法廷遊戯

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 3313
感想 : 360
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  • Amazon.co.jp ・本 (362ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065184479

感想・レビュー・書評

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  • ロースクールに通う清義と美鈴のもとに届いた過去の告発文。またロースクールで行われる無辜ゲーム、と内容盛りだくさん。法律用語が難しいながらも説明が丁寧で分かりやすかった。第2部は展開がどうなるのか全く最後まで読めなかった。なんだか最後が悲しい終わり方で引きずる…。

  • 世間は狭いのね、と思わせる?作品。法定物にしたのが良い感じです効いている。

  • メフィスト賞を受賞したというよりも73期の司法修習生が執筆したという振れ込みで関心を持ち、久しぶりに購入し読んでみた。
    前半は、法科大学院生にありがちな、法律論を語った気になりたいだけの表面的な描き方のように思え、中盤含めて残り100頁までは想像の域を出ない結末かと思えたので少々不安であった。
    もっとも、残り100頁で綺麗に伏線も回収した上で、展開としても斜め上をいき、納得の〆を迎えたように思える。
    また、馨の動機としてあった、冤罪者の名誉回復の困難さについては個人的にも関心があり、検察・裁判所・マスコミを絡めとった上での訴訟進行は面白みのある検討であったとも感じた。

    最後に個人的に響いた文章を引用しておく。
    「感情が入り込む余地がない学問は、ただひたすらに学んでいて心地良かった。」(113頁)
    「能力の問題もあったが、僕の中に存在する歪んだ正義の定義が、判事補や検事の職務と相容れないことは明らかだった。自分の信念に従って受任の有無を決定できる弁護士だけが、僕に残された唯一のカードのように思えたのである。」(114頁)

  • てっきり、あらすじを見る限り、ロースクール時代を中心とした物語かと思っていました。
    しかし、この作品は2部に分かれていて、ロースクール時代が第1部で、そして第2部は、時が経ち、ある殺人事件を中心にした物語になっています。所々「この話いる?」と思っていたエピソードが、後になって活かされていることに驚きの連続でした。最終的に全てが繋がっている実感があり、作者の発想力が素晴らしいなと思いました。
    第1部が、正直退屈かなと思っていたら、第2部での殺人事件を皮切りに第1部のエッセンスを加えながら、怒濤の展開になっていくので、色々楽しめました。

    作者が法律に携わっていることもあり、難しい法律用語はあるのですが、噛み砕いて柔らかく解説されています。
    多くの法律用語が飛び交うので、その分リアル感がありました。特に法廷のシーンなどでは、緊迫感が漂っていました。
    次から次へと意外な真相、登場人物たちの隠された真実など登場していくので、最後の最後まで目が離せませんでした。

    鮮やかに伏線が回収されていく分、期待値も上がっていったので、なんとなく最後はざらっと歯の奥に何か残ったような
    感覚があり、うーん・・・と思わず思ってしまいました。

  • 主人公の2人は最初から全然好きになれず(むしろ人間として最低な方だと思うし)、他の登場人物にも一切感情移入できなくて、半分くらいまで読み進めるのにとにかく時間がかかった。

    他人の家族をまるまる壊しておいて、清義はともかく美鈴は最後まで1ミリも反省してないところがモヤモヤした。
    あと、サクのセンセ呼びが生理的に受け付けなくてしんどかった。

  • タイトルの通り裁判を絡めたミステリーで、冤罪により生まれた悲劇をきっかけにした物語。法律要素の強い作品であるが専門的な知識が必要なく、物語の展開も理解しやすかった。
    作中では無辜という言葉が頻出するが、個人的には同害報復という言葉の方が印象に残った。同害報復という考えは復讐を容認するのではなく、対等な罰で納めるという被害者側の寛容であるということは勉強になり、またそこに異常なほどのこだわりを見せていた馨には恐怖も覚えた。
    物語全体として面白かったが、気になった点が2つある。1点目は詐欺を犯してまで大学に行きたいという清義と美鈴の気持ちに同情できなかったことだ。清義の願いを叶えるためにというならまだしも美鈴も一緒に法学部に行くという流れもよくわからなかった。2点目は公平や佐沼の証言は果たして必要だったのかということだ。最後の証拠となる模擬法廷の隠し撮り映像が強すぎて、それだけで無罪が証明できてしまうのではと思ってしまった。

