進撃の巨人(32) (講談社コミックス)

著者 :
  • 講談社 (2020年9月9日発売)
4.10
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本棚登録 : 2343
感想 : 73
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  • Amazon.co.jp ・マンガ (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065203224

感想・レビュー・書評

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  • 平成の漫画の象徴(代表作ではない)を、ひとつだけ選べと言われれば、発行数・影響力ともにこれを選ばざるを得ないだろう。今まで17、23巻の時にレビューし、「あと5巻以内に終わるだろう」と言ってしまった。ごめんなさい。令和になっても刊行は続いている。一回でまとめる自信がなくなった。次次回ぐらいに終わる可能性があるが、ここらあたりで一度書いておきたい。

    こういう話で、私の関心は、キャラがどうのこうのという風には向かない。いつも物語の構造に関心が行く。物語は未来譚なのか、過去譚なのか。始原の巨人は何故出現したのか。よって、作者は「何故」これを描き始めたのか?だから、そういうことに関心がない方は以下は読まなくて良いと思う。

    舞台は、小さなパラディ島「閉じられた世界」から大陸含む「開かれた世界」に移った。1900年代ぐらいの文明を保っている。日本みたいな国もある。日本人じゃなくてアズマビトと呼び名が違う。飛行機は開発されたばかりで、連合艦隊が最新鋭の軍隊である。完全パラレルワールドであり、どうやら現代世界の過去譚でも未来譚でもないようだ(私はその可能性も考えていた)。

    どう考えてもエレンの目的は常軌を逸している。エレンの観た未来とは何だったのか?

    32巻の冒頭で繰り広げられる、復讐の連鎖についての「対話」は、非常に象徴的で重要な場面だった。けれども繰り返し予定調和を否定する。それがそのまま現代の平和情勢を反映しているように思える。

    生まれた時から「世界は残酷」だった。油断すると食われてしまう。マーレ人はエルディア人について「世界の火薬庫であり、かつての歴史的災厄をもたらした呪われた人類の巣窟であり、ほとんど人間ではない」と教育している。エリートの少女は、何巻もかけて、実はマーレ人もエルディア人も同じ人間であることに気がつく。それは平成時代から日本人が持っている世界認識の課題かもしれない。一方でエルディア人たちは、仲間内の絆をホントに大切にする。ところが、その仲間内でさえ、大きな裏切りが存在した。いったん仲違いした、それらの仲間たちが32巻でまた共闘を組むのは、思うに、作者の狙いだろう。

    「鬼滅の刃」よりも遥かに複雑なストーリー。二重三重のカラクリ箱を作って結論という中身を見せようとしている。カラクリの鍵を押したり引いたり、行ったり来たりしないと次のステージに行けない。カラクリは読ませるための技術である。わたしは箱の中身が気になる。結論を何処に持ってゆくのか。それを見ないことには、わたしも軽々(けいけい)に評価を下せない。

  • 何のために戦ってるのか。読者としても、自分の正義を問われているような気分になる。何も決められない自分はやはり傍観者でしかないな。

    読了。次へ。

  • 「この島だけに自由をもたらせばそれでいい そんなケチなこと言う仲間はいないだろう」
    このハンジの言葉が好き。人類の自由に命を懸けてきた調査兵団だからこそ、パラディ島以外の人類に不自由をもたらすエレンを止めようとする。それがたとえ勝ち筋が見えないものであっても、負けるから歩みを止めるような組織じゃないんだよね。それにしても、今回ばかりは絶望しかない状況で恐ろしい。

    エレンを止めるために手を組んだハンジとマガト。火を囲んで話し合う中で掘り起こされる過去の罪。マルコを殺したライナーたちに憎しみを向けるジャンの気持ちが痛いほど伝わってくる。ここでマルコが最期に言い遺した「俺達はまだ話し合っていない」が効いてくるのが憎い演出。憎しみの連鎖を断ち切ることの難しさが嫌というほど描かれる。「話し合う」言葉にすれば簡単なのに、それがどれほど難しいことか。

    そこから港での戦闘でも、訓練兵時代の同期と命のやり取りをすることに。「裏切り者!何でだよ!?俺達は仲間じゃないのかよ!?」という言葉はやり切れない。これほど丹念に心を折ってこなくてもと言わんばかりの不条理。そんな中、絶望の中で前進する彼らを後ろから支えたマガトとジャーディスがカッコよかった。

