「心の哲学」批判序説 (講談社選書メチエ)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065193525

作品紹介・あらすじ

意意識とは何か。いつ、どのように生まれて、何のために存在するのか。
人や動物が生存していくための意識による具体的効果や、その機能とは――?
認知科学、神経科学的の最新成果により、昨今注目を浴びる「心の哲学」を、
あえて、事実性重視の現象学的立場から批判的に検証。
私が「私」を認めるために重要な、「経験する私」の意味、
私の意識の中で「淘汰」され、成長する意識の本質など、
進化論的な視座も踏まえ、「意識の実像」を捉え直す。

目次
第一部 「心の哲学」との対決  

序 可能性の議論への違和感   
第一章 意識は無用か  
第二章 意識の有用性  
第三章 心は物質に宿る──スーパーヴィニエンス──  
第四章 運命を知りえぬことが、自由を私たちに残さないか  
第五章 意識は瞬間ごとに死ぬ?──ひとつの懐疑──    
第六章 意識とは誤解の産物である──消去主義の検討──   
第七章 「物理世界は完結し、心の働きかけを許さない」と言えるのか  

二部 意識は本当はどういうものか

第八章 意識の実像──ふたつの実存とふたつの視覚経路──
第九章 実践的意識が見る世界
結論

感想・レビュー・書評

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  • レヴィナスなどの現象学の研究者である著者が、英語圏の「心の哲学」の議論を批判的に検討し、その問題点を解明している本です。

    著者は、チャーマーズの議論などを参照して、そこに見られる物理世界の因果的閉鎖性のテーゼを批判しています。著者によれば、意識は記憶をはじめとするさまざまな情報を統合・整序する役割をもっており、主体の生存適合性を向上させることから、進化論的に獲得されてきた可能性があると論じています。こうした考えにもとづいて、「哲学的ゾンビ」のような思考実験にもとづいて意識の物質世界への働きかけを否定する立場に対する反論が提出されます。

    そのうえで著者は、「現象的意識から身体行動へ至る道をどう説明するか」という古典的な心身問題をとりあげなおし、メルロ=ポンティの思想を参照しながら、意識にまつわる問題を解き明かすための手がかりを求めます。そこでは、知覚現象は私が積極的に世界へと働きかけることによって引き出した情報であるという見方が提出され、実践との結びつきのなかで知覚をはじめとする意識現象のありかたを考察するという見通しが示されています。

    著者は現象学の立場を標榜していますが、フッサールの主張するような「内在」からいっさいの問題を解き明かそうとする立場に固執するのではなく、現代の自然科学における諸成果を参照するなど、柔軟な立場から意識について考えなおそうとしています。本書では直接言及されてはいませんが、実践との密接なつながりのなかで知覚の役割を考えるという著者の立場は、ギブソンのアフォーダンスの考えかたに通じるところもあるような気がします。

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著者プロフィール

1962年生。京都大学大学院人間・環境学研究科教授。
主要業績:
『態勢の哲学』(勁草書房,2014年)
『「心の哲学」批判序説』(講談社選書メチエ,2020年)

「2023年 『観念説と観念論 イデアの近代哲学史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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