ヤクザと過激派が棲む街

著者 :
  • 講談社
3.00
  • (1)
  • (2)
  • (9)
  • (2)
  • (1)
本棚登録 : 90
感想 : 7
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (338ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065216750

作品紹介・あらすじ

戦後復興にまい進する東京の片隅で、高度成長を支えた日雇い労働者たちが集まった山谷のドヤ街。一億総中流化社会からふるい落とされた、消したい過去を持つ無宿人たちがやけっぱちの賑わいに片時の安息を観抱いていたこの街は、およそ40年前、いまやともに絶滅危惧種となった「ヤクザ」と「過激派」の抗争による殺戮の場と化した。

なぜヤクザと過激派はこの街で全面衝突を余儀なくされたのか?
日雇い労働者たちのオアシスはなぜ衰退したのか?
ヤクザに存在意義はあるのか?
左翼活動家に大義はあったのか?

繁栄から取り残された労働者たちと、時代から見捨てられた過激派、欲望に取り憑かれた暴力団、さらには警察権力を交えたヤケクソの暴力がほとばしる、戦後史に埋もれた「日本社会の歪」が激しく暴発するピカレスク・ノンフィクション!

序章
抗争か革命か
第一章
現場闘争
第二章
暴力手配師を撃て
第三章
ドヤ主と左翼
第四章
過激なる者たち
第五章
いい加減な男
第六章
左翼・右翼・ヤクザ
第七章
金町戦 皇誠会登場
第八章
金町戦 互助組合の策謀
第九章
金町戦 撮影現場の悲劇
第十章
金町戦 襲い来る銃弾
第十一章
戦線離脱
第十二章
映画と民間暴力
第十三章
山口組國粋会金町一家
第十四章
それぞれの戦後
終章
北帰

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 左右営利を問わず社会から排斥された私的暴力主義者達が激突した最後の祭場が山谷なのだろう。
    船戸=豊浦 的な表現なら山谷ドヤ街は隔離区にして収容所となる。
    議会主義の軍門に下った日本共産党に距離を置き、内ゲバに傾斜しゆく新左翼諸党派とつかず離れずでありながらヤクザ右翼との苛烈な闘争に突き進む山谷争議団とアナキズム系の東アジア反日武装戦線の距離の近さに驚くが妙に納得もした。
    シマを死守る古い極道と祖国の否定と破壊に行き着いたウルトラ過激派が、バブルの狂乱にむけて走りだした表社会に居場所を失い、妥協を知らぬ原理原則主義者たるがゆえに追い込まれ追詰められた山谷ドヤ街で存続を賭け死闘する。
    ゆえあらば暴動を起こすドヤに渦巻く叛逆のエネルギーに革命の幻影を視て酩酊する暴力主義者と暴力を資本にドヤから資金を吸い上げ業界でノシ上がる夢を追う暴力主義者の微妙にすれ違いながら繰り返す悲喜劇は、すべてを清潔に漂白しゆくマジョリティの欲望に圧殺されるまでの刹那に咲いた徒花か。
    温和で整った令和の御代にボンヤリと生きてる私ですが、ある日覚醒めたらボロボロで不潔な黒旗が街々に翻り既存の何もかもが覆る、そんな朝を夢想することだってあるのです。

  • 金町戦争。
    その近くで働いていたこともあるのだが、そんな死人が出るような抗争があったなんて、知りもしなかった。

    ヤクザと過激派。
    外から見てりゃ同じような暴力装置だが、中に入れば思想が違う。
    国営暴力団も。

    なんつか。

    その、二人がなくなったという事件はさらっと。
    読み方のせいか、あまり何も残らなかった。

    ただ、日本で、ついこの間、こういうことが起きていて、報道もちゃんとされてないことの意味は考えないといけないんじゃないか。

  • 今や高齢化の段階も過ぎて無人化に差し掛かりつつある寄場。かつてそこで戦争とまで言われるほど激しい労働運動が繰り広げられていたことはなかなか想像しにくくなっている。
    かたや騒動の末に寄場の支配権を確立したヤクザ側も、暴対法によって勢力が弱まり、構成員は減少の一途らしい。
    本書は山谷争議団の元メンバーやヤクザ側の関係者、ドヤの経営者らに当時の状況を聞き取った貴重な記録。現代ではすっかり存在感が失われてしまった左右の突破者達の、メディアにもあまり取り上げられない往時の争闘の生々しさが伝わるノンフィクションである。
    争議団関係者の生き様をみると、今なら「生きづらさ」の一言で片付けられそうな葛藤を抱えて生きていた人達だったと思われるが、いま、彼らの跡を継ぐ人たちは支援する側、される側のどちらにいるのだろうかと気になった。

  • 1980年代末、父親の手伝いでよく山谷周辺を車で通っていて、昼間の歩道で酔いつぶれている労働者を見かけたことはあったが、暴動や騒乱に会うことは無かった。単に昼間だったからなのか、すでにバブルが到来し、ドヤ街が変わりつつあった(金町一家が勝利をおさめた)頃だったのかは定かではない。1980代まで新左翼が活動し、山谷でヤクザ相手に攻防戦を繰り広げていたことは記憶にない。1985年に大学に入って右翼や左翼に関心を持って、「テロルの決算」、「全学連と全共闘」などは読んでいたはずだが、そこまでは関心が無かったということか。ヤクザの道理(面子を潰されたら殺人までも辞さない)が新左翼の道理(労働者を守るために、資本者層に加担し、利益を挙げる暴力集団を排除する)に勝てなかった。新左翼がヤクザの道理を理解していなかったのがこの騒動の総括。

  • 80年代の山谷で起きた新左翼とヤクザの抗争が、当時の関係者の証言を交えて、詳細に描かれている。映画とか小説とかの世界かと思うような非現実的な出来事満載なため、読んでいてクラクラしてくる。アウトローな世界が好きな方にはおすすめの一冊。

  • 同意もできない。共感もない。ただ、それぞれの生き方を興味深く読んだ。

全7件中 1 - 7件を表示

著者プロフィール

1953年、東京都に生まれる。立教大学法学部卒業。竹書房入社後、漫画誌、実話誌、書籍編集などを担当。立川談志の初の落語映像作品を制作。実話誌編集者として山口組などの裏社会を20年にわたり取材した。同社代表取締役社長を経て、現在フリージャーナリストとして活動する。著書には『「ごじゃ」の一分 竹中武 最後の任侠ヤクザ』、『ヤクザと過激派が棲む街』(ともに講談社)、共著に『「宇宙戦艦ヤマト」をつくった男 西崎義展の狂気』(講談社+α文庫)がある。

「2023年 『「仮面」に魅せられた男たち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

牧村康正の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
小川 哲
桐野 夏生
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×