    手を汚す覚悟がなければ、望む自由な未来は手に入らない。それを体現している一番のキャラがエレンなのかもしれない。誰が正しいかではなく、誰もが正しいことをしようとするからこそ繰り返される戦い。いまだ出口の見えないこの森から抜け出すことはできるのだろうか。

  • 進撃の巨人による殲滅が始まった。はたして進撃の巨人を止めることは可能なのか。エレンによる地ならし発動は正しい選択だったのか。
    敵と手を組み、味方と殺し合う、戦う目的が錯綜する展開。

  • 感想
    争いの連鎖は避けられない。結局世界の縮図を表しているよう。争いを避けるために争いをする。それが人間なのだろうか。

    あらすじ
    エレンを阻止するためにこれまでの敵同士が協力。飛行艇で移動するために港でエレン派と交戦。エレンは巨人を引き連れて対岸へ辿り着く。

  • 前巻ラストで104期訓練兵が再集結したことを無邪気に喜んでしまったのだけど……
    互いの正体を知って以来、長きに渡って殺し合ってきた彼らが何の蟠りもなく協力するなんて不可能な話だったのか……

    それでも暴走を続けるエレンを止める為には少しでも戦力が居るわけで。出自も思惑も年齢も経験も異なる彼らが車座になってどうにか妥協点を見出そうと、それでもいざこざが起こることは止められない様相は本当に彼らが背負う歴史の難しさ、そして歩んできた血に塗れた道の険しさを思い知らされる
    ただ、どう取り繕った所で差し迫った状況で妥協点は必要となる。そこでまさかマルコの最期の言葉が生きていくるとは!
    大量虐殺が現に起きている状況で「話し合う」なんてあまりに荒唐無稽な発想だし、ジャンはライナーを許せないしライナーは罪悪感で潰れかけている
    それでも仮初の妥協点とすることが出来た。今にしてやはりマルコは賢かったのだなと思ってしまう


    ただ、エレンを止めるということはイェーガー派と敵対するという事でも有って…
    以前、中央憲兵と調査兵団が争った際は相手の中に顔見知りはおらず自分達は奇襲される側だったから何としても生きるために相手を殺さなければならなかったし、割り切ることもギリギリ可能だった
    けれど、今回はイェーガー派の中には知り合いどころか同期も居て自分達が奇襲をする側。おまけに巨人の力まで使ってしまう。どう取り繕うとそれが一方的な殺しである点は変えようがない
    始祖の巨人の『地ならし』を止めるという大義名分の為に手始めに同族殺し。悲惨過ぎる……

    多くの犠牲を払っての出航、それでも壊滅的な犠牲を避けることは出来ず
    守りたいと思った者達を守れず、それでも名も知らぬ人達を一人でも守るために進もうとするミカサ達。彼女らにエレンを止める手段は果たしてあるのだろうか…?


    あまりに早すぎる『地ならし』の進行。もはや此処まで来ると今からエレンを止めてもパラディ島が平和に生き残る道なんて無いように思えるが…
    気になるのはエレンがどこまでの未来を知っているのかという点。「すべては…この先にある」という台詞はこの『地ならし』の先に本当の自由と平和が待つという意味なのか、そしてヒストリアの提案には時間稼ぎ以外の別の意味があったのか?
    疑問は尽きないけれど、あまりに状況が絶望的すぎてここからバッドエンド以外の終わりがあるようには思えないぞ……

  • ライナーを殴り倒すジャンが愛おしく、マルコの死がなおさら無念。まだ話し合ってない、がここでまた出てくるとは。アニが元気にパイを喰らっている姿に安堵して、巻全体としては殺し合いしかしていないような、悲惨な巻なのに、ところどころ昔を思い出してほっこりするような感覚。進撃の巨人は、もう当初の姿をしておらず。遠くまできたんだなって思わされる最後でした。次は来年なのかな。どこまで続くんだろう。

  • かつての仲間と立場を違え、お互いの信念を賭けて殺し合い、一方でかつての敵と手を取り合う。

    守るべきは故郷か、それ以外の全世界か。

  • ここに来てなお面白くなる.すごいマンガだと思う.

  • 面白いけどつらすぎるんだよな…

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著者プロフィール

諫山創(いさやまはじめ)
1986年8月29日生まれ。
『orz』にて読み切りデビュー(マガジンSPECIAL2009年3号)。
2009年10月号より、別冊少年マガジンにて『進撃の巨人』を連載中。

「2014年 『進撃の巨人 悔いなき選択(1)特装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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