など)の制定過程についても詳細に追う。しかし、このようにして成立した憲法秩序は、起草者が実現しようとした程度の立憲主義さえ喪失して敗戦を迎えるのである。
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全体としては、明治憲法の制定過程が史料に即して詳しく、かつ手堅く叙述されており、基本書として相応しいと思われる。
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「日本拳法史」とはなっているが、全400頁ほどのうち、現行憲法部分はわずか70頁ほど、したがって内容的には明治憲法史、しかもその制定史部分が多い。加えて著者の興味が議院法という特殊な方面であることから、看板から期待するものとは少し違った。ただ、明治憲法制定史に関しては、憲法付属法令まで含めていることから、豊富な資料が引用されていて、素材の原典を探索する際には有用かも知れない。
ただ、既存論文をつなぎ合わせたようなところがあって、決して読みやすくはない。
著者は京都大学の憲法教授であったので、てっきり京都学派の人かと思っていたら東北大学出身で、学位も東北大学で取得していたのは意外だった。現行憲法の最後の方で、千葉大学の尾吹善人氏の名前が突然出てくるので驚いたが、それは東北大学つながりで、千葉大学にも同時期に在籍していたことみたい。
議会制度への興味も、清宮四郎・小嶋和司からの流れなのかなと思ってしまった。
端々で垣間見える著者の立場はなかなか微妙なところがあって、なんとなくこの本も自民党主導の憲法調査会用資料という臭いも感じる。
国会図書館の日本国憲法サイトの参考文献にも掲載されていた。