  • 僕も法律がわりと好きで、その理由は感情が入り込む余地が排除されるからだ。感情に流される人間なので、枠組みが明確になるのがありがたい気がするからかもしれない。

    少なくとも僕が携わっていた仕事に民法の知識は役に立った。もしかしたらどんな仕事にも役に立つのかもしれない。

    ただしその知識は卒業した法学部で得たものではなく、公務員試験と就職後の研修で得たものだったのだが。

    読み始めた最初は、最初に出てくるゲームにリアリティが感じられないし、話は暗いしなんだかなと思ったが、だんだんパズルのピースが揃ってくると面白くて、また読んでいて頭に浮かぶ疑問が解決のキーになっていたり、本当によく考えられた構成だと思った。

    著者がこれを書いたのは司法修習生時代だという。
    著者は若いんだな、若くで社会的地位を得たんだなと思われる部分も、少々感じた。

    #読書記録

  • 【最後の1行まで気が抜けない リーガルミステリー】

    法律家を志した三人。一人は弁護士になり、一人は被告人になり、一人は命を失った。謎だけを残して。メフィスト賞受賞作。


    リーガルものは専門用語が多く難しく思われがちだが、本作は法律に疎い読者でもわかり易く描かれていて読みやすい。
    主人公が次々と論破していく様子は、読んでいて気持ちがいい。
    伏線回収と後半にかけての数々のどんでん返しに一気読みだった。

    裁判で人間が人間を裁く神のような行為と問われる罪と罰。
    裁判員制度がある現代だからこそ考えたいテーマだ。



    こんな人におすすめ.ᐟ.ᐟ
    ・どんでん返しが好きなひと
    ・リーガルものが好きなひと
    ・東野圭吾 【白夜行】が好きなひと

  • 途中、どこに向かうのか分からなくなったり、
    内容的に読むのがしんどくなる部分もあったけど、
    全体的にすごく面白かった。

    特に、最後の最後まで意外な結末になっていて、
    終盤は一気に読んでしまった。

    内容的には、
    無罪と冤罪への考えを軸に、
    国内の貧困な子どもや、青少年の犯罪など、
    読みながら考えさせられるものになっている。

    ただ、読み終わった後、なんとなく釈然としない気持ちになった。

  • 法廷サスペンス?特に法廷編に入ってからの展開、巧みに絡んだ事実が明らかになる過程は面白いのだが、主要人物の世界に入りづらと感じるのは何故か。抱えているものを共有できずに、苦しんでいる人物ばかりだから?
    映画になると、面白いストーリーかも知れない。最後まで、結末が分からない展開で。

    主人公は久我清義(きよよし)、底辺ロースクールの最終学年。同学年の織本美鈴(みれい)とは、同じ児童養護施設出身。ロースクールの模擬法廷では、無辜ゲームが行われている。特定の被害を受けた告訴者が、決められたルールに従って、刑罰法規に反する罪を犯した人物を犯人に指定。審判者が抱いた心証と告訴者の指定が一致した場合は、犯人が罰を受ける。そうでなければ、告訴者自身が、罰を受ける。罰は犯した罪が跳ね返る同害報復。毎回、審判者を務めているのは、優等生で既に司法試験に合格している結城馨。

    むこ【無辜】:罪のないこと。また、その人。「辜」は罪の意。

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著者プロフィール

1990年岩手県生まれ。東北大学法学部卒業、同大学法科大学院修了。弁護士(ベリーベスト法律事務所、第一東京弁護士会)。本書で第62回メフィスト賞を受賞し、デビュー。他の著書に、『不可逆少年』『原因において自由な物語』『六法推理』『幻告』がある。

「2023年 『法廷遊戯』